5.02.2018

[film] Girl with Green Eyes (1964)

4月9日の月曜日の晩、BFIのWoodfall特集で見ました。この特集、5月に入ったので終わっちゃったのね。

原作はEdna O'Brienの小説”The Lonely Girl”を彼女自身が脚色していて、Tony Richardson作品で撮影担当だったDesmond Davisが初めて監督をした作品。

Kate (Rita Tushingham)は田舎からダブリンに出てきてグローサリーストアでバイトしながら、ルームメイトのBaba (Lynn Redgrave)とつるんでやんちゃに遊んでて、Babaの男友達を車で田舎に送っていったときにそこの古い邸宅で中年男のEugene (Peter Finch)と出会う。その後もカフェで会ったり本屋で会ったりしているうちに仲良くなって、Kateの方からEugeneの家に押しかけて暮らすようになる。 Eugeneは一人暮らしのようだったが実は妻がいて、アイルランドでは離婚ができないのでその手続きのためアメリカに行っているのだと。

アイルランドではそういう関係は許されないものなので、やがてふたりが頻繁に会っているのを通報されて実家に連れ戻されたり、Eugeneの家に隣人が押し掛けたりしてきて(使用人のおばさんが連中に銃をぶっぱなすシーン、最高)、Kateは最初は反発してがんばるのだがだんだん互いに疲れてきて。

どろどろ暗いところの全くない – “A Taste of Honey” (1961) もそんなかんじだった - 女の子の一途さと彼女から見た周囲のいけてないかんじを淡々と切り取って対置して、全体としては躓きながらも自分の足で走り出そうとする女の子の瑞々しさに溢れている。Rita Tushinghamさんの大きな瞳としかめっ面がすべてを動かしていて、それは青年が主人公の”Saturday Night and Sunday Morning” (1960)や”Look Back in Anger” (1959) にあった、あえて泥のなかに首を突っ込もうとする野放図なエネルギーの噴出とは別の切り取りかたで、なんかよいの。 あと、ダブリンのグローサリーとかカフェとか本屋の描写も素敵で、ああ行ってみたいなあそこで暮したいなー、になる。

これの2日後、11日の晩の”Tom Jones” (1963)の上映前にイントロで登場したVanessa Redgraveさん – Baba役のLynn Redgraveのお姉さん – は、”Tom Jones”が当たってくれたおかげでお金ができて、それで撮影のDesmond Davisはこの作品を作ることができた。これは本当に素晴らしい作品になったの、て絶賛していた。 うんうん。

あと、Rita Tushinghamさんの瞳て、本当に緑なのね。

Tom Jones (Director’s Cut) (1963)  + intro by Vanessa Redgrave

というわけで4月11日の晩に見ました。Vanessa Redgraveさんのイントロ、Tony Richardsonのメモワールを参照しつつ、彼がいかにすばらしい人だったかを懐かしげに語っていた。

邦題は『トム・ジョーンズの華麗な冒険』。原作は18世紀のHenry Fieldingの古典 “The History of Tom Jones, a Foundling” - 翻訳が岩波文庫から出ていたのは憶えているけど読んでいない。この原作をJohn Osborneが脚色して、恋して旅して仕事(ってなんだ)して元気いっぱいに野道を突っ走っていく若者Tom Jones (Albert Finney)の誕生から結婚するまでの色恋まみれのどたばた珍道中として描く。

裕福なおうちの寝室のベッドに置かれていた(つまり誰の子かわからない)赤ん坊のTomは、大切に育てられて、地主の娘Sophie (Susannah York)と仲良くなるのだが、そこのぼんぼんに妬まれて追い出されて旅に出て、Sophieも後を追って、いろんなことが起こるのだがふたりの恋はどうなるのかー。

ぜんぜん古典劇/時代劇のかんじはなくて、お金はかかっていそうだけど妙にせわしなく、たまに役者はカメラの方を凝視してきたりして、今の若者の動きを捕まえようとしているぽいのと、同時にTomひとりにカメラが寄っていくのはあんまなくて、わらわらした群集劇にもなっていて、そのへんブリューゲルの絵みたいに見えてきたりしてたまんないの。

Albert Finneyのむせかえるようなエナジーと華が見事で、昔の東映の時代劇に出てくるぴっかぴかの若者たちを見ているようだった。これまでに見てきたWoodfall作品のモノクロの若者たちと比べたときにどうか、というと、ぜんぜん違うようで、ひょっとして根はあまり変わらないのではないか、という気が少しする。 背景の色こそ違うけど、楽観的で不屈のところとか。

今の若者がTomを演じるとしたら誰が?

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