5.10.2018

[film] if.... (1968)

4月29日、日曜日の午後、CurzonのSOHOで見ました。 69年のカンヌでPalme d’Orを受賞した作品。

68年5月から50年ということで、BFIではパリの5月を小特集したりしていて(ぜんぜん行けてないし)、この作品も公開から50年、というのと、Johnny役のDavid Woodさんがこれの撮影時のエピソードを纏めた本を上梓したのでそれのお祝いとで、彼のQ&Aつきの上映会が開かれた。上映プリントは00年代に新たに焼かれた35mmで、これのお披露目のときにはMalcolm McDowellを始め主要キャストのリユニオンがあったのだという。

60年代の英国にそれはそれは厳格な全寮制パブリックスクールがあって、男子ばかりのがちがちで、Mick Travis (Malcolm McDowell)とWallace (Richard Warwick) とJohnny (David Wood)の3人組は同じ部屋で、だいたいつるんで不良してて、その反対側には風紀取り締まりの警察みたいに偉そうな連中がいて、その上層には教師とか校長とか軍の上の教会の上のといった更に偉そうな連中がいて、これらの間のたいして意味があるとは思えない果てなき攻防を描く。 要は階級社会をきっちり支えるどこに出してもおかしくないぴっかぴかの英国紳士に仕立てあげ〼、ていうことだと思うのだが、そんなどこに出してもおかしくないのなんてちゃんちゃらおかしいわ、ていう理屈が彼らの妄想や欲望も含めてアナーキーに暴走して止まらない。最後には革命するから、って機関銃抱えてガガガガ、なにもかも吹っ飛んじまえ、まで行って、それが"if…." ってこと。

取り締まる側もぶち壊す側もそれぞれの動機とか理屈はシンプルで、それがどうした、程度なもので、見るべきは3人の不屈の、こまこましたエピソードから伺えるどこから湧いてくるのかわからない生のエネルギーのような不謹慎極まりないあれで、これらの向こう側に教育とか組織とかクラスとか、なんなのかねえ、てのがぼこぼこ湧いて聳えてきて考えさせてくれる。革命の理念は壁の落書きみたいに見えてくるけど革命を煽動するようななにか、には向かわない。

これと同じようなのをどこかで見た気が、て思って行き当たったのがアルトマンの"MASH" (1970)で - あれも3人組じゃなかったか? - ここでのシステム vs. ふしだらの攻防の果てに見えてくる米国のありようと、"if…."から見えてくる英国のありようは、(このふたつが似ているということではなく)そんなふうに露わに裸にされるシステムとか伝統とかの滑稽さ、という点で共通していたりしないだろうか。 そしてそれもまた「文化」みたいなところに回収されてしまうので結局不動で。

それにしてもMalcolm McDowellの(あんな場所にいる)野良犬の目、すごいねえ。

上映後のトークはDavid Woodさんの他に監督Lindsay Andersonに何度もインタビューしたことがあるおじさんが加わって、主に撮影中のエピソードをいろいろ。 撮影が進行するにつれてMalcolm McDowelのアイデアを入れて変えてしまった部分が結構あった - Lindsay Andersonとしては珍しい - とか。 モノクロの画面は当初お金がなくてカラーフィルムを調達できなかったから、と言われているようだが、そうではなくて建物の全景をとらえるようなシーンは最初の頃にモノクロでぜんぶ撮っておいて、あとでカラーと組み合わせることを思いついたのだ、とか。

でも時間が迫っていたので、サイン会は諦めて次のInfinity Warに向かったの。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。