8.16.2013

[film] Something from Nothing: The Art of Rap (2012)

10日の土曜日、"2 Days in New York"のあと、坂をのぼってシネマライズで見ました。

米国でやってたときに見たかったけど、時間がなくて見れなかったやつ。

監督のIce-Tがインタビュアーも兼ねて伝説のから若手まで、一通りの人たちに聞いていくなかで、ヒップホップの起源とかラップとヒップホップのちがいとか、ラッパーとMCのちがいとか、どうやって始めたのかとか、どうやって歌詞をつくるのかとか、歌詞になにをこめるのかとか、どうやってスキルを磨くのかとか、そういういろんなのがわかる。 インタビュアーの聞きだしかたのうまさ、やりとりのイキの良さ、もあるのだが、とっても勉強になる。 のと、あとは即興、その場で自分のスタイルを実演してくれるので、なるほどこういうこと、て膝をうつ。

最初の場所はNew York(起源・発祥の地)で、そこから一瞬Detroitに飛んで(エミネム)、最後はLAに行く。
インタビュイーが変わるたびに空撮で都市がでっかく映しだされ、その上にぶっといビートがどかどか鳴りひびく。 その瞬間がえらく気持ちよく、かっこいい。

お話しの内容だと、やっぱし初期の開拓者の人たちの昔語りがおもしろい。
どうやってタイトルにもある、NothingからSomethingに行ったのか、それが寄り集まって流れをつくり、川ができて村ができて街になって、やがてはアートになってマーケットができあがる、と。

割と共通しててなるほどーと思ったのが、スキルを磨いて努力して戦ってトップに立つ、俺がぜったい一番世界いちだし、そこを目指す、ってみんなが言っていたところ。 最後のほうでSnoopが、アートかスポーツかっていったらスポーツかも、と言っていたように、他者に勝つ、仲間のなかでも一番になる、でもお互いレスペクト、みたいなところって、スポーツだよね。 それがどうした、ではあるのだが。

Rakimさんだったか、まず紙に16個の点を打ってその間に埋める言葉を探す、じっと見ていると詞が浮かんでくる、とか割と地味な制作系のはなしがおもしろかった。 みんなずーっと高いテンションで、四六時中ぎんぎんおらおらしているわけではないのね、とか。

土地別でいうと、NYは割と恐縮したかんじで静かめで、監督のホームのLAだと、ノリがちがう。 Ice CubeもDr.DreもSnoopもまだみんなきらきらしている。

あとは、自分にとってのヒップホップとは、みたいなのを遡って考えてしまったりした。
最初はラジオの全英Top20で流れた"White Lines (Don't Don't Do It)"だったなあー。あれはほんとにびっくりしたなあー、とか。
次は90年代初のNaughty By Nature、だねえ。 FDRの横をがたがた揺れまくりながら走っていたTaxiのラジオで"Hip Hop Hooray"が流れてきたとき、これかぁ! ってあたまに閃光が走ったのだった。

これは作り手、アートの担い手を描いた映画だったが、聴き手側の土壌・事情みたいなはなしも聞いてみたい。
わたしにはサウスブロンクスで生まれ育ったプエルトリカンの義兄弟(腐れ縁)がいるのだが、こいつの話とか聞いていると、ミルク飲むみたいにヒップホップを浴びてきているので、そもそもの素地がぜんぜんちがう。 我々がレコード屋通って入門したり勉強したりしたあれこれが、はじめっから耳のベースにあるの。
土地と音楽、とかそういうとこに落ちてしまうだけなのかもしれないけど、彼らが生きてきたなか、学校行ったりつるんだりしてきたなかで、ヒップホップってなんだったのか、とか。 それって異国を旅をするのにとても近い感覚でもあって、つまり土地とか土壌とか湿気とか。

あと、これと同じことを例えばパンクでやったらどうなるのか。 地域別にパンクの変遷を追っていったドキュメンタリーもないことはなかった - Don Lettsの"Punk: Attitude" (2005) とか - 気はするが、パンクてやはり土地への執着 - その土地から成りあがる - ってあんまないかんじがした。
No Skill - No Future で Nothing from Something、ていう逆ベクトルなんだよね。

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