11.21.2020

[film] Smooth Talk (1985)

14日、土曜日の午後、BAMのVirtual Cinemaで見ました。今年のNYFFでリストア版がリバイバル公開されていた作品。
邦題はそのまま『スムース・トーク』で、日本ではビデオスルー?。

Laura Dernさんが強烈な印象を残した“Blue Velvet” (1986)のひとつ前に主演した作品で、86年のSundanceのドラマ部門ではGrand Jury Prizeを受賞している。

原作はアリゾナで実際に起こった連続殺人事件に想を得たJoyce Carol Oatesの1966年の短編 - "Where Are You Going, Where Have You Been?"で、アメリカではアンソロジーの常連で、翻訳も『あなたはどこへ行くの どこから来たの』、『どこへ行くの、どこ行ってたの?』といったタイトルでいくつかのアンソロジーに収録されている(どちらも未読)。この短編は、Bob Dylanの"It's All Over Now, Baby Blue"を聴いた後に書かれて、Dylanに捧げられている。

尚、この間のNYFFでのリバイバルの際に行われたLaura Dern(主演)、Joyce Chopra(監督)、Joyce Carol Oates(原作)という女性3名(+モデレーター)によるZoomのトークがYouTubeにはあって誰でも見れるから見てみて。

15歳のConnie (Laura Dern)は父母姉と原野の一軒家に暮らしていて、父(Levon Helm!)は寛容で、母(Mary Kay Place)はややうるさくて、姉(Elizabeth Berridge)は定番よいこで母のお気に入り。季節は夏で、Connieは友人2人とつるんで着飾ってビーチとかモールとかに出かけては男を値踏みして引っかけようとしたり引っかけられようとしたり、実際に声を掛けられると逃げたり隠れたり、夜に車でふたりきりになっても怖くなって逃げたり、そんなことばかり繰り返している。

家を出て遊びにいく際の言い訳は家族には嘘とバレてて、母からは姉と比べてこの娘は.. っていつも言われるのでたまにペンキ塗りを手伝って少し歩みよったかに見えてもその翌日には双方が同じことを繰り返して元の険悪な状態に戻る - 遊びに出たくてたまらない(けど自分内でぐるぐる回る)& ティーンの事情もわかってあげたいところだけどやっぱりムリ(これもぐるぐる)の親娘の緊張と攻防は誰にも思い当たるところがあるし、大人の世界の憧れ - 音楽がかかって男女で賑わう夜のバーガーショップとか – はとても生々しく蘇るものがある。

ここまででも十分なドラマになるところなのだが、後半、近くの親戚の家に家族みんながバーベキューに出かけてしまい、家にひとり残されたConnieのところに車に乗った男ふたりが訪ねてくる。ひとりは夜のバーガーショップで声を掛けてきた気がするArnold Friend (Treat Williams)で、もうひとりは助手席でラジオをずっと耳にあてて音楽を聴いててほぼ喋らない。

若いのか中年くらいなのか外見ではよくわからないArnold FriendはConnieのフルネームも今家族がどこにいて何をしているのかも全部知っているようで、なによりも怖いのは彼女の不安や動揺を見透かしているかのようにとにかく車に乗ってどこかに行こうぜ、と執拗に誘ってくること。なんで彼はそんなに自分のことを知っているのか、車でどこに向かって何をしようというのか、疑いがとぐろを巻いてそれらに巻かれて窒息しそうになって...  彼はそこを先回りして覆い被さってきて、いいから行こうよなんで行かないの? と。そのConnieの内の葛藤とArnoldとの息詰まる攻防ときたら閉じ込められた家での殺人鬼との闘いのようにも見える。

その舞台となるConnieの家のかさかさに白っぽく乾いた雰囲気もよくて、これってJoel Meyerowitzがケープコッドの家を撮った写真集 - “Cape Light” (1979) - 名作 - を参考にしているそうで、なるほどー。

あとは彼女のような思春期の危うい揺れが最悪の男によって連れていかれてしまったその先を描いたのがLaura Dern主演で”The Tale” (2018) - 『ジェニーの記憶』- として変奏されている、ということは強調されてよいことかも。

というわけでLaura Dernさんがすばらしいことは言うまでもなくて、もういっこ、Levon Helmの、自分内ではハッピーだしなんも干渉しないけど何が起こっているかはわかってるから、という父親役も素敵だった。

音楽はRuss Kunkel & Bill Payneの乾いたかんじがたまんないのと、Musical directorとして入っているJames Taylorの”Handy Man”が最後にこびりついてくる。


UKのトレンドにJimmy Somervilleの名前が出ていたので、え、死んじゃったの!?  って見に行ったらバスキングで歌っている人の傍に寄っていって一緒に歌った、というだけだった。  お元気そうでよかった..

 

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