9.03.2020

[film] Who's Afraid of Virginia Woolf? (1966)

8月24日、月曜日の晩、Criterion Channelで見ました。8/31で見れなくなるよのリストから。

『バージニア・ウルフなんかこわくない』として劇作、映画共に有名なやつだけど、なんかサイコドラマみたいで怖そうだし見たことなかった。「バージニア・ウルフなんかこわくない」なんかこわくない、って自分に暗示かけて見る。

Edward Albeeの62年の同名劇をErnest Lehmanが脚色して、Mike Nicholsはこれで監督デビューして、いきなりオスカーの監督賞を獲っている。(『卒業』はこの翌年)

ニューイングランドの小さな大学で歴史の先生をしているGeorge (Richard Burton)と彼の妻のMartha (Elizabeth Taylor)がパーティの帰り、ふたりとも楽しく酔っ払って自宅に戻ってくるとMarthaがこれからゲストが来るよという。夜中の2:30なのに? ってGeorgeは聞き返すのだが、来るよって。そうしてやってきたのが若い夫婦のNick (George Segal)とHoney (Sandy Dennis)で、Nickは生物学の先生で、まだ結婚して間もないらしい。

もちろんお酒飲むよね、飲まなきゃねって、4人で飲んでいくうちにGeorgeとMarthaはぎすぎす辛辣に – まずはふたりの間で、NickとHoneyふたりに対しても - なっていって、NickとHoneyは来なきゃよかったかも早く帰った方がいいかも、になるのだがタイミングを逸してまあまあまあ、とかが続いてずるずるになっていく。この辺、誰でも覚えあるかも。こういうのって日本の酒席の「みんないるんだしそんなこと言わずに」も嫌だけど欧米もふつうのマナーに近いところで勝手にいなくなるのって却って面倒で、防衛機構も作動したのか女性同士、男性同士で固まって暫くしたらHoneyが、明日は息子さんの16歳の誕生日って聞いたけど? っていうとGeorgeの顔色声色が変わって…   ここから先は書かない方がよいか。

この家の外にはほぼ出ることのない室内劇で、キャンプとかホテルとかではない、GeorgeとMarthaという学内の地位も安定したエスタブリッシュメントの家に若い夫婦が夜更けに乗り込む。GeorgeとMarthaは酔っ払ってタガが外れているもののやらしい酔っ払いの聴覚嗅覚は研ぎ澄まされていて、そういうほぼ地雷原のようになっている一軒家に若くてこれからというひよこの夫婦がぴよぴよ入っていったらどんなことが起こるのか。(設定だけだとほぼホラーと同じよね)

GeorgeもMarthaも最初から酔っ払っていて、それでもふたりは飲むことを止めない、酔っ払うにつれてGeorgeは攻撃的で怒りっぽくなって、Marthaは感情的で泣き叫ぶようになって、それぞれに自分がそうなる理由は十分にわかっていて、互いをなんとか屈服させるための戦略でもあるかのようにその態度をでっかく引き延ばしておらおらってアピールする。そこに酔ってはいるもののまだ理知的で多少の理想も抱えたNickと無垢で弱さむき出しのHoneyが挟まったとき、誰が誰をどんなふうに操って何をなし遂げようとするのか、何を隠したり晒したりしようとするのか、これは酔っ払って楽しく語らいましょうの会ではなくて、誰かが誰かをやりこめて自分の配下に置きたいという欲望の元に行われる政治的なゲームで、酔っ払うこと/酔っ払わせることも含めてコントロールされた「劇」である、と – この辺、演劇と映画でどこがどれくらい異なるのかはいつか劇の方を見て確かめてみたい。

このやらしいゲームを執り仕切って場の生態系の頂点に立とうと苛立っているGeorge(なんとかその方向に持っていきたがっているのが彼だというのはOK?)からすると、ほぼ唯一不可視でなにが出てくるかわからなくて、「こわくない」って奮い立たせないとだめなふうなのが「Virginia Woolf的ななにか」として括られた女性のナラティヴで、それがどういうものなのか最後まで語られないまま夜は明ける。まったく失礼しちゃうわよね、っていう話かも。

この辺、ざっと50年前の当時と比べてVirginia Woolfって未だにわけわかんない・こわいものとして片づけられてしまうのかしら? っていうのはちょっと気になる。どうせ酒の席のことなんだから気にしなくても、とか言われてもあたしお酒飲めないからー。 たぶんいまだと「xxxなんてこわくない」に該当するアイテムがポリコレとかコンプラななにかも含めてありすぎて、やけくそになった男たちはしょうがないので酒でもドラッグでも..  になってしまったのが今、なのかもしれない。怖がるフリも被害者ヅラもいいかげんにしろ。

これを今の俳優たちでリメイクするとしたら誰 … は考えていくと止まらなくなるかも。
 

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