7.09.2016

[film] Le genou de Claire (1970)

6月4日の土曜日のごご、『満月の夜』に続けてみました。『六つの教訓話』のいつつめ。
ここまでくるともう離れられない。 あたまのなかはロメールのゆるゆるお花畑が満開に。

『クレールの膝』。 英語題は“Claire's Knee”。

もうじき結婚する中年外交官のジェローム(Jean-Claude Brialy)が湖畔の別荘を売るために滞在しようとモーターボートで颯爽とやってきて、旧友で小説家のオーロラ(Aurora Cornu)と偶然に再会する。 彼女が借りている別荘の持ち主にも紹介されて、そこの娘のローラ(Béatrice Romand)と会うようになって、この器量はいまいちだけど生意気な小娘との恋愛おしゃべり、というか、絶対に発展するわけがない関係をどうやってやり過ごしたり転がしたりするのか(or 我慢するのか)、ていうのが前半のラウンド。 

で、その次にようやく現れるのがローラの義姉のクレール(Laurence de Monaghan)で、彼女はローラと比べると一般的にはより美人さんですらっとしてて、でも行きも帰りも車でぴったりくっついている彼がいるので攻略の難易度は相当なもんなのだが、さくらんぼを摘み取る彼女の滑らな膝のラインと肌理にやられてしまったのと、どうせ暇だしいけるところまでいってみるか、みたいになる。

その合間にオーロラとジェロームという「大人」たちがその恋愛ゲームの成り行きや倫理みたいなことについておしゃべりするところがまたやーらしくて、なんだこの有閑階級は、になるのだがそれはこの映画を見ている我々の視線の反映、としてもあるの。

『モード家の一夜』や『コレクションする女』といった前の教訓話と比べると主人公の男が結婚しているぶん、さほど焦らずにふんふん優雅に獲物に近づいていくし、その視野も「結婚相手」とか「ビキニ女」といったところから「膝」みたいなよりマニアックな特定部位に寄っているので、やらしい。 しかも手ぶらで終っても平気だもん、みたいにしているところも更になんかやらしい。大人って…

クレールにべったりだったようにみえたカレが街で別の女と逢い引きしているとこを目撃したジェロームはその隙にしめしめと彼女を誘いだしてボートに乗っけてあげると、にわかに天空かき曇り雷鳴轟いてふたりは避難してふたりだけになって、ジェロームはクレールに、というよりクレールの膝に。 触れる。

この教訓話のなかで女性は海や山とおなじような「自然」で、制御できないなにかだと思うのだが、その自然と女、のテーマが最もスリリングに象徴的に描かれているのがこの場面で、天候がすごいんだかロメールがすごいんだかわからんが、それでも男はモーターボートでしょんぼり戻るしかない。 少し昔だったら乗り物はお馬で、もう少しはかっこよかったかもしれないのに。

有楽町でのロメール特集はここまで。

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