10.25.2015

[film] 螺旋銀河 (2014)

6日火曜日の晩、渋谷でみました。 
びっくりするよねえ。 こんなにおもしろいのが転がっている。

ちょっと派手めでつんつんしたOLさんの綾(石坂友里) - 肉食ふう - と見た目は地味でもっさりしたOLさんの幸子(澁谷麻美) - 草食ふう - のふたりがいて、綾はシナリオ教室みたいなのに通っていて、いじめなのかなんなのか、講師からラジオドラマ放送用に採用してやってもいいけどまだシナリオとしていけていないから、共同執筆者の友達を連れてこい、て言われる。  彼女には友達なんていくらでもいそうで実はいなくて、たまたま近くで草を食んでいて人懐こそうに寄ってくる幸子に声を掛けて面談にのぞむ。

事前にちゃんと言うこと言っちゃいけないことなどをリハーサルして行ったのにその場で幸子は好き勝手にしゃべりだし、しかもそれがおもしろくてうけちゃったもんだから綾はおもしろくない。他にも同じ服を着てきたり、役に立てれば嬉しい、みたいなことを言い出し、更に綾のex-彼が、幸子の幼馴染で、しかも彼女にべったりであることがわかって更におもしろくなくなり、ふたりの関係は最悪になるのだが、もともとそんな親密だったわけでもないので、なにやってんだろ自分ら、になったり。

よくありそうな正反対のキャラクターの立場逆転・転換のお話しに留まるものではなく(だって勝ちとか負けとかないし)、ふたりの関係はすれ違ったり重なったりしつつ不器用な螺旋を描いて転がっていく。 どこに?  わからないー。 
その螺旋はやがて彼女たちの作ったドラマのなかでも、それを自分たちで演じることにした彼女たちの声と共に、静かに呼応してまわりだす。決して交じりあわず繋がらず、でもそこで描かれたふたつの軌跡を眺めてみると、なんか素敵じゃないか。

それは螺旋階段でも螺旋模様でもない、螺旋「のような」何か、ではなく螺旋を生み、それ自体で広がっていく銀河なんだ、って。

そのちいさく微細な回転を司るのが宇宙の果てにあるコインランドリーだ、ていうのが素敵でさあ。
普段の生活からはちょっと離れたところで、でも普段の生活になくてはならないふうに、そこにあって、灯りがついていて、宙に浮いていて、静かに勝手にまわっている。がらんがらん。

NYで暮らしていたとき、基本はアパート内のコインランドリーを利用していたので、この場所についてはいろいろ考えたことがあった。自分の部屋でもなく、かといって完全なパブリックでもない - 少なくとも回転するドラムの中は。自分の一番身近な、身体に貼りつく衣服を洗濯する場所なのだが、そのなにをどういう順番で、どんなふうに洗うのかは自由で - 人によってはスニーカーとか毛布まで平気で洗っている - でも終ったらとっとと出ろ/出せ、みたいなルールもあって、ドラムに放置されている服は外に出されてしまったりもする。 一週間に一回は必ずここに来て一定時間、部屋と機械のご機嫌に完全に束縛されて、でも不愉快かというとそんなでもない。洗濯ものがあがってきた瞬間は気持ちよいし …  なに書いてんだろ  - - えー、つまりコインランドリーって教会とかインド人にとってのガンジス川みたいなもんだよね、と思ったことがあったの。 待ち時間のあいだに。

こんなふうに、女優ふたりの出会いのドラマをコインランドリーに - コインランドリーで出会いました、なんて安易なやつではなく - コインランドリーに突っこんで仕あげてみました、という軽やかさと、それに銀河系を持ちこんでしまう強さがすばらしい。これから畳んだりアイロンかけたり面倒なところはあるのだろうけど。

こないだの”DressingUp”といいこれといい、もう日本映画は女性のだけ見ていればええ、とかおもった。

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