11.08.2020

[film] Coup de foudre (1983)

10月31日、土曜日の晩、Criterion Channelで見ました。
これも31日でいなくなってしまうリストからの1本。 原題をそのまま英訳すると”love at first sight”なのだが英語圏でのタイトルは、”Entre nous” = “Between us”となっている。

''Peppermint Soda'' (1977)のDiane Kurysの3作目で、''Peppermint Soda’’は彼女の姉に捧げられたドラマだったが、ここでは彼女たちの母の物語を。

第二次対戦当時の1942年、ベルギーのユダヤ人Lena (Isabelle Huppert)はフランス南部でドイツに送還される手前のキャンプに収容されていて、そこで働くフランス軍人でやはりユダヤ人のMichel (Guy Marchand)から配給食のパンに挟まったメッセージ - 結婚してここから出ないか? を受け取って、顔も知らないし言葉も交わしたこともなかったのに、いちかばちかでそれに乗っかる。

ふたりは難民で一杯の列車に乗って、そのあとに徒歩で山を越えてなんとかイタリアに逃れる。丁度その頃、画学生だったMadeleine (Miou Miou)は結婚直後に襲撃にあって同窓生だった夫を失って、そこから10年後の1952年。

リヨンでLenaとMichelはふたりの娘と一緒にそこそこ幸せに - 金勘定にはがみがみやかましくてうざいけど子煩悩のMichellと - 暮らしていて、Lenaはある日、役者志望でやや遊び人ふうのCosta (Jean- Pierre Bacri)と結婚して息子ひとりと暮らすMadeleineと出会って仲良くなって、映画はふたりの女性の交流を軸に、それぞれの家庭にやってくるそれぞれの危機とかうんざりに決断と乗り越え - 夫との関係、子供達との関係、理想と壁と現実 - を淡々と描きつつ、やがてLenaとMadeleineとの友情 - ふたりが一緒に描いていた夢か夫婦関係か、みたいなところに近づいていって、そしてふたりは…

それなりに長い時間軸で展開していくドラマなので、キャラクターの描き方、エピソードの取り上げ方、決断の転結の描き方によっては荒唐無稽でださいほうにブレて行ってしまう可能性もあったはずなのだが、とても落ち着いた無理のない流れができていて、その底にはLenaとMadeleineの揺るがなかった友情が - おそらく監督がなんとしても外したくなかったもの託したかったものがあって、だから安心してのめり込んで見てしまった。

それを可能にしたのはふたりの女優 - Isabelle HuppertとMiou Miouの演技のすばらしさで、夫に向けられる不信 - あんたに何がわかるってのよ - の眼差し、子供たちに注がれる愛の眼差し、お互いを見つめ語り合う姿の強さ確かさ - 愛か友情かどっちかなんて強調するまでもなく - ときたら見事としか言いようがない。撮影時、ふたりは30歳前後だったはずで、年齢なんてどうでもいいかもだけど、すごいねえ。

で、最後の字幕でこの後の顛末と、これが監督の家族の話だったことを知って改めて、ここからあの娘ふたりが”Peppermint Soda”に繋がっていくのかー、って。 いや、ここから”Peppermint Soda”を見直したくなったし。

まだぴちぴちのDenis Lavantが若い兵隊役でちらっと出てくる。


やっと決まったねえ。 今日は昼にずーっとFrederick Wisemanの”City Hall” - 4時間半 - を見ていて、見終わって放心状態だったところで決まったので、これからはこれ(ってなに?)だ! ってなった。 現地のお祭り騒ぎがうらやましいけど、失われた4年間を立て直す - リストアするのが相当に大変 - これは向こうの国の他人事ではなくて。本当にいろんなものが壊されて失われたし、人権や正義や悪について手元足元で考えさせられたし。 臭いものにフタ、じゃなくてああいうふうにならないためにどうすべきなのか、なにができるのかを考えていきたい。 にっぽんもいい加減に目をさましてね。


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