8.07.2017

[film] Atomic Blonde (2017)

31日、月曜の午後、ホテルをチェックアウトして空港に向かう直前に、Union Squareのシネコンでみました。
今回の映画関係、英国ではあんま上映されなさそうなやつを選んで見ていったのだが、これは間もなく英国でも公開されるの。 どうせ見るんだからこっちで、という考えかたもある、ってことよ。

時は89年 - 高橋源一郎が『追憶の一九八九年』で描いたあの89年、「壁」が崩壊直前〜直後のベルリンを舞台に機密を巡って暗躍する東西のスパイの戦いをMI6のLorraine (Charlize Theron) の大暴れを中心に描く。 ストーリーに目新しいところはなくて、ベルリン駐在の協力者(James McAvoy)がいて、フランスの協力者Delphine (Sofia Boutella)がいて、仁義もくそもないわかりやすくてやたら痛そうな血みどろの戦いがあって、多くのスパイ戦がそうである/であったように最後はどっちが勝ったのか負けたのか。

“Mad Max: Fury Road” (2015)のFuriosa役でCharlize Theronに惚れちゃったひとにはあれを上回る勢いで彼女が動き回ってクソみたいな男共をぐっさぐさのぼこぼこにしてくれるし、どこをどうやったらあんなふうに撮れるんだかわからないカメラの動きもなんかすごい、のかもしれない。(監督のキャリアを見たら納得かも)

途切れずにやってくる多勢を延々相手にするとか、上から下から360度でぐるぐる展開するとか、やたら痛そうなとこを思いっきりぐさぐさとか、Marvelの一連のとか"Kick Ass"や"Kingsman"が積み重ねてきた格闘のコレオグラフをここのLorraineはものすごく自然にクールにやっちゃっていて痺れる。

アクション以上に音楽がたまんないの(ていう奴もいる)。
“Blue Monday '88”に始まって”Under Pressure”でおわる。
怒涛の80's B級ポップのオンパレード。人によって衝かれるとこはそれぞれだろうけど、いちばん切なく、基調音として鳴っている気がしたのは”Voices Carry” - 2回流れる - だろうか。
(”99 Luftballons”も2回流れたか… )
今の時代、割とおちゃらけたギャグとかWedding Singerのネタでしか出てこないようなあれらの曲群が、音量と鳴らせかたによっては - “I Ran (So Far Away)” ですらも - 極めて切なく、ソリッドに、かっこよく鳴ることを証明(.. ていうほどでもないけど)してみせただけでもえらい! っておもう。  主人公Lorraineの顔もとげとげしててぎすぎす暗くて、でも割とあんなふうに不機嫌だったのよ。

なんでいま89年のベルリンなのか。もうとうの昔に終わった時代のことなのに。
そう、もうとっくの昔で、壁があった時代のことなんて、あそこでどれだけの血が流されたかなんて、誰も気にしないでしらっとふつうに生活できる。 でもそれがどれだけおかしくて不自然なことなのか、ってことよ。
LBGTだってそう、ついこないだまで犯罪にされていたんだよ、それで投獄されたり狂っちゃったり殺されたりしたひとが山ほどいた。それってまだ終わった話ではないよね? なにをもって終わったっていうのかしら? ていうことを LorraineとDelphineの切ない恋が訴えてきて、それは壁に纏わる悲劇を反射しながらいまの我々のいまにも刺さってくる。 壁はまだある。
だから歴史を学ぶこと、忘れないことはだいじなの。勝手に修正して自画自賛してんじゃねえよ。

"Captain America"のシリーズは二次大戦時に生まれたファシズムの脅威が現代にも連なるものであることをマチズモぷんぷんで訴えていたが、こっちのは冷戦時の壁が容易には消えない/消せないものであることをフェミニズム観点で暗く静かに語る。
いま必要なのはどちらかというとこっちのほうだとおもう。

あと、James McAvoy、悪くないけど、この人がどんだけ酷いめにあって痛めつけられても別にどうでもよくなりつつあるのって、よくないかも。

あと、"Wonder Woman"みたいなくだんないプロモーションはもうやめて。
いいかげん・や・め・て。

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