12.01.2021

[film] The Mauritanian (2021)

11月21日、日曜日の午前、Tohoシネマズの六本木で見ました。邦題は『モーリタニアン 黒塗りの記録』。

時間割の事情なのかシアターがMX4D(まだ入ったことなし)ので、拷問の体感リアルなのがやってきたらやだな、と思ったけどさすがにそれはなかった。

2001年の911の関係者として拘束され、そのままグアンタナモの収容所に14年間拘留されたMohamedou Ould Salahiの2015年に出版された手記”Guantanamo Diary”を元にした作品。911に関連したものは見ておかないといけないと思っている(のと、まだグアンタナモって閉鎖されていないので現在も続いている話として)。

911から2ヶ月後の11月、モーリタニアで家族と過ごしていたMohamedou Ould Salahi (Tahar Rahim)は、夜中にアメリカ軍が話したいと言っている、と呼ばれて連れ出され、そのままアフガン→グアンタナモに送られてしまう。彼の携帯にオサマビンラディン宅からの着信があったこと、いとこがアルカイダの重要人物だったり、911の実行犯をリクルートしたり自分の部屋に泊めていた疑いがあること、等が拘束の理由。

彼は身に覚えのないことは知らないとしか言いようがないのでそう返すのだが、アメリカからすればそれは否認ではなく未自白の状態となるので吐くまで拷問、という論理になってどこまでも終わらない。

この状態でパリの事務所経由で依頼を受けた弁護士Nancy Hollander (Jodie Foster)と部下のTeri (Shailene Woodley)がSalahiの弁護をすることになり、軍の方は検察としてStuart Couch中尉 (Benedict Cumberbatch)を立てる。Stuartは友人のパイロットが911の犠牲者でもあり、絶対に立件するのだ、って燃えている。

グアンタナモの現地に赴いてSalahiと面会したNancyとTeriがとにかくなんでもいいから話して書いて、と関係を深めていくところと収容所から出された黒塗りだらけの調書 - 黒塗りレポートについては、Adam Driver主演の”The Report” (2019)も参照 - を追っていくところ、そこに2005年(映画の現在時点)の映像とここより前の尋問の際の映像がより狭まったフレームサイズで交互に映しだされていく。それらはどれもSalahiの現在と拘束されてからの過去を追っているだけで彼の頭のなかにある(or ない)過去のなにかを再現したものではない。

やがてNancyたちとSalahiの関係がよくなってきて、これはいけるかも、になりかけた頃にリリースされた調書でSalahiは全面的にクロの供述をしていて、それを見たTeriはあきれて抜けてしまうのだが、Nancyはその供述の信憑性に疑いを持って収容所で実際に何が行われていたのか - そこを掘っていくと..

その反対側でSalahiの証言を追っていたStuartも同じ壁にぶち当たり、Salahiの証言の正当性を保証するものが全くないことに愕然とする。こんなのだめじゃん無理じゃん…って。

結局、911をきっかけとした「テロとの戦い」を大義名分にイラクとアフガンに派兵までしてしまったアメリカとしては、なにがなんでも「犯人」を挙げて極刑にして国民に示したかったのだな、ということ、そのなりふり構わない必死さが明らかになっただけ、それがNancyやStartといった「まともな白人たち」によって露わにされただけでもよかったではないか、と見るか、それにしても酷すぎるしなんでこんなことが許される仕組みになっていたの- なんでもありになるじゃん、と見るか。

とにかくこれがあるのでブッシュもラムズフェルドもチェイニーも未だに、断固絶対許すことができないの。
自分の国の入国管理局がほぼ同様の人権蹂躙を(自国の法システムのなかで堂々と)やっているのでぜんぜん偉そうなことは言えないのだが、(このケースのように)法の外側で異国の人に向かって好き勝手にやり放題のやつって(あ、戦争もその一例ね)なんとかならないものだろうか。

いちおうSalahiは釈放されて本はベストセラーになってよかったねえ、なのだが、それでも彼とNancy組がなにかに勝利したかんじはまったくない。ここに来るまでに何人の罪のない人たちが亡くなったり狂ったりしてしまったのか、未だにグアンタナモ拘置されたままの人たちは何人いるのか、なんで(オバマもバイデンもいまだに)閉鎖できないのか、など。

それにしてもからからの骨のように乾いて意地と怒りで真っ白になって喋りまくるJodie Fosterの凄みとかっこよさ - いやかっこいいとか褒めてはいけないと思うのだが、すごい。自分みたいのが何人いてどれだけがんばったって救われない、どうすんだよこれ、っていう怒りと絶望の狼煙。その反対側で、罪への怒りに沸騰しつつも敬虔なクリスチャンとしてケースから身をひくBenedict Cumberbatchの繊細な演技も見事なのだが、あのJodieには勝てないような。


もう12月で、いろんな映画の特集がいっぱいあって楽しそうなのだが、1週間でもいいからクラシックの定番クリスマス映画を特集してくれる名画座がほしいよう。入れ替えなしでずっと流しっぱなしにしてくれるの。

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