12.25.2021

[film] The Matrix Resurrections (2021)

12月18日、土曜日の夕方、Tohoシネマズの六本木で見ました。
監督はLana Wachowskiのみで、Lilly Wachowskiは関与していないもよう。

前世紀末、渋谷のパンテオンで見た”The Matrix” (1999)にはそんなに熱狂しなかった派で、既にサイバーパンクは来ていたので新しくもなんともなかったし、バレットタイムにしてもワイヤーアクションにしてもなんか恥ずかしいかんじがしたし、エンディングのRATMにしても、あーあうまく取りこまれちゃって、くらいだったし、その後の”Reloaded” (2003)と”Revolutionss” (2003)にしても、先がああなるのは見えていたし過剰でくどすぎて目は疲れてぐったりになるし、そんな程度のものだったの。

でも今回のはなんかよかった。年寄りウケを狙ったのかもしれないけど、“Bound” (1996)と同じくらい好き - 恋愛映画だよね。 以下、いつものようになにがネタやねん、というレベルのネタバレをしています。 過去の3作を見ていなくても、主人公たちですらあやふやになっているところをフラッシュバックできちんとなぞってくれるのでだいじょうぶだと思う。

サンフランシスコに暮らす長髪ヒゲのThomas Anderson (Keanu Reeves)はゲーム - ”The Matrix”のデザイナー/クリエイターとして成功していて共同経営者のSmith (Jonathan Groff)と共に次のゲームのリリースの準備を進めているのだが、精神的にはどんより疲れてなんか不安定で、カウンセラー/The Analyst (Neil Patrick Harris)のところに通っている。

そこにMorpheus (Yahya Abdul-Mateen II)やBugs (Jessica Henwick)と名乗る若者たちが現れてやっと見つけた、とか、迎えにきた、とかわけのわかんないことを言うので混乱して、でも彼らといるとありえない銃撃戦に巻き込まれたりして散々で、でもこれも病の一部なのだとThe Analystのところに通い、他方で若者たちが話すかつての自分やMatrixのこと、どこかで会った気がするTiffany/Trinity (Carrie-Anne Moss)のことも気になり始める。

最初の”The Matrix”でNeoが向こう側に引き摺りこまれたのと同じようなことを前半ではやっていて、でももうミドルエイジでそうたやすく引っかからないThomasがどこを押されてどう目醒めるのか - だがしかし今回は、どちらかというと家庭をもって子供もいて生活になんの不満も不安もなさそうなTrinityをどうやってひっぱりこむのか、赤の錠剤と青の錠剤どちらを飲むのか - が肝心のテーマで、でもなぜそうする必要があるのかについては、だれも明確な答えを持っていない。例えば、それが恋というものだからー、など。

“The Revolutions”の最後で死んだはずだったNeoがなぜ死ぬことも許されずに再生されたのか、「革命後」のMatrixでNiobe (Jada Pinkett Smith)ら残された人類になにが起こっていったのか、についても説明されて - 要はよくわかんないらしい - けど、そういうことは起こるんだろうな、と推測されるおなじ土壌の上で、Neoが再起動 - RebootではなくResurrection - され、宿敵であったSmithも、かつてのOracle的なところにいるAnalystも、反乱分子の若者たちもその像をクリアに、露わにしてくる。

そして、でも、なんといっても今回はTrinityのことで、これってカフェで一瞬目があった素敵な彼女にどうやって話しかけて自分のほうに関心を持ってもらったりするのか、というrom-comの最初の壁に人類と機械の攻防の歴史をぶつけてみてどうなる?/どうする? というこれ自体が荒唐無稽な(SFというよりは)rom-comとおなじような構造になっている、というあたりが、それをやや疲れた中年のふたりの目の交錯のなかで正面から取り組もうとしているところが、いちばんきゅんとくるところかも。年寄りにとっては。

そして、Matrix全体がこのふたりの逢瀬を全勢力をかけて潰しに来ようとする、その混沌に満ちたばかばかしさもすばらしいったらない。最後の方のビルから人々がぼとぼと落っこちていくのとか、列車の中の大虐殺とか、レミングみたいですごいしMatrixもそこまでのところに行ったか、って。しかもこれ、また同じことの繰り返し - なにが起こったのか誰もじゅうぶん把握していない - になるかもしれないのに。

でも、そういうことは起こるものだし、ふたりの恋は最強のものなんだから、って、今回はTrinityの方が目醒めてしまうところが素敵だし、最後に彼女がNeil Patrick Harrisに子供をダシに使いやがってくそ野郎、って怒りの一撃を加えるところとか、すごくよいの。(Neil Patrick Harris、”Gone Girl” (2014)に続いてまたしてもずたずたに)

ネットの世界で理由づけできないことが起こる、という点でこないだの”Free Guy”のようなことが起こるのかも、と思っていたが、あの方向からのはなかったかー。


クリスマス。今年のクリスマス盤は、Sharon Van Ettenさんの”Blue Christmas”の7inch(サイン入り)とか、Aidan Moffat and RM Hubbertの”Ghost Stories for Christmas”とか。でも突然現れたLCD Soundsystemの”Christmas Will Break Your Heart”にやられた。

あと、9月にオーダーしていた本たちが24日に突然届いた。Kevin Cumminsの”Joy Division - Juvenes”、Questloveの、Warren Ellisの、Sally Rooneyの、ぜんぶサイン本。お片付けをしながら本は読めないからお片付けはー。
 
よいクリスマスとなりますように。

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