4.13.2018

[film] The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society (2018)

こっちから先に書く。 10日、火曜日の晩にCurzonのMayfairでのPreview & 上映後にQ&A。

Mary Ann Shafferの同名ベストセラーの映画化で、原作は - 邦訳『ガーンジー島の読書会』も出ているようだけど - 読んでいない。

冒頭が1941年、ドイツ軍占領下のガーンジー島で夜間外出禁止令が出ているのに飲んだくれて夜道を急ぐ島民が軍に捕まって、問い詰められたときにタイトルになっている読書会の名前をとっさに口にして、その後も口裏合わせのためにその名前の読書会を開かざるを得なくなった、という由来のお話し。

そこから46年のロンドン、売れない作家のJuliet Ashton (Lily James) は出版人のSidney (Matthew Goode)と二人三脚でがんばっていて – Foyles書店(!そんな昔からあるんだ)で朗読Q&Aとかをやっていて、アパートも探したりしているのだが、戦火で家と両親を失った記憶がまだ彼女を苦しめている。そんなある日、ガーンジー島から小さな読書会をやっているのだが、チャールズ・ラムの『シェイクスピア物語』(アーサー・ラッカムが挿絵のやつ)を送ってくれないかという手紙がきて、それをきっかけに文通が始まって、彼女はアメリカの金持ち軍人Mark (Glen Powell)とつきあい始めたりしていたのだが、島の読書会の方に惹かれて、船で渡ってみることにする(彼女、船に乗りこむ直前にMarkからプロポーズされて指輪を貰うの)。

島に渡って読書会のメンバーと会ってみるとちょっと変だけどよい人達ばかりで、手紙を送ってくれたDawsey (Michiel Huisman) のことが気になったりもして、でも彼女がこの読書会のことをTimesで記事にしたいのだけど、というと全員が表情を硬くしてやめてくれ、となる。

そういえば会には創設メンバーのElizabeth (Jessica Brown Findlay)がいなくて、彼女はどこに行ってしまったのか、44年頃、そこで何が起こって、そのことでなぜメンバーはみんな口を閉ざして暗くなってしまうのか。

ここから先は書きませんけど、戦争がひとりひとりに何をしたのか、それはいつまでも残って終わったり消えたりするものではないというのと、そこで本は、読書は何でありうるのか、とか、いろんなことを考えさせてくれる。でも永遠にこの島にいるわけにもいかないか、となったあたりでMarkが現れて戻ろうか、って言うので果たしてJulietはどうするのよ、って。

占領されたこともないし戦争で近い家族を失ったこともないしそれによって酷くだれかを憎んだことがあるわけでもないけど、本や音楽がそういう魂の難民状態をなんとかしてくれることはわかるし、そこから読書会が彼らにとってどれだけかけがえないものだったのか、なぜそこに(内に同様の難民を抱えていた)Julietが惹かれていったのか、そしてなぜ彼女はそれをなんとしても書かねばと思ったのか、もわかって、それだけで十分素敵なドラマになっていると思った。 あんなに島も海もきれいなのにな。

どうでもよいけど、死ぬほどおいしそうな豚のローストが出てくるので要注意。バターも粉も使わないお芋だけのPotato Peel Pieって、Webにはレシピもあるようだが、どんなもんなのかしら。

Lily James さん、“Darkest Hour” (2017)に続いて世界一タイプを打つ姿がかっこいい女優さんになったかも。

上映後のQ&Aには監督のMike Newell、脚本のThomas Bezucha、Juliet役のLily James、Mark役のGlen Powell、あともう1名(たぶんProducerの人)が並んだ。 Glen Powellさんて、”Hidden Figures” (2016)で気のいいあんちゃん風のJohn Glennを演じていた人ね。
話題は絶妙のキャスティングをどうやって – Mike Newellさんの映画っていつもキャスティングだけはいいよね – とか、原作との異同とか、時代を微妙に跨って進む物語をどうやって編んでいったか、とかその辺。

英国で行ってみたい場所リストにガーンジー島が加わった。きりがないわ。

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