9.11.2020

[film] L'ami de mon amie (1987)

 4日、金曜日の晩、より正確には5日土曜日の朝、MetrographのVirtualで見ました。

“Les Misérables”をみてへろへろぐったりになって帰ってきて少し寝て、起きたら深夜で、米国東海岸20:00から上映されるこれはロンドンでは1:00からで、どうしようって思ったのだが、眠くなったら寝ちゃえばいいか何度も見てるし、って結局最後まで見てしまった。Rohmerすごい。

10分前からPre-Showということで入ってみるとRohmerと誰か(あれ誰だろ?よく見るひと)が対話している映像で、Rohmerが50 - 60年代からつけているという制作ノートについて語っていて、その時点から「喜劇と格言劇」シリーズの断片は書き留めていたって。

そして(これがあるから夜更けに入った)Noah Baumbachによるイントロ。本人が出てきたものの「この作品について語りたいことが沢山あるので資料をいっぱい作ってメールしたらエラーで返ってきた。なので喋ることはできないけど映画はすばらしいから楽しんでってね」って、おい…

英語題は”Boyfriends and Girlfriends”、邦題は『友だちの恋人』。これと『レネットとミラベル 四つの冒険』 - これは明日Metrographでかかる - あたりが自分がRohmerにはまった最初のピーク - 『海辺のポーリーヌ』あたりから追ってはいたけど - で、なーんでこんなにおもしろいのこれ? って痺れまくって、これも当然初日にシネセゾンに見に行った。いまだになんでこんなにおもしろいのかをきちんと説明できる自信がない。

パリ郊外のセルジー・ポントワーズの市役所に勤めるLea (Sophie Renoir)と学生のBlanche (Emmanuelle Chaulet)が出会って友だちになって、Blancheは一緒に暮らしている恋人のFabien (Eric Viellard)を紹介してくれて、LeaはFabienの友人のAlexandre (François-Eric Gendron)をいいなー、と思うのだが自分からは言いだせなくて、そうしているうちにFabienのことが気になってきて.. あと登場するのはAlexandreの恋人のAdrienne (Anne-Laure Meury)くらいで、この5人が夏のバカンス - 恋の季節を前にどうする?どうする?どうしたい? ってやりあっていくの。

Blancheはすらっとした自信家さんで、自分のことは他人にとやかく言われる筋合いないわって誰と住むのかどこに旅行するのかも自分で決めて走っていっちゃうタイプで、Leaはその逆で、まだあまり人が入っていない新築ニュータウンみたいなところにひとりで暮らして、なんであんなことしちゃったんだろ言っちゃったんだろあたしの人生って.. とか振り返ってはめそめそ泣いてばかりで、そのうちBlancheがFabienを置いて休暇に行っちゃったときFabienと寝ちゃっても彼は「友だちの恋人」だし、でもそれを言うならAlexandreだってそうかもだし、こんなことで悩んでいたらBlancheは呆れて離れていっちゃうだろうし..

ふつうのrom-comだともうちょっと周囲のおせっかいとか「あんた誰?」的な人物が余計な災いとか厄介事を呼びこんできたりして、それらのノイズが引っ掻き回した果てに一件落着、になったりすると思うのだが、Rohmerコメディの主人公の周りには見事になにも起こらず、周囲の人物はそれぞれの世界観と行動原理のなかで普段通りの暮らしや動きをしていく中、風が吹いたり雨が降ったりするように起こるべくして起こった早とちりや誤解や思い込みが主人公たちを動かして、でも結果的にはしかるべきところに落着してしまったりする。

だから「コメディと格言」で、格言の通りにほら、こんなふうになっちゃったでしょ、っていうのと、こんなふうになっちゃったけど、そういえばこんな格言があるよ、っていうのと、どちらにしてもコメディとはこういうもので、それは我々の生活とこんなにも近しいところにあるのだ、と。もちろん、悲劇についても同様のことが言えるのかもしれないけど、それは雨に降られてびしょ濡れになったとか蜂にさされた、なんかと同じようにやりすごして忘れちゃえばいいだけのことだから(もちろん、掘りたいひとは掘れば)。

これって書いてみればそんなものかなー、だけど、よく考えてみればすごく驚異的な、奇跡のようなことではないかという気もして、Rohmerの映画に深入りしたくなるのはそういうところなのだと思う。ここにこそ人生の、世界の謎と秘密があって、彼の映画の格言(Proverbes)ってその謎を解き明かすための補助線で、でもいくらそうやって解に近づいていったとしても最後までやっぱしわかんないや、になるのは - 人はなんで恋に落ちてしまうのか、そこだよね。

そしてもちろん、すばらしい小説や絵画にもそういうところがある。世界が柔らかな頬の輪郭からできていることを示したAuguste Renoirのひ孫がLea役のSophie Renoirさんである、というのは別の角度から現れた謎のひとつではないか。

のと、この不可解なまでに災厄の多い年には、Éric Rohmerのコメディがぜったい必要なんだわ、って。

911だねえ。

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