8.19.2012

[film] Take This Waltz (2011)

シネマヴェーラで"The Shop Around the Corner"のあと、そのままBunkamuraに横滑りして見ました。 "A Letter to Three Wives"見て、"The Shop Around the Corner"見て、これ見たら恋愛経験値(机上)は相当アップするはずなのだが、周りはどろどろにあっついばかりでどうなるもんでもなし。(では、どうしたいのか)

Michelle WilliamsとSeth Rogenが結婚して5年になる夫婦で、夫はチキン料理(カチャトーレ!)のレシピ研究家で妻は旅行ガイドのライターとかしてて、そこそこ仲良しだし不幸でもないし不満もない、でも彼女のほうはなんか疲れてどんよりしている。 怖くなることを考えるのが怖いのだ、という。

仕事先で知り合った若者と帰りの飛行機で一緒になり、更に家も通りを挟んで斜め反対側であることがわかる。
そんな偶然の出会いにときめいて、人力車の車夫をしながら絵を描いている真面目な若者に彼女がだんだんに惹かれていって、というような簡単なお話し、であるわけがない。

平穏な日々の皮いちまい向こうでがたがたに崩れていく世界とそれをなんとか修復すべく悶々としつつ、川の向こう側に懸命にジャンプしようとする。 80歳になったときに向けて彼が用意していたジョークも30年後の待ち合わせ約束もぜんぶすっとばして、それでも彼女はワルツを、と差し出された手を自分のものにしようとする。 世界が崩れて落ちていくのをどうすることもできない、同じように自分が飛びおりることを止めることもできない。 生き急ぐ、というのでもなく、幸せになりたい、というのとも違う。

安易な共感や救いを求められるような場所に、彼女はいない。
これを解決できるのは彼女だけで、そこには彼女ひとりしかいない。
Sarah Polleyの前作、"Away from Her" (2006)もおなじような声が聞こえてくる作品だった。

"Let Go" と。 

この声の前で、男達は黙るしかない。 Julie Christieの青い瞳、Michelle Williamsの仏頂面を前にして、他になにができるだろうか。

最後、彼女の旅は続いていくことが示されて、それはそのままぐるっと最初のシーンに繋がってくる。 ワルツが一回転する。でもそれは同じことの繰り返し、とは違う。

"Away from Her"は、Neil Youngの映画だったが、今回は言うまでもなくLeonard Cohenの映画。
あとは、Bugglesの"Video Killed the Radio Star"が、しっかりと2回流れる。 この2回めこそが。

しかしなあ、"Take This Waltz"に合わせて画面がぐるうっと回っていく一番大切なシーンでなんでボカシを入れるかなあ。 全員でシャワー浴びるとこはまるだしOKで、抜き差し(推測)するとこはダメだという、その考えかたがまーったくわからない。 わかりたくもない。

Michelle Williamsはしみじみすごいねえ。これの後にMarilyn Monroeやって、この次は"Oz: The Great and Powerful"(監督は Sam Raimi!)でGlindaだよ。
でも、Meryl Streep的な化け芸とはちょっと違うかんじなのよね。

唯一、気にくわないとこがあるとすれば、Seth Rogenがあまりに良いひとすぎることだ。 場合によってはかっこよく見えてしまったりするので居心地がわるい。
"50/50"でもよい友達すぎるのが気になったが、こんなんでいいのか、こいつはそんな奴じゃないんだ、と。 彼に恨みがあるわけでもなんでもないのだが、なんかね、ちがうのよね。(てみんな言っているはず)

画面全体の薄い黄色緑色系のトーンも素敵。 "Away from Her"だと雪の白さがまず浮かぶように、こういう頑固さは、なんかいいなー。

ふたりが一緒に見にいく映画が"Mon Oncle Antoine" (1971)だった。 いいなー。(そんなのばっか)

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