9.25.2016

[film] La tête haute (2015)

22日の木曜日、秋分の日のごご、銀座で見ました。 ずうっと雨だしつまんないし。
『太陽のめざめ』。 英語題は"Standing Tall”。 

乳呑み子の弟もいるので母親にはどうすることもできない暴れん坊のガキ - 6歳のマロニーは児童問題担当判事(Catherine Deneuve)のところに連れて来られて何度目かで、もうあたしにゃどうすることもできない、て母親も逆ギレしているので引き離し命令が出る、ていうのが冒頭で、その10年後、16歳になっても彼(Rod Paradot)は札付きのまま荒れ放題で狼藉を繰り返し、でも判事は変わらず我慢強く辛抱強く、世話人をBenoît Magimelに替えて刑務所ではなく、田舎の矯正院送りにする。

映画は、どこまでも変わらずてきとーな母親と変わらずどっしり不動の判事とこれまでとはちょっと違う陰のある世話人の三角形の真ん中で自棄になって引っ掻き傷だらけの矯正生活を送るマロニーの変わっていくとこ変わらないとこ懲りないとこ、で結局どうしたいんだおまえ? を追う。

不良少年更生ものによくあるなんかやなかんじ(それは難病モノによくある結局死んじゃうじゃん - にも似ている)、つまりは広義の外圧に屈して去勢されて妥協するのよね - はあんまなくて、もちろんぜんぜん予期しないとこで彼女と子供ができたとか判事が替わるとかいろいろあるみたいだが、彼はとにかく懲りないまま周囲に適応することを選んで、それはそれでリスペクトすべきではないか、それだけ暴れて傷ついたのであれば、みたいな本人合意の地点に注意深く落としこんでいて、そんなやなかんじにはなっていない。

あとは主人公を演じたRod Paradotの、半端ない野良猫の目つきと狂犬の演技、それを皇太后みたいに不動のオーラで受けとめているんだかいないんだか、びくともしないCatherine Deneuveの安定感と、あんたもまだ別のケアが必要なのではないか、のBenoît Magimelの抱える危うさ、見事な俳優のアンサンブルがある。

あと、誰もが一番よくないのはあんただよ、って突っ込みどころ満載のしょうもない母親の言動挙動と、それなのになのかそれ故になのか、どこまでも母親から離れられないで傍にいようとするかわいそうなマロニーの強い情とか関係の不思議さ、そして矯正院の教育係の娘さんとして出会った彼女(Sara Forestier)との獣みたいにすりきれて切ない(でもよかった ...)恋愛も素敵でねえ。

マロニーの目つきを見ているうち、”8 Mile” (2002)のEminemを思いだして、亡くなられたCurtis Hansonのことを想った。 ”8 Mile”も”In Her Shoes” (2005)も”Chasing Mavericks” (2012)も救いようのないところにいた人たちを何かが、誰かが掬いあげるお話しで、ほんとうに好きだった。
ご冥福をお祈りします。

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