9.24.2016

[film] 11 Minutes (2015)

22日、秋分の日の朝、ひでえどしゃぶりのなか、渋谷まで行ってみました。終わっちゃうっていうし。

ふだん会社勤務だもんだから、朝の9時から11時くらいまでが一番目がぱっちり開いているときで、ちょうどよいかんじでのめりこむことができた。 これで寝ちゃうやつは相当だとおもうが。

冒頭、スマホのビデオで撮ったと思われる映像で、男女のカップルの探り合いみたいな、仲がいいんだか悪いんだかのやりとりが撮られていて、他にも警察の監視カメラと思われるモノクロ映像で保護観察処分になったと思われる中年男の映像、とか、誰かが誰かを監視しているふう、名前も背景も関連もわからないいくつかの粗い映像や人々が重ねられていって、しばらくすると、登場したそれぞれの組や人物たちが17時を起点にあれこれ動きだしてすれ違ったりしていることがわかる。 

タイトルが”11 Minutes”なので、ここから11分間の物語なのだろうな、という推測はできるものの、ここまでばらけたお話しが並行しててきとーに(そう見える)動いていくものとは思っていなかった。 "Essential Killing" (2010) は時間も場所もわからない真っ白な平原をひとりの男が好き放題の線を描いて走りぬけていくお話しだったが、これは時間と場所がかっちり指定されたところに数千の監視カメラを置いて、そこで重なって見えてくるものを凝視し抽出しようとしている、かのような。

冒頭に出てきた二人の男女の女性の方が着飾って5時きっかりにホテルの指定された部屋に向かい、薬で眠ってしまっていた相手の男が慌ててそれを追い、ホテルのその部屋ではプロデューサーとその女 - 女優(になりたい?)との今後の仕事に関するお話しがされようとしていて、他にそのホテルのそばの路上で屋台のホットドッグ屋をしている男、ホットドッグを買う尼さんたち、届け物を届けようとするヤク中のバイカー、路地の奥の家で出産間際になっている妊婦を救いだした救急車、シェパードを譲り受けたパンクのお姐さん、質屋に強盗に押し入ったら店主がクビを吊っていて動転しまくる若者、低空で轟音をあげる飛行機、などなどなど、これらすべて、だれがいい人なのかわるい人なのか、ストーリー上だれのどこに力点が置かれているのか誰がサブなのか誰と誰がどう繋がっているのかいないのか、映画を見ている我々が前のめりになって填めて安心したがるストーリーや意味の枠を軽々と跳び越えて、彼らはてんでに勝手に動いていって、やがて。 

なにがすごいって、最後までいってもこれが誰のどういう(どこに着地する)話なのかほとんど掴めないことなの。 5:00 ~ 5:11までの間に起こったことをモザイク状に積んで重ねて見せているだけ。 起こってしまったことの記録のみ、監視カメラのみ、リテイク/編集/巻き戻しなし、みたいな。

張り巡らされた(監視)カメラの網に映らないものはあるのか、監視カメラにしか映らないものはあったりするのか、監視カメラに映ったものはほんとうに正しく映っているといえるのか、なにをもってそういえるのか、などなど。そんな問いをすべて嘲笑うかのように最後の最後にものすごいことが起こってあんぐりになる。 
テロ? 監視? 神の目? それがどうした? おら。

あの黒い点。 よくもまあ、って。 ほんとにすごいわ、じじい。

Tony Scottがやろうとしていたことを、よい意味で、ヨーロッパ的に意地悪く突き放している、というか。
"High-Rise"もほんとはこんなふうに描かれるべきだったのかも。

監督は以前、”Essential Killing”が自分にとって生涯ベストで2番目は『早春』、て言っていたが、これはどの辺に来るのかしら。結構上の方ではないかしら。

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