3.13.2012

[film] Le Skylab (2011)

土曜日の3本目、『エデンより彼方に』の更にむこうに抜けて日仏、フランス女性監督特集で、Julie Delpyの監督作第3弾を見ました。 

子供がふたりいる働くお母さんのアルベルチーヌは、家族で帰省する電車の車中、ふと79年、自分が11歳だった頃の夏を思い出す。

フランスの海が近い田舎の大家族で、おばあちゃんとかおじさんおばさんとかいとことかよくわかんない親戚がうじゃうじゃ集まっている。
それは、スカイラブが世界のどこかに落っこちるかもしれない前の晩で、ひょっとしたら自分のとこに落ちてくるかもしれない、そしたらみんな死んじゃうし世界は終わってしまう。

11歳のアルベルチーヌは、メガネで小太りで髪はもしゃもしゃで、ファーストキスはハン・ソロにしてもらいたくて、両親(ママを演じているのがJulie Delpy)は68年組のばりばりの左翼で、そんなふたりに育てられたおもしろくて微妙なお年頃なの。

そして、実年齢からしても、アルベルチーヌは間違いなくJulie Delpyの子供の頃の。

フランス映画のこういうのって、田舎生活ばんざい、大家族ばんざい、人生(以下同)みたいなかんじになりがちで、あんまし(好きにやってろ)なのだが、この映画はそうはなっていない。 家族内のいろんな変なひとたちがそれぞれに勝手に小騒ぎを起こして、夜が明けたらなんとなく収束して、なんとなく別れる。 ほんのりたのしい夏の絵日記(by アルベルチーヌ)にとどまっている。

羊の丸焼き、突然の大雨、人形あそび、サッカー、首つり、ビーチ、ダンス、けんか、怪談、夜這い、もんもん、などなど。

いっこいっこの出来事を挙げていったらきりがないのでやめるが、少しだけ。

子供たちが夜にどっかの離れた家でやっているダンスパーティに行くの。 
そこでは昼に海辺で出会ってちょっときゅんとしたマチューがDJやってて、ぽーっと見ていると、彼がやってきて、これからパンクかけるけど、おどれる? っていうの。
そこでかかるのが、Dead Kennedysの"Too Drunk to Fuck"で、みんなでがんがん踊るの。
そいから、じゃあ次はスローなやつね、って、今度はGilbert O'Sullivanの"Alone Again (Naturally)"がかかって、ふたりでチークするの。
この2曲でアルベルチーヌはかんぜんにのぼせて舞い上がってしまうのだったが、ふと我に返ると彼は別の大人っぽい女の子とキスしてて ...  とか。

(ほんとは、Dead Kennedysのこの曲は81年のだからありえないのだが、でもおもしろいからいい)

ヌーディストビーチでこっちに歩いてくる女性の茂みがホームベースみたいにでっかい。Michael Fassbenderのちんぽこと並んで、最近の感嘆アイテム。

夜寝る前におばあちゃんのとこにおやすみを言いにいって、おばあちゃんは寝てる間に死んじゃうかもしれないから、ってぎゅーってするとこがたまんなく素敵。

羊の丸焼きがすごくうまそう。

アルベルチーヌのパパが、こないだのカンヌにこいつを連れてって『ブリキの太鼓』と『地獄の黙示録』を見せた、っていうの。 すごーいー。 いいなー。 
あと、お別れのときに街角に『エイリアン』のポスターが貼ってあって、これ見たい! っていうの。 そうそう、あのポスター、当時はこわかったんだよね。

結局スカイラブは自分たちのとこにはおっこちなかった。
おっこちなかったけど、おっこちなかったから、自分の夏はあの場所に確かにあったし、家族もみんないた。

そのことにはっと気づいた彼女は、電車のなかで家族4人同じ場所に座れるようにおばさん風を吹かせて周囲の客にむりやりどいてもらうのだった。

感傷とかそういうのではなく、さーっと蘇ってきたあれこれを横に並べて、それに「スカイラブ」って名前をつける。
その軽やかさと鮮やかさは、きりっとした女の子のもので、すばらしいったらないの。

字幕が英語だったが、日本公開の予定はないのだろうか。
三丁目のなんとかなんかの1000倍はおもしろいのにこれ。

上映後のトークは、頭痛がひどくなったのでパスして帰りました。 聞きたかったなー。

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