9.15.2020

[film] Max Richter's Sleep (2019)

8日、火曜日の夕方、CurzonのBloomsbury – 映画館で見ました。この晩のこれがUKプレミアで、この日の晩はここだけではなくPicturehouseとかでも同様の上映会をやっていた。

Max Richterの8時間半に及ぶ大曲 - ”Sleep”。これの一晩通しのライブ演奏会はこれまで世界中でぽつぽつ行われているのだが、そのうち2018年、LAのGrand Park – 野外 - で行われたライブの模様を中心にこの曲が書かれた背景とかMax Richter自身の話とか聴きにきた観客数名の発言とかいろいろを記録したドキュメンタリー。 Max Richterの音楽入門、のようなかんじもある。

わたしも2017年5月にロンドンのOld Billingsgate(旧魚市場)で行われたこれのライブに行って、その時にも感想書いたけど、これのライブはこれまで行ったいろんなライブ – 結構いろいろ行っているほうだと思う – のなかでもなかなかとんでもない方のやつだった。

基本的にライブというのはライブスペース - 屋外であれ屋内であれ - にそれを聴きにきた人達がそこで演奏される音楽をみんなで一緒に聴いて、踊ったり歌ったり体揺らしたりする、その共時体験が重要 – 大人数であれば一揆みたいにうおおーってなるし少人数であればお茶会のようにうふふってなるし – で、そういうのが必要ないのであれば部屋でひとりで聴いていればいいの。 で、このライブはフロアに簡易ベッドが並んでいて、開場して中にはいるとみんなそれぞれベッドの上で寝支度を始める。パジャマに着替えるひと既に着てきているひと、でっかい枕を抱えたひと、歯を磨くひと髭を剃るひと洗顔するひと、ひとりで寝るひと一緒に寝るひと、ほんといろいろ(失礼かもだけど、おもしろい)。

Max Richterが演奏前に”See you on the other side”と呼びかけるように、これは寝てよいライブ、眠りに入った向こう側で聴くライブなのだが、ここから反応は客によってばらばら、すぐに眠りに入っていびきをかきだす人もいれば上半身を起こして聴いているひともいる。とても気持ちよい音なので聴いていたくてがんばりたかったのだが素直に落っこちた。こんなふうにひとりひとりがそれぞれの状態で聴いていたり聴いていなかったり(聴いていない、と言えるのか?)、こういうのをライブ体験と呼んでよいものかしら、と。 寝ている状態にある耳とか脳の話にいくと面倒(いちおうそこまで配慮して作っているらしい)だけど、単に自分が意識していない時に流れている音楽って、寝ている時の風音や雨音とかとおなじでリスニングという範疇には入ってこないなにかではないのか。

でもあの時の、寝起きするとき、目覚めと共にあたまが起動する/した時の界面をまたぐかんじ – は普段のそれとはやはりぜんぜん違ったので、あそこには音楽がなんらかの形でどこかに作用したのではないか。いや、子供の頃から慢性的な不眠なのでなにやっても効いたように思えてしまうだけなのかしら。

乗り物 – vehicle – としての音楽、というのはMax Richter音楽の重要なキーで、眠りに向かっていくのか目覚めに向かっていくのか、意識と身体がゆっくりと左から右に運ばれていくかんじは確かにあって、あの移動感覚がどういう意図をもって作られたものだったのか、なんとなく理解はできた。この点でアンビエントとはちょっと違う。Kraftwerk ?

我々はなんで眠りを欲するのか? - 眠いから。なんで眠くなるの? - 寝ないで起きていたから。なんで眠りを削って起きたり働いたりするの? - やらなきゃいけないことがいっぱいあるから。なんでやらなきゃいけないことがいっぱいで、そこでまず眠りが犠牲になるの? - そこなら自分でなんとかできると思うから。 でも眠いんでしょ? - うん。だって…  ぐるぐる。

ほんとは、ライブに来て眠りに落ちている観客に音楽を通してなにかを仕込んでいる、戦慄の事実が -  とかだったらおもしろいと思ったのだが、そういうのではないみたい。でもみんなが盛大に寝ているなかで淡々と演奏している絵って、おもしろい。そういえば、彼は眠くならないのか。

既にだれか暇な人がやっているかも知れないけど、目覚ましアラームなしに、この曲で眠りについてこの曲で目覚めるのを一ヶ月くらい繰り返したら脳とか身体がどうなるか、実験してみたい。ある特定の知覚とか能力だけが妙に発達したりー。

日本でこの曲のライブやるのであればFUJIの最後の晩とかがいい。星の下でこれが流れて眠りに落ちたら気持ちいいだろうなー。
 

いちぶオフィスに戻り始めていてぐったり、なのだがまだ在宅の期間もあって、これの何がよいって、朝晩の交通のがないのもあるが、もうひとつは会議の隙間とかの空き時間に横になって寝れることなの。20分でも40分でも。なんであんなにオフィスに戻れ戻れってうるさいのかちっともわかんないわ。 一体感?(げぇー)

政権変わっても(変わったとは思えないけど)あのくそじじい共じゃ絶望しかない。なんであんなのがいいの? ほんとやだ。

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