5.23.2018

[film] Jeune Femme (2017)

18日の金曜日の晩、へろへろ状態でSOHOのCurzonで見ました。
予告に出てきた白猫がとてもかわいかったので、程度で。  昨年のカンヌでCaméra d’Orを受賞している。

冒頭でPaula (Laetitia Dosch)はドアをばんばん叩いて狂ったように絶叫していて、ついでに頭も強打して、次は額を縫われた状態で病院にいて、そこにいた親切そうな医者に散々絡んで悪態ついて、彼がいなくなった隙に抜けだして、そのまま彼 - Joachimと同居していたと思われるアパートに向かい、ブザーをこれでもかと鳴らしてインターホン越しに絶叫して、下のデリにいた彼の白猫をそれあたしのだから、と箱に入れて、無一文の宿無し状態でパリの町に猫と一緒に放りだされる。

最初はGreta Gerwigさんがやってきたようなちょっと変わって浮いてる女の子のお話しか、程度に思っていたのだが、どちらかというと”A Woman Under the Influence” (1974) 系のかも、と思ってはらはらしながら見守っていると、トイレットペーパーの芯で髪巻いて(Amy Winehouseだって)パーティに潜りこんだり、ゴミを漁ったり、母親に会いにいって激しく拒絶されたり、人違いで寄ってきた女性の同窓生になりすましてご飯と宿一緒になったり、ウソつきまくって住込みのベビーシッターやるとか、適当言って下着屋の店員になるとか、とにかくいいかげんでも図太さと口先でなんとか食らいつくのが曲芸みたいにすごくて、始めのうちはJoachimのとこに嫌味たらしく押しかけたりしていたのだが、それもやめるようになって、ウソまみれだけどとにかく自分の足で動き始めた途端に妊娠していることがわかる。

31歳、イタいあたしの- とか等身大の- とか、そういうのからは遠い、ぎりぎりで切実で傷だらけで死にそうなPaulaの彷徨いを正面から捕えて、もうすこし笑えるかと思ったらそうでもなくて、どこかしらKatell Quillévéréさんの”Suzanne” (2013)を思いだしたりもして、中盤から終盤に向かってだんだんよいかんじに落ち着いてくるのが素敵なの。

その落ち着きはどこからどうやって来たのかというと、たぶん何重ものなりすましをしているうち、それがばれるたびにいろんな人から「あんた誰?」って聞かれて、それを自分のなかで反芻しているうちに固まってきたところもあるのだろうか。で、固まってくると今度は彼のほうが電話して心配して追っかけてきたり、母親とも話をすることができるようになったり。逆に「あんた誰?」の果てにわかんなくなって破滅、ていうのもありえたはずだけど、そうはさせるもんか、ていう意思みたいのがPaulaには充満している。

下着店のセキュリティをしていて少し仲良くなるOusmaneとのやりとりで、服のサイズは変えられるけど目の色は変えられないだろ、ていうのが沁みて、で、彼女両方の目の色が少しづつ違うのだった。

スタッフは(別に意図はしなかったそうだが)全員女性だって。いいよね。

音楽はクラブに行ったときに流れるCarte Contactの”Like a Dog”がすごくよくて、”120BPM”の “Smalltown Boy”のように映画全体のトーンを見事に捕まえている。

パリって、自分にとってはまだまだ未知の町なのだが、このへんパリっぽいかも、て感じられる瞬間がいくつかあって、パリの匂いみたいのは、感じられるようになってきたかも。

あの白猫、かわいいねえ。

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