5.18.2018

[film] The Lusty Men (1952)

4月25日の水曜日の晩、BFIのBig Screen Classicsていう定番シリーズ(古典をでっかい画面で見よう)で見ました。上映前にBFIのひとの解説つき。 邦題は『不屈の男たち』。こんなおもしろいのに日本では劇場未公開なの?   新札みたいにぱりぱりの35mmだった。

大恐慌時代のアメリカ西部で、ロデオ・サーキットに身を投げだして一攫千金を狙う男たちとそれを見守るしかない女の物語。 元は雑誌Lifeに載ったロデオ・カウボーイの記事をDavid Dortortが脚色して別の監督が企画を始めたあとにNicholas Rayが拾いあげて、『彼らは廃馬を撃つ』のHorace McCoyが始めのほうを書いて、更にもう数人が加わって、仕上がっていったのだと。

それにしても、ロデオってなんなのかしら。 暴れ馬や牛の背中に跨って、そこに自分を縛りつけて振り落されなかったら勝ちで、お金を貰える。 自分の力や運動神経によるところが大きいのでスポーツ、なのかも知れないが、動物のサイズやご機嫌によるところがあまりに大きいし、闘牛がスポーツでない(よね?)のと同じようにスポーツではなくて、見世物で、ロデオ・カウボーイはスポーツマンというよりはめちゃくちゃ運が強い幸運なひと、のように見られる。そして見るほうはこの運がどっちに転ぶかを見てわーわー騒ぐ。
(あ、決してスポーツのがまともって言ってるわけじゃないよ)

ベテランのロデオ・カウボーイだったJeff McCloud (Robert Mitchum)は、怪我してもうあかんわ、と引退して生まれ故郷に戻って来たところで、Wes (Arthur Kennedy) とLouise (Susan Hayward)の若い夫婦に出会って、WesはカウボーイとしてのJeffを知っていて、楽にならない生活からなんとしても抜け出したいWesはJeffにロデオのメンターになってほしい、と頼む。

そんなのやめたほうがいい、と最初は取り合わないのだが、たまたま最初に上手くやれてしまって有頂天のWesとお願いだからそんなやくざで危険なことから足を洗って、と横ではらはらしっぱなしのLouiseを見ていて仕方なくサーキットに出ていって、それで…

誰かが圧倒的な(あるいは感動的な)勝利を収めてめでたしめでたしのお話しではないの。ここに出てくる人達は初めから、勝ち負けでいうと負けている人たちで、その絶望の底から這いあがるために馬と綱に自分を縛りつけて、そこで振り落されたらそのまま物理的にも人生的にも落っことされて終わり。自分の身体とか人生をぜんぶ賭けて、負けたら簡単に死んじゃうような、そんなのが娯楽として成立して消費されていた。 

それがいいとか悪いとか悲惨とか、そういうことではなくて、かつてそういう時代と光景があって、それを改めて映像として見てみるとなんかどたばたぴょんぴょんすごく珍妙で変てこで砂漠のように乾いていて、こういうので死んじゃうのと戦争とかインディアンの襲撃とかで死んじゃうのと違うのか同じなのか、そういうところまで深く広く考えさせる映像と語り口で、Nicholas Rayだなあ、て思った。 お話しとしてはどうってことないかんじなのに、なにか刺さってくる。

とにかくRobert Mitchumがものすごくよくて(前説の人もここでの彼がBestだと強く言い切っていた)、彼の表情があるだけで、ロデオがまったく別のものに見えてくる。猛り狂った、手のつけられないなにかを素手の素面で柔らかく受けとめて笑っていて、そんなことができるのってなんなのかと。ひょっとしてこういうのを魂とかいうのかしら。 というようなわかったふうのことを言う余裕なんてぜんぜんなくて、振り落されないように必死なのは見ているこっちの方なのだった。

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