11.20.2020

[film] Crock of Gold: A Few Rounds with Shane MacGowan (2020)

14日、土曜日の昼、DOC NYCで見ました。間もなく英国でも見れる(当然)のだがどうしても待ちきれずー。

The Poguesの創設メンバーでフロントマンだったShane MacGowanの評伝ドキュメンタリー。監督はJulien Templeで、彼は76年にSex Pistolsのドキュメンタリーを撮っている時にそこらにいたShaneと出会い、彼に最初にインタビューをしたのは自分なのでこのドキュメンタリーは自分のものなのだ、という。その他のShaneとの対話(にあまりなっていないけど)の相手としてJohnny Depp、  シン・フェイン党のGerry Adams、Bobby Gillespie(見るからにびびっている)、コメントを言うのがNick Cave、など。ひとめ見てとっても男臭そうで、実際相当くさい。

冒頭、88年のTown & Country ClubでのThe Pogues & Kirsty McCollの”Fairytale Of New York”のライブ映像がでて、もう何百回も見ているのにKirstyの横顔が大写しになっただけで泣きそうになって(スクリーンで見てたらぜったい大泣き)、Jem Finerの姿が見えてPhilip Chevronの姿が見えて、でもこの映画の主役はThe Poguesではなくて、Shane MacGowanなの。

57年のクリスマスの日に生まれ(生まれたのは英国)、アイルランドのTipperaryで親戚もいる大家族のなかで育って、3歳頃からパブのテーブルにあげられて酔っ払いと歌をうたって6歳から酒とタバコを覚えて、最初の方はそんな家族とアイルランドの風土や文化や人がShane少年をどう育てていったのか、アニメーション等を交えて追っていく。

そこから父母とロンドンに越して(バービカンに住んでいたんだって)、Tipperaryでは詩を書いて文学のスカラシップを貰っていたのでウェストミンスターの学校に入るのだが、アイリッシュだからといじめにあって行き場を失い、酒とドラッグに溺れて放校になり、どん底にあった彼を救ったのがパンクで、Clashのギグで後にMo-dettesのメンバーとなるJane Crockfordに耳を食いちぎられて血まみれになっている写真が彼を有名にして、そこから暫くして自分のバンドThe Nips - 正式名称はThe Nipple Erectors – を始めて、短命に終わったこのパンクバンドと並行して自身のアイリッシュルーツと向き合うようにSpyderとJemと一緒に"Pogue Mahone" – The Poguesを結成する。そこから先はいいよね。

上映後のトークでJulien Templeは、バンドのディスコグラフィやライブを時系列で追って、関係者が総出でコメントを述べていくような形式 - 最近多い”rockumentary”にはしたくなかった、と強く語っていて、確かにそういう構成にはなっていない。あくまでShaneの個人史を追いながら、あの時代の英国にアイリッシュとして生き、周囲から弾かれて壊れかけた青年がパンクと出会って、パンクはそんな彼をどんなふうに受け容れたのか、が(実際には地獄だったかんじもあるけど)軽妙に、でも十分な説得力をもって描かれている。いっこ印象的だったのは、学校で除け者にされていたShaneが聴いていたのが周囲で流れていた移民の音楽 - スカだったとか。あとは文学の話 - James Joyceは勿論、Flann O’Brien にW. B. Yeats(には割と批判的)に、ふらふらしていた頃に公園で出会った浮浪者たちの話とか。

The Poguesの初期のライブの様子を見るとやはり最初の2枚までがピークだったのかなあ、88年MZA有明で我々が見てびっくりしたときは既に終わりの始まり、だったのだろうなー、というのは改めて思った。こうしてこの辺りからバンドは転がり落ちていって、横浜のWOMADでShaneはバンドをクビになる – ここがJames Fearnleyによるバンドのメモワールの出だしなのね。

エピソードで面白かったのは彼らがブレークしたElvis Costelloとのツアーの話。Cait O'Riordanを巡る攻防とか。

初期の勇ましいジャンキーっぷりと比べると車椅子に乗って身を傾けたまま終始ふがふがしている今のShaneはおじいさんとしか言いようがないのだが、よく生きてここまで来てくれたありがとう、と思った。88年のライブでやられてから来日公演はずっと通って、NYではShane MacGowan and The Popes​のにも行って、どんどんだめな方に墜ちていく彼を見てきて、でもいいじゃんか、って。

映画でも触れられているけど、そして今日もまたあの箇所がBBC界隈で話題になっていたけど(どうでもいいわあんなの)、”Fairytale of New York”の歌詞ってほんとうにすばらしい。特に終盤の”I could have been someone.. “ 以降のところなんて、この映画を見てから聴くとじーん、って。 今年もこれからNYのことを想って何度も何度も聴くことになるんだわ。


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