10.28.2015

[film] The Last Command (1928)

かぜひいたよう。

10日の土曜日の昼間、京橋の特集『シネマの冒険 闇と音楽 2015』、で見ました。 サイレント。
『最後の命令』

ハリウッドで戦争映画のキャスティングをしている人がある男の写真に目を留めて、この男にエキストラの募集に来るように言う。貧しくよれよれで全身が変に痙攣してて怪しい老人は撮影所にやってきて、将軍の衣装を受け取って身につけるとまるでその風格は将軍のようで、どうも本当にロシアの将軍だったらしいのだが、ではなんで彼はこんなところにいるのか。

帝政時代の終り頃のロシア、皇帝のいとこで将軍のセルギウス・アレクサンダー(Emil Jannings)は前線で革命勢力と対峙しつつ、威厳たっぷり自信満々で指揮をとっていて皇帝からの信頼も厚くて、そんなある日スパイ容疑で捕まえた反帝政の男女がいて、そのうちの女性のほうにちょっとだけ情をかけてしまったが故になかなかしょうもない地獄の方に転がっていく。

権力側と反体制側の攻防の生々しさと非情さ、そして女の手の内でころころと変転していく情勢が機関車の轟音と共に破滅に向かっていくその臨場感、疾走感ときたらとんでもなくてぜんぜんサイレントとは思えなかった。

こうしてロシア革命は将軍をハリウッドのエキストラに送りこんで、こんなに息詰まる紙一重のドラマを作らせることに成功したのだった、と。

とにかく将軍役のEmil Jannings、あの、ものすごーくおっかなくて震えないわけにはいかない”The Last Laugh” (1924)とおなじく、ひとの「最後」のなにかを、「最後」にどうにかなってしまうひとをとてつもない生々しさで演じていて、あの熊のようなでっかさと体の分厚さすら演技の一部としか見えなくて、これで第一回オスカーを受賞している。 第一回がこれだからオスカーはあんなにも呪われちゃったのね、とか。

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