4.10.2018

[film] Wonderstruck (2017)

6日の金曜日の晩、BloomsburyのCurzonで見ました。

これを見るはずだった昨年のLondon Film Festivalの日曜の午前、地下鉄が動いてくれなくて痛恨の見逃しをした悔しさがまだ燻ってたまんなかったので正式公開の初日に見た。でも大々的に公開するわけではない模様。こんなにすばらしいのにさ。

1977年、MinnesotaのGunflint Lakeで、狼に追われる夢にうなされる少年Ben (Oakes Fegley)がいて、彼は母 (Michelle Williams) を事故で亡くして親戚のところに引き取られて嫌な思いしてて、更に落雷で耳が聞こえなくなって踏んだり蹴ったりで、母の遺品のなかにあった本を携えて、父親の手がかりを求めてNYに旅立つ。

1927年、NJのHobokenには耳の聞こえない少女Rose (Millicent Simmonds)がいて、サイレント映画の女優Lillian Mayhew (Julianne Moore)のスクラップを作って、映画館で彼女主演の映画を見たりしているのだが、彼女主演の舞台を見にNYに向かう(やがてその女優はRoseの母親で、母親は彼女を避けたいと思っていることがわかる)。

77年のNYに降りたった耳の聞こえない少年の冒険と、27年のNYを行き場を失って彷徨う耳の聞こえない少女の冒険が交互に(77年はカラーで、27年はモノクロで)映し出されて、50年を隔てたふたつの物語はどこでどんなふうに絡みあってひとつの物語を、ひとつの星座を形作るのか -  でも実はこれらの結合の度合いとか物語としての必然性ってそんなに強いものではなくて、そうなったからといって奇跡のような素晴らしいことが起こったり現れたりするわけでもないの。

“Carol” (2015) は50年代のNew Yorkでなにかを喪失したふたりの女性がそこからふたりだけの愛を求めてひたすら逃走していくお話しだった。 Brian Selznick 原作のこの話は、ふたりの聴覚を失った孤児が、時間を超えて同じような場所にあるなにか – それは博物館とか古本屋とか、塵が積もったような溜まり場みたいなとこにあるらしいけど、十分にわかっていない - を探しだそうとして迷子になっていくお話。 ものすごく変な具合に入り組んで先は茫洋としていて、しかしなんとしてもロマンチックななにかに落とし込むんだから、という強引で理不尽としか言いようのない意思みたいのがあるばかりで、でも好き嫌いでいうとものすごく大好きですばらしいやつだと思った。

それはたぶん、夜空に勝手に適当に散らばっている星のいくつかを勝手に星座と呼んでそこに運命を託したり、文明だろうが動物だろうが鉱物だろうがなんでも集めて並べて博物館をつくったり、古今の紙束 - 書物を集めて図書館とか古本屋を開いてみたりするのに似て、それらを見つめて見えてくる何かの模様とか堆積とかに自身の痕跡とか軌跡を繋げてみる、そんなことをしてなんになるのか? たぶんなんにもならないのだが、自分がそれらをじーっと見つめれば見つめるほど、向こう側からもこちらを見てくれている気がする。病気かもしれないけど、それがなにか?

“Coco” (2017)で描かれた極彩色の死者の国も、”Ready Player One” (2018)でJames Hallidayが組みあげた仮想空間も、そういうゴミみたいなごちゃごちゃの集積のなかに隠された宝物を探す話だった。 この作品が探して差し出すのは宝物、というほどのものではないけど、一瞬で電撃のように彼らの身体を貫いてなにかを/すべてを解らせる - いつも「なぜ?」「なんで?」ばかり口にして混乱しているBenを黙らせる -  そんなようなもので、でもその電撃って、ふだん本を読んだり美術館に行ったり映画を見ているときに我々の頭のなかで起こることとそんなに違わないんじゃないかしら。そういうことが起こるからそれはやめられないのだし、そういうことが起こるのは「自分が」見たり読んだりしているから、だけではない気がする、よね?

最初のほうで、Benの母親の部屋のレコードプレイヤーではBowieの”Space Oddity”が流れていて、それはわかるのだが、エンディングにはThe Langley Schools Music Projectの”Space Oddity”が流れる。1976–77年にレコーディングされて2001年に「発見」されたこのレコードの曲が流れるのには意味があるの。彼らは”Can you hear us, major Tom?” って歌うんだよ。(オリジナルは”Can you hear me, major Tom?”) Carter Burwellさんの音楽もすばらしい。

ふたりの子役は本当に見事だし、3態(銀幕、舞台、--)を演じたJulianne Mooreもあの時代のひとみたいに素敵だし、彼らの表情がずっと、本のなかにいるように残る。 ”Carol”にもそういうところはあったけど。  “A Quiet Place” – すごーくおっかなそうだけど見たほうがよいかなあ。

映画館のCurzonて映画のプロモーション用の景品とかをTwitterでよく抽選/プレゼントしてくれたりしてて、昨年だと「お嬢さん」のタコTシャツとか、「犬ヶ島」のわんわんキットとかやってて、当たったことなかったし当たると思わなかったのに”Wonderstuck”のは当たっちゃった。本とDVDだって。こういうの当たるのってめったにないのでうれしい。まさに”Wonderstuck”だわ。 DVDプレイヤー持ってないけど.. (まずはブツがちゃんと届くかしんぱい)

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