8.03.2017

[film] Brigsby Bear (2017)

場所はこないだCloseが発表されたHouston st.沿いのLandmark's Sunshine Cinemaで、Webster Hallといいここといい、Bowery BallroomもMercury Loungeも買われちゃうというし、かつての思い出の場所がみーんな取られていく。 取られるんだよ、文化なんて金づるとしか思ってない頭からっぽの金持ち共に。 東京でもLondonでもそうだけど、ほんとに胸糞わるい。

この映画館はブロックバスター系とシネマテーク系の中間にある、あんま当たらなそうな作品をあれこれいっぱい上映してくれて、広々としていて見易いし、ゆるゆるなので部屋を渡ることもできたし、本当に素敵なとこだったの。 残念でならない。

James (Kyle Mooney) とパパ(Mark Hamill)、ママの「親子」3人は隔離された施設のようなところで暮らしているけど一見普通の家族で、Jamesは毎日クマの被り物が悪いのをやっつけるTVショー"Brigsby Bear Adventure"を楽しみにしていて、ショーについてのコメントをネットで発信したりもしている。 でもある晩、星空を見ていたら彼方からパトカーがいっぱいやってきてJamesは連れていかれてしまう。

どういうことかというと、Jamesは子供の頃に彼がパパママと思ってきたふたりに連れ去られ、外界・外気に触れたら危険て摺りこまれて25年間の軟禁状態に置かれていた、と(パパママは当然逮捕)。 Brigsby Bearもパパママが自分たちでこまこま全てを手作り自演していて、ネットも外に出ていかないやつであったと。

まったく事情がのみこめないJamesのところにほんもんのパパとママと妹が現れてなんとか周囲に適応させようとするのだが、これまでの自分の生活とBrigsby Bearを失った衝撃があまりに大きくてセラピスト(Clair Danes)の言うことも耳に入らない。 他方で、彼の持っていたBrigsby BearのVHSが妹の友達とかに広がっていって、Jamesをかわいそうに思った刑事(Greg Kinnear)が押収された着ぐるみ一式を返してくれたあたりから、自分でBrigsby Bearのエピソードを作ってみよう、っていう方に転がっていくの。

もちろん、早くふつうの世界に馴染んでほしい実のパパママはおもしろくないし、彼自身がBrigsby Bear以外の世界・世間を全く知らないので困難は山のように降ってくるのだが。

これ、ものすごくおもしろかった。 人さらい〜拉致監禁犯がその子をものすごくちゃんと育ててしまったら、というのは里子に出す物語のバリエーションとしてあるかもと思うのだが、その「教育者」として微妙にかわいくない着ぐるみ熊を置き、さらにその子にオタク的な素地を植えこんでおいたら、単なるcoming-of-ageの物語に留まらない変てこなやつができあがる。

まともなところでいうと、自分でコンテを描いて、協力者を見つけて、俳優を志したこともある刑事に出演してもらったり、爆破シーンのために火薬を調合してみたり(→大事故)、刑務所の旧パパを訪ねて声を当ててもらったり、そういうこまこました自主製作を通して彼はいろんなことを学んでいくの。そうだよねえ、ていう納得できるとこがあるので、見たあとはとても爽やかな感触が残る。
やっぱり熊は変だけど。

上映後のQ&Aは、前日のBene Coopersmithと同様、主演のKyle Mooneyの、Jamesがそこにいるとしか言いようのない佇まいが強烈だったが、ふたりともSNL出身なのでずっと笑いが絶えない寄席状態になっていた。 このふたりがアイデアを出し合いながら練っていったらあんなんなった、と。 そうじゃろうなー。

音楽の話になって、たまに現場でGin BlossomsとかThe Mighty Mighty Bosstonesとか(Kyleのだって)、90'sの一発屋がかかると雰囲気がよじれた、とか言ってて笑った。

これは日本で上映されないとおかしいって。

"Brigsby Bear"って、Grizzly Bearがよじれたやつだから。 たぶん。 ねんのため。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。