1.18.2023

[film] Pattes blanches (1949) +

シネマヴェーラの特集『ヌーヴェル・ヴァーグ前夜』で見たのを3つ。

Pattes blanches (1949)

1月7日、土曜日の昼に見ました。『白い足』 - 英語題は”White Paws”。
監督はJean Grémillon。脚本にはJean Anouilhの名がある。 ロカルノ映画祭で特別賞 - Best Combination of Editing and Cinematography – を受賞している。

ブルターニュの(でも実際にそこでは撮っていないらしい)海辺のさびれた町の魚屋/宿屋/酒場の主人Jock (Fernand Ledoux)が町から愛人のOdette (Suzy Delair)を連れてきて囲おうとするが、丘の上の屋敷に住んでいて白いゲートルを巻いているので「白い足」って揶揄われている没落貴族のJulien (Paul Bernard)に惹かれていって、ここにJulienに憧れる酒場の娘Mimi (Arlette Thomas)とJulienを恨む腹違いの弟が絡んで、というどろどろの愛憎劇~惨劇に転がっていくの。

冒頭に男と女の乗った白い車がやってくるところはノワールで、そこから幻想の舞踏会とか馬とか崖とか藁火事とか、各登場人物の思いや妄想が好き勝手に過剰に暴走してめくるめくとしか言いようのない事態が燃え広がってなにをどうすることもできない。地元の新興有力者と没落貴族の対立という構図から遠く離れて情念が吹きまくる支離滅裂な痴話喧嘩になっていくので、映画としてこんなのよく成立するもんだな、と思うのだが、すさまじい磁場があって、目を離すことができないのはなんでだろうか。『曳き船』と同じように見終わって「…」って寒くなって甘酒とか欲しくなるやつ。


Donne-moi tes yeux (1943)

1月8日、日曜日の昼に見ました。『あなたの目になりたい』。原題を直訳すると”Give me your eyes”になるが、米国公開時のタイトルは”My Last Mistress” 。 作・監督・主演はSacha Guitry。

パリの展示サロンに友達とやってきたCatherine (Geneviève Guitry)にそこで出展しようとしていた彫刻家François (Sacha Guitry)が声をかけて、自分のアトリエに招き、Catherineの胸像を作りたいから、とアトリエに通ってもらいながら会うようになって、ふたりは実年齢だけでも30くらいの年の差があるのだが、そういうのを配慮しつつもFrançoisがCatherineを口説きおとしていく台詞の爆撃がおしゃれすぎて呆れる(そこらの性悪じじいが悪用できそうなレベルを遥かに超えてて)。

こうしてふたりは結婚の手前までいくのだが、だんだんFrançoisの挙動言動がいじわるで理不尽に感じられるようになっていって、ラウンジにディナーに行った時に歌っていたの歌手へのモーションにCatherineは耐えられなくなって、翌日のアトリエで別れを告げて出ていってしまうのだが..

ネタをばらすと、Françoisは黒内障(というのがあるのね。一過性のもの、ってWebにはあるけど)で目が見えなくなりつつあるのでわざとCatherineを遠ざけていた、ということでそれを知った彼女は…

夫婦(or それに近いところにある)男女はどんなふうにその溝を狭めようとするのか、或いは深めようとするのか、そのひとつの(断絶)バージョンが年末に見た『毒薬』(1951) で、もうひとつの(抱擁)バージョンが『あなたの目になりたい』なのだと思った。どちらもそのぎりぎりに危うい最悪のケースと最良(でもないか)のケースとして描いているが、実相は同じように脆くて儚い「それ」を真ん中にしてめちゃくちゃデリケートに(か好きなようにか)扱っていてたまんない。

この辺、マスキュリニティ云々の話とはちょっと違う気がしているのだがもう少し考えてみたい。

名前を見ればわかるようにSacha GuitryとGeneviève Guitryはこれが撮られた時は実の夫婦で、39年に結婚して49年に離婚している。『毒薬』が離婚後に撮られているというのはわかりやすすぎ…
(というか彼、結婚5回しているのな..)

とにかく、3月のシネマヴェーラの特集はぜんぶ行くしかない。


Caught (1943)

1月8日、↑のに続けて見ました。『魅せられて』。内容からするとどう見たって『囚われて』だと思うが。
監督はMax Ophüls、助監督にはRobert Aldrich、原作は米国の女性作家Libbie Blockの小説 - ”Wild Calendar”。もう何度も見ているやつだった。

お行儀学校を出てマネキンをしながらお金がほしーなー、とか呟いていたLeonora (Barbara Bel Geddes)は渋々出かけた船上パーティー(の手前)で噂の大金持ちSmith Ohlrig (Robert Ryan)と出会って、彼が彼女を車で送ってそれきりになると思われて、嫌なやつだったのでそれでよかったのに、担当精神科医にふっかけられたOhlrigが結婚くらいやってやらあ、と一方的にLeonoraに結婚するからって通告し、彼女は一躍玉の輿シンデレラになるのだが、その後のロングアイランドのお屋敷での結婚生活はご主人待機とお飾りメインの奴隷でしかなくて、嫌になった彼女は家を出てマンハッタンの下町の町医者のオフィスに仕事を見つけて素性を隠して一人暮らしを始める。(この辺『愛されちゃって、マフィア』(1988)にちょっと似ている)

町医者は産婦人科医のHoffman (Frank Ferguson)と小児科医のQuinada (James Mason)のふたりで、最初はバカにされていたLeonoraもがんばって勉強してとけこんでいくと、Quinadaの方からやっぱりプロポーズされて、でもそのとき、Leonoraのお腹にはOhlringの子が…

絵に描いたようなジェットコースター昼メロ展開が次々に押し寄せてきてたまんないし、ラストのオチなんて、幸せ..? ならいいけど… くらいなのだが、とにかくキャスト全員がものすごくうまいのでB級感を飛び越えてぴんとしたクラシックを見たかんじになってお得かも。

とにかくRobert RyanとJames Masonだよね。最後はふたりで殺し合うまでぐさぐさにやりあってほしかったのになー。(でも最初はJames Masonの方がお金持ち役の方だったって..)

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。