11.30.2020

[film] 山中傳奇 (1979)

21日、土曜日の昼、米国のMUBIで見ました。192分。英語題は”Legend of the Mountain”。
“A Touch of Zen” (1971) - 『俠女』のKing Hu(胡金銓)が台湾で撮った作品。

11世紀、宋の時代。学僧のHo (Shih Chun)は科挙に落ちてお金もなくなったので、不思議な力を持つとされる経典の写経の依頼を受けることにして、それを仕上げる場所として山奥にある軍人のMr. Tsui (Tung Lam)のお城を訪ねる。着くなり宴席でもてなされてMr. Tsuiはお付きの家政婦としてMadam Chuang (Shu Tien)とその娘だというCloud (Sylvia Chang)を紹介されて、酔っ払って落ちて翌朝目が覚めるとCloudが側にいて、昨晩あなたはわたしにあんなことをした上に結婚すると誓ったではないか、とかいうのであんま覚えがないけど結婚することにする。

そのうちどこから怪しげなラマ僧 (Ming-Tsai Wu)が現れると突然Cloudとどんどこ太鼓合戦を仕掛けてきてラマ僧は退散して、なんだろうなと思っていると今度はMelody (Hsu Feng)という別の娘が現れてHoを守りますとか言って、Cloudと戦いを繰り広げて、そこに再びラマ僧も加わって天地が裂けんばかりのやかましいバトルが。彼らはHoが持ってきて写経をしているお経を巡って戦っているらしい。

かつての戦国時代の抗争で殺されて悪霊になった者たちが不思議の経典のパワーを求めて争奪戦をする、というお話で、進んでいくうちに善玉悪玉が変幻自在にころころひっくり返るのでおもしろいのだが、Hoが居眠りしたり酔っ払ったりしないで真面目にとっとと写経していればあそこまでの大騒ぎにはならなかったのに、って鈍い主人公にちょっといらいらした。彼を最初に殺しちゃえばそれで済んでしまったのではないか、とか。 その反対側で悪霊になってしまった人たちの因果というのは、ちょっとかわいそうで、彼らはあの後どこに行ったのだろうね。

派手なカンフーの組み手はあまりなくて、メインの戦いがどんどこ太鼓合戦なのは面白くて、その勝ち負けを決めるのはアタックなのかピッチなのか手数なのか音量なのか、風神雷神の対決みたいなやつなのかしら、とか。

なんだか『聊斎志異』に出てくる話のようだった。


空山靈雨 (1979)

22日、日曜日の昼、Film ForumのVirtualで見ました。英語題は”Raining in the Mountain”。120分。
これもKing Huの、↑と同様1979年に撮っているMountainもので、演じる俳優さんも結構重なっている。撮ったのはこちらの方が先みたい。タイトルに”Raining”ってあるけど、雨が降るシーンはないの。

明の時代の中国、お金持ちのWen (Sun Yueh)とその妻White Fox (Hsu Feng) とGold Lock (Ming-Tsai Wu) の変なトリオが山奥にあるでっかい僧院を訪ねて、院に着くなりWhite FoxとGold Lockのふたりは服を着替えて寺の宝物殿にあるお経を盗もうとしていて、寺の僧のなかにはそれを手引きする奴がいて、今度は別の男二人組が現れて、あれは盗賊として名高いWhite Foxだ、と騒ぐのだが、どうやら彼らも同じお経を盗もうとしているらしい。

それと並行して、高齢のため引退する僧院の大僧正の後継を誰にするのかを3人の候補の中から選んでいく話しに、盗人(でも無実の罪)としてそこに連れてこられた実直で誠実なChiu Ming (Lin Tung)の目覚めと成長の話しが進んでいく。 つまりは絶対権力の座とその鍵となる法典を狙うものたちの腹黒だったり高潔だったりする駆け引きと、継承後の僧院の運営みたいなところまで、それらを通して、人の、法の道とは、というのを仏教的に説いているみたいなかんじ。「雨」はこれらが等しく降り注ぐイメージかしら?

話しとしては人物がいろいろ絡み合って乱高下するし、説話ぽいところもあって↑の『山中傳奇』よりはおもしろいく現代に通じるところもあると思うのだが、アクションは最後の追っかけっこで少し出てくるくらい。 この世の者ではない連中がひたすら人の世に干渉してくる『山中傳奇』に対して、この『空山靈雨』はどこまでもリアルに下界の話しで、その対照を狙った、ということはあるのだろうか。

あと、ただのコピー(写経)を巡ってあれだけの人々が大騒ぎしたその中味についてはどちらもまったく触れられていない。どんなありがたいことが書かれていたのか誰かまとめサイトで公開(→ 大喜利 → 天罰)してほしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。