5.31.2018

[film] Lean on Pete (2017)

20日の日曜日の午後、CurzonのSOHOで見ました。もう終わっちゃいそうだったし。

Charley (Charlie Plummer)はオレゴンに父とふたりきりで暮す15歳の男の子で、父は殆ど留守で帰ってきたと思ったらだらしなく家に女を連れこんで朝に帰すようなことをしていて、でもCharleyは独りでも平気で、ある日通りかかった近所の馬小屋で働かせてくれないか、て言ってそこのトレイナーのDel (Steve Buscemi)と騎手のBonnie (Chloë Sevigny)と仲良くなって、そこのLean on Pete(以下Pete)ていう競走馬の世話を始めてお馬とも仲良くなる。

ある晩に家の戸口でのすごい音で目が覚めると父が見知らぬ男 – おそらく連れこんでいた女の-と口論してて、父はその喧嘩で大怪我して病院送りになってやがて傷が悪化して死んでしまう。あとは勝てないPeteもそのうち処分されてしまうのだ(だからペットにするな、と言ったろ)、と冷たく言い放たれて、大人なんて端から端まで信じられなくなったCharleyはPeteを連れて何もかも棄てて荒野に放浪の旅に出る。

これだけだとこの先は社会から逸れた孤独な少年と馬の友情とか成長とか夢見がちな物語のほうに行きがちだけど実際のはすごく過酷で辛くて、よくしてくれる人もいるけどそうじゃない大人とか天敵だらけの現実が容赦なく降りかかってくる。それも世の中そんな甘いもんじゃないんだよガキ、という偉そうな描き方ではなく、道を歩いていると次々に降ってくるいろんな障害がほんの少し誇張されただけ、しょうがねえだろ、みたいな救いようのない描写が続いて、それが普通の風景になって、Charleyもその風景を構成する薄汚れたガキに変貌していく。しかもそれが結構長く続く。

でもここまで、誰がわるいってもんでもないの。もちろん性悪はそこらにいっぱいいるけど、それらがCharleyをあんなんにしてしまったわけではない。パパが死んじゃったから、でもない。たんじゅんな善とか悪とかがなにかを決めてくる世界ではないのだとしたら、野宿とかするのがごくあたりまえの世界なのだとしたら、この世界を形作っているのはなんなのか、愛ってどこにあったりするのか、というのをCharleyやPeteと一緒に考えてしまうことになるの。

これが”All the Money in the World” (2017)でさらわれて片耳をだっきんされてしまった(時系列ではこれの後でだっきん、みたいだけど)Charlie Plummerくんに対する仕打ちなんだねひどい世の中よね – ということでもよかったのだが、最後のほうでほんの少しだけ。 でもだからといってCharleyのなかでは何かが失われてしまってもう戻ることはないのだな、ということがわかる最後のとこはなんかよいの。

Steve BuscemiとChloë Sevignyが薄汚れたNYのダウンタウンにいるのではなく、西部劇みたいなナリして馬を相手にしているのはなんかとっても変なかんじがした。

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