4.03.2018

[film] Isle of Dogs (2018)

3月24日、土曜日の昼、CurzonのVictoriaのPreviewでみました。『犬ヶ島』

ロンドンの映画館ではここ一カ月くらい、上映前に携帯を切ろう、のCMにChiefともう一匹が出てきて、Chiefが携帯が唸っているのを切らせて、.. いやまだ鳴ってる.. 犬にしか聞こえないかもだけど .. 電源を切れ! そう、それが肝心。”Silence your ringer” ってあの声(Bryan Cranston)で言ってくれるの。

Wes Andersonの新作で”Fantastic Mr. Fox” (2009) 以来のストップモーションアニメで、”Moonrise Kingdom” (2012)や”The Grand Budapest Hotel” (2014)のように少年と少女が得体の知れない大人たちの悪と戦ったり逃げたりするお話で、”The Darjeeling Limited” (2007)のように得体のしれない東洋エキゾチズムも満載で、これだけで見なきゃな、ていうかんじにはなる。

冒頭で大昔からの犬と人との物語が、隠れキリシタンのような史実として語られ、舞台は近未来の長崎ならぬメガ崎市に繋がって、独裁市長Kobayashiの元で犬の疫病蔓延への対策として犬をゴミの島流しにする政策が実行されて、その第一弾としてわんわんのSpotsが流されて、それを見つめて歯をくいしばる飼い主の少年Atariがいて、彼は両親の死後にKobayashiを後見人として育てられた甥でもある、と。

ゴミ島では5匹の元飼われ犬で今は強い野良派の5匹組がいて、Spotsを探しに飛行機でやってきてどすんと落っこちてきたAtariを匿ってぶつぶつ小競り合いしたりしながらもメガ崎からの追っ手をやっつけたりして、Atariと一緒にSpotsを探して島の隅々を彷徨うことになるのだが、そこに疫病を治すウィルスを開発する科学者の暗殺とかその謎を追いつつもAtariと恋におちる交換留学生のTracy (Greta Gerwig)とかいろいろ絡んできて、Atariとわんわん達の運命やいかに(ででん!)なの。

前のストップモーションアニメ- “Fantastic Mr. Fox” は、基本キツネ一家一族周辺に閉じた冒険譚でぼかすかどったんのこんがらかった様がアニメならではの手法で描かれているのが素敵だったが、今度のは、日本では「忠犬」と呼ばれてしまったりもする人間の終生の友達わんわんにまつわる裏切りとか、それでも変わらぬ友情とか因果応報とか、猫なのか犬なのかとか、いろいろ絡んできて、涙が流れてしまうようなエモいところをストップモーションアニメでどこまでどんなふうに描くことができるのか、この辺はちょっと難しいのかなー と思わないでもなかったけど結果はあんま問題なかったかも。 Wes Andersonがこれを実写にしたとしたらどう描いたか、というとあんま変わらなかったのではないかしら。むしろ、”The Grand Budapest Hotel” にあったような入り組んだ凸凹の建物や地図地形の上の迷走や遁走を紙芝居的な書割のなかにいかにおもしろくスリリングに落とし込むか、というところにアニメの質感とか仕掛けは使われているように思えて、どっちにしてもおもしろければよいわ、って。

わたしには映画作家としてのWes Andersonがどうとか、作家論的なそういうのはどうでもよくて、おもしろくてわくわくどきどきのが見れればそれで十分なので、その点ではとてもよかった。

他方で、ここで描かれた近未来のディストピア描写はあまりに今の日本(or アメリカ)しすぎているのであーあ、でもあった。 社会の害とか役に立たないものとの間に線を引いて排除して見えないようにしたい、そのためには手段を選ばず、そうやってキレイな状態をどんどこどんどこ太鼓叩いて煽って演出することで支持を集めようとする政権 - それが中央だけじゃなくて地方にも浸みていくって、近未来どころか余りにもろいまじゃん…。 わぁーすげー日本が舞台だわ、って喜んでいいの? 
しゃれになんないの。 それを打ち砕くのが野良犬たちであり少年少女である、ていうあたりもさ。 
最後に、”The Life Aquatic with Steve Zissou” (2004) にあったような”Destroy — !” に行かなかったのは、まあしょうがないか..

あと、海外では既に指摘されているけど、日本の登場人物が喋っている日本語は全てが英語字幕にされているわけではなくて、そういう状態で海外のひとに日本人の挙動はどんなふうに映っているのか? 自分達にはわからない言語でなんか会話している人々 - 犬同士は英語で会話しているのに - これってね、この映画に限った話ではないけど、考えてみる価値あることかも。

あと、主題歌(?)のThe West Coast Pop Art Experimental Bandの”I Won’t Hurt You”って、朝聴くといちにちずっと頭のなかをまわってしまうので注意。

もし自分がいくらでもお金だして映画とかも作れるのだったら、これの製作スタッフか、Laikaのプロダクションをまるごと雇って「新八犬伝」のリメイクさせたいな、てこれ見て思った。
(「新八犬伝」てほんとにおもしろくて大好きだった)

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