11.23.2020

[film] Pauline à la plage (1983)

11日、水曜日の晩、MUBIで見ました。

Éric Rohmerの喜劇と箴言シリーズの3つめ。英語題は”Pauline at the Beach”、邦題は『海辺のポーリーヌ』。 ロメールの名前が日本に大々的に入って来た最初の作品で、当時おしゃれな男女はみんな行くべし、みたいに紹介されていたので、ひねくれて自分が見たのはもう少し後になった。ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞している。
今回の箴言はクレティアン・ド・トロワの"Qui trop parole, il se mesfait" - “A wagging tongue bites itself" - 「言葉多き者は災いの元」 - そりゃそうだな、しかない。

ノルマンディの方の海辺の別荘にティーンのPauline (Amanda Langlet)といとこで年長のMarion (Arielle Dombasle)が車でやってきて滞在する。ふたりでこれからのバカンスの恋の展望や見通し、野望などについて語り、海辺にいくとMarionはウィンドサーフィンの先生をしているEx.のPierre (Pascal Greggory - わかーい)と再会し、Pierreの近くにいた中年ハゲのHenri (Féodor Atkine)と出会って、そのまま4人でディナーをしてまた恋愛について語りあって、更にカジノに踊りにいって、PierreはMarionとよりを戻そうとするのだが、結婚も含めて過去の失敗に慎重になっているMarionにはそう簡単には巻かれない。

翌日以降も未練たらたらMarionを追っかけるPierreと、大人のHenriに興味があるっぽいMarionと、女ならなんでもいいらしいHenriに、浜辺でPaulineを見初めた青年Sylvain (Simon de la Brosse)が加わって、浜辺とHenriの家とMarionの別荘を中心にくっついたり離れたり逃げたり隠れたり追っかけたり嘘ついたり、バケーションで夏だし海にいるんだから恋するしかないだろ、っていうぎらぎらした連中が輪になってダンスしていく中、Paulineはなんか違うんじゃないか、って思い始めて…

Éric Rohmerの監督作でタイトルに女性の名前が入っているのはそんなに多くなくて、これと、“Four Adventures of Reinette and Mirabelle” (1987)と“Claire's Knee” (1970)くらいではないかしら。(“Chloe in the Afternoon” (1972) は原題がちがうから外す)
で、これらはみんな恋を知る前の女の子(たち)に訳知り顔のやらしい大人のおっさん(たち)が近寄っていくような、見る人が見たらはらはらどきどきのトーンのやつで、やーねー、って。

あと、喜劇と箴言シリーズの中では、この作品だけ唯一、仕事 vs. バカンス vs. 家庭 x 恋愛 というロメール四大元素のうち、仕事が一切入ってこない。生きるため、生活するために誰もが奴隷としてやらなければいけない仕事からフリーになったところで恋と、その可能性とか歓びなどが語られる。(『緑の光線』はこれに近いけど、仕事の影というか呪いは常につきまとう) そしてそこに - 夏の恋に登場人物全員がフォーカスしたときに起こる悲劇というか喜劇というか、だからと言ってどうにもならないんだわこれが、という…

登場人物が全員海辺のゆるい邸宅にいて、割とすることがなくて恋の手前でだらだら回したり回されたりする話し(そして最後に車で去る)というと、“La collectionneuse” (1967) - 『コレクションする女』が思い浮かんで、あそこにあったやーらしく高慢ちきな男性目線を女性(少女)の側に転回させるとこんなふうになるのかもしれない。どっちにしても極めていい加減で適当なこと言ってらあ、ってみんなが突っ込みたくなるかんじは満載なのだが。

突っ込みどころがいっぱいで、海にいって泳いでごろごろするか、テーブル囲んで食事したり飲んだりするか、ベッドでいちゃつくか、ひとりで本読んでぼーっとするか、全員この4地点をぐるぐる回ってくっついたり離れたり、という点ではホン・サンスのに近いところもあって、目的のためには手段を選ばず.. みたいなやらしい男共がいっぱい出てくるところなんて特にそう。

でも最後は店じまい〜 のようにすたこら逃げるかのようにして終わるのはよいの。 恋なんていらない。 彼女は来年も海辺にやってきた/くるだろうか、については関係者を召集して集中討議してほしい。


このまま何もなければ、BFI Southbankは3日から再オープンする予定。 12月はいろんなクラシックと、恒例のクリスマス映画特集とMarlene Dietrichだって。 楽しい映画が見たいな。

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