12.20.2021

[film] È stata la mano di Dio (2021)

12月9日、木曜日の晩、シネリーブル池袋で見ました。英語題は“The Hand of God”。

Netflixでも見れるけど(以下同。見れるなら映画館で見た方がぜったいによい作品て、あるよね)
作・監督はPaolo Sorrentino。今年のヴェネツィアで銀獅子をはじめ沢山獲っている。こないだのTIFFでも見にいける時間帯でやっていたのだが、なんとなくパスしてしまった。

Paolo Sorrentinoはそんなに好きでもないし絶対必見、と思っているわけでもないし、“This Must Be The Place” (2011)にしても”The Great Beauty” (2013)にしても、わかるけどどこか過剰でぎらぎら盛りすぎてお腹いっぱい感が強くて、それを「イタリア」で括ってよいのかどうか.. イタリア料理にお手あげになりつつも離れられないのにもまた似て.. 音楽だとゴスの世界のあれらのかんじ。

冒頭、マラドーナの言葉が掲げられた後、海上の空からナポリの岸の方に向かって鳥になったカメラがぐーんと寄っていく。

80年代のナポリ、バスを待っていたPatrizia (Luisa Ranieri)に謎の運転手が声をかけて、不妊で悩んでいた彼女は半分廃墟のようになっているお屋敷でフードを被った小さい妖精? -The Monacielloに触れて、その後の夫とのごたごたで病院送りになった彼女のところに甥の17歳のFabietto (Filippo Scotti)と父Saverio (Toni Servillo) と母Maria (Teresa Saponangelo)と兄Marchino (Marlon Joubert)が呼ばれたりして、始めのうちはFabiettoが主人公なのかもよくわからないまま、変で雑多な親戚家族に隣人友人たちが強い陽射しのもと、ゆっくり紹介されていく。階上に住む男爵夫人Baroness Focale (Betty Pedrazzi)とか、父は浮気しているのに異様に仲良いままの父母と家族とか、船を操ればぜったい捕まらない密売人とか、善いのも悪いのも変なのもふつーなのも、みんな不思議な調和関係を保ってそこに溜まっている。

マラドーナがナポリのチームに移籍してくる! っていうありえないニュースを前にみんなで浮かれ騒いで、初めてひとりでサッカー場でのゲーム観戦にでかけたFabiettoが帰ってみると両親が一酸化炭素中毒で亡くなっていた。こんなふうに自分ひとりが生き残っているのって、なんという偶然であることか – これをマラドーナの1986年のワールドカップでの「神の手」騒動 - 偶然の/一瞬の交錯 - に重ねてみたのがタイトルで、これは実際にPaolo Sorrentinoの身の上に起こったことで、この壊滅的で悲劇的な出来事を通して彼の生の意味とか将来とか – 映画監督Antonio Capuano (Ciro Capano)との出会いから映画の世界を志すとか、ずっと憧れていたPatrizia(の乳房)のこととか、男爵夫人との奇妙な情事とか、現実から少し浮きあがったところにあったあれこれがこちらに向かって緩やかに動きだしてくる辺りまでを描く。そのぐちゃぐちゃして煮えきらなくてこれからどうしろというのかあうう… ってなるところまで、なんかわかる。

誰もがフェリーニの“I Vitelloni” (1953) - 『青春群像』 や “Amarcord” (1973)を思い浮かべると思うし、役者志望の兄がフェリーニの映画のオーディションを受けるところもあるし、本人もその辺は意識しているようだが、自伝的なことをフィクションとして足場を組んで周到に積みあげる、というよりはそれが起こった瞬間の熱とかうなされようとか高揚感とかうんざりとか、ややエモの方に寄って右から左から混沌と共に吹きつけてくる。ナポリのこと、マラドーナのことをまるで知らない人にどこまで響いてくるものなのかは微妙かも。他方で、17歳で突然に両親を失ってしまったあとにすべて違って見えてくる景色 - みたいなところはかろうじて伝わってくるような。

この辺の熱っぽいはったりに粋がり - 踏み間違えたら詐欺師ぽくも見えてしまう手口は“The Great Beauty”とかにもあった気がして、これらの滲みでてくる蒼い悩みにどこまでのって寄り添えるか、など。

ラストで主人公がPino Danieleの"Napule è"を聴いているところは”Call Me By Your Name” (2017)のエンドロールのとこを思い浮かべたりするのだが、この辺ものれない人にはのれないかも。New Orderの”Touched by the Hand of God” (1987)あたりが流れるかと思ったけど、やっぱりちがうか。

でも画面はきれいだし音もすばらしくよいので大画面で。 またナポリ行きたいなー。

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