8.19.2013

[film] The Man with the Iron Fists (2012)

夏バテではないと思うのだがもうぜんぶいやでぐだぐだで死にそうで、そんな金曜日の晩、「処女の泉」とこっちと、どっちにするか少し考えて、より鬼畜なほうにした。 そういえば"Django Unchained"も見ていなかったなあ。

RZAが監督/原作/脚本(Eli Rothと共同)/出演/音楽で、こねこねつくったカンフー・ウェスタン、みたいなぎんぎん活劇。Tarantino一派が絡んでいそうなことはすぐわかるのだが、IMDB上に彼の名前はない。

いろんな武装集団が勢力争いしていた19世紀の中国の叢林村(Jungle Village)にRZA扮する鍛冶屋がいて、彼はせっせとお金を稼いでそこの娼館、粉花楼(Pink Blossom)にいる彼女 - Silkを身請けしようとしている。ある日、村を通過する総督の金塊の監視を依頼されたなんとか団のトップの金獅子が倒されて銀獅子と銅獅子が後を握って金塊を持っていこうとする。そこに仇討ちにきた金獅子の息子とか総督側の強いひとたちとか、謎のRussell Crowe(名前はJack Knife..)とか娼館のマダムのLucy Liuとか当然銀獅子銅獅子側の刺客とかわらわらいっぱい出てきて、最後は血みどろ。

70年代のカンフー映画がどんだけ残忍で残虐で情無用でありえなくて、他方でひとの、ひとと殺しの道具である武器の動き - 特に喧嘩の動きと殺し - のあらゆる可能性を追求してておもしろいか、びっくりさせられるか、教えてくれたのはLincoln CenterのFilm Societyだった。 倒されて死んだひとは生き返らない、それ以外はどんなことだってある。 ありうる。 やってよい。
この映画にもX-Menみたいなの(Brass Body)が出てくるが、まったく違和感はないの。

RZAは最初のうちは真面目で寡黙な鍛冶屋だったのだが、金獅子の息子を匿ったことから銀銅に難癖をつけられて両腕を切断されてしまい、そこを救ったRussell Croweの助けを借りて鋼鉄の拳を造って戦いに乗りこんでいく。 そこに至る過程で 彼の顔というか貌が劇的なまでに変わっていくことに気づかされる - アメリカの奴隷時代のアフロ(Pam Grierもいる!)から人を殺めて船に逃げ、その船が遭難して中国に流れ着き、僧院に拾われて髪を剃って修行に明け暮れ、しゃばに出て鍛冶屋になって、両腕と彼女を、全てを失って復讐の鬼と化す。

その上のレイヤーには、アメリカの奴隷制からの逃走があり、中国の植民地化の流れとその混乱があり、女性解放(Black Widows)があり、アヘンがあり、要するにものすごくでっかい世界の風呂敷があって、その上に戦いに向かわざるを得なかったひとりと、その周りの複数の男女の物語をぜんぶぶちまけようとした。
血が飛びちり肉が刻まれ骨が砕けて目玉が飛ぶたびに、これらの歴史とその交錯が絵巻物(フィルム)のなかにぐるぐる簀巻きになっていく。

デビュー作はこうじゃなくちゃ、だし、First cutが4時間分あったというのもわかるし、こっちのほうが見たいなあ。 それを95分に切ったらそりゃごちゃごちゃするよね。

Russell Croweは、エロ場のやらしいおやじも、毒矢吹きとの戦いのとこも、なかなかがんばって動いていたほうではなかったか。 "Les Misérables"よりはいかったかも。

Lucy Liuは貫禄のかっこよさと剃刀の鋭さ、そして気品。 そこらの半端なアマゾネスみたいなのとは格がちがうの。

音楽はウータンをはじめとしてぶいぶいのゴリゴリ。 ガレージでも艶歌でもなく、これしかないんだ、という鉄の拳の嵌り具合はさすが。

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