8.09.2012

[film] The Lady Eve (1941)

やっと追いついたと思ったらまた離れてしまった。 とにかく書く時間がぜんぜんないの。

29日の日曜日にシネマヴェーラで見た2本。
特集『映画史上の名作7』、この夏はもうこれ見て終るだけになってもいい、休み取れなくてもいい。
とか言いながら既に『クリスチナ女王』を逃してしまったばか…

ここでかかるようなクラシックって、ほんとに何を見てもおもしろいのだが、その面白さを、例えばそこらのガキに伝えるのって難しいよねえ。
60年前のレシピで作ったクッキーとかパイとかが、どんだけ地獄のようにおいしいか(ほんっとにおいしいんだよ)、って食べてもらうしかないのだが、食べてもらう機会がぜんぜんない、というのはなあ。 調味料、人工甘味料まみれか絶対安全無農薬カロリーフリーみたいのになじんだ子供の舌にこういうふんわりやわらかい風味がどう馴染むのかとか、わかんないけど、でも食べてみればさー。ぶつぶつ。

Preston Sturgesのどつぼにはまり系のラブコメ。
ヘビを研究しているビール会社の社長のぼんぼんがアマゾンに探検に行った帰りに乗った豪華客船で詐欺師父娘に会って、娘(Barbara Stanwyck)のほうにメロメロ骨抜きにされるのだが、船を降りる直前にその正体を知っておじゃんにするの。 でもあったまきた彼女は懲りずにこんどは英国貴族の姪"Eve"になりすまして彼に近づいて、落っことそうとする。 彼は、似てる… でもたぶんちがう… でも… と目が泳ぎまくった挙句に、結局おちる。 詐欺師の手に、じゃなくて、恋に。
で、ふたりは結婚してハネムーンに出かけるのだが、そこから先、結末のお洒落なでんぐり返りときたら、もうお手上げなの。
ほんとに、アクロバットとしかいいようのない着地っぷり、というか、ヘビの尻尾の先でぐるぐる目を回されてへろへろ、というか。
それか、洒落た落語みたいにおちる、というか。

冒頭の尻尾でマラカスを鳴らすヘビのアニメからごきげんで、終始半口あけて目が虚ろなぼんくらのHenry Fonda(ちょっとだけRufusに似てる)を始め、男はほぼ全員まぬけのブタやろうでずっこけてばかりなので、ぜんぜんかわいそうじゃないの。 それに相手はBarbara Stanwyckさん(まだわかーい)なのだから、騙されたってかまうもんか、なの。 船で最初に出会った頃、彼にぐるぐる巻きついてごろごろする彼女を見たら、あ、ヘビだ、とか思うのだが、とにかくあのねっちりと朗らかでキュートなかんじがたまんなくて、結局ヘビに食べられたところでなにが悪いのか、いや誰も悪くないだろ、って無責任やろうになる。

結局このふたり、滓まで搾りとられた男のほうが捨てられるんだろうなあ。
でもヘビに惚れちゃった因果だよね。


そのまま続けて、『アラゴンの要塞』 - Agustina de Aragon (1950)  を見ました。

1808年のスペイン独立戦争のとき、ナポレオンに攻め入られたスペインのおはなし。
アウグスティーヌ(Agustina Raimunda María Saragossa Domènech または Agustina de Aragón)ていうおねえさん(顔はおばさんぽい)のがんばりが中心なのだが、武勇伝とか烈女伝、というかんじではなく、みんなで耐えて耐えてがんばったスペインえらい、というつくりになっている。

戦闘シーンの敵味方ぐじゃぐじゃぐさぐさした肉弾のかんじがゴヤの絵のように(ていうか、ゴヤのがオリジナルね)悲惨ですばらしく、実際は相当ひどかったんだろうなー、とおもった。
個々の戦いを個別に間近から迫るというよりは、中〜遠距離からくんずほぐれつの様を棒立ちで追っかけるかんじ。 関わりたくない。

城塞の外は敵ばっかし、中ではペスト蔓延、でも、どうせ負けるかもだし、負けたら死ぬだけだから死ぬまでやるべ、という百姓のみなさんの鬼のような開き直りが神風とか大魔神を呼ぶ... ことはもちろんないし、彼女もものすごい活躍をする、というよりは裏切り者の婚約者に背を向けて、死ぬときはみんな一緒です、みたいな地味なふんばりを続けていくばかりで、それがみんなの希望の星になる ... なんて清らかなとこもなくて、どちらかというと(映画の展開としては)ぐだぐだずるずるなのだが、それでもすごく見応えあって、おもしろかったの。

あと、劣化したフィルムの暗くてぼろぼろなとこが戦いの辛くてきな臭いかんじとうまく同調しているようなとこもよかった。

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