12.10.2021

[film] Shoplifters of the World (2021)

12月3日、金曜日の夕方、シネクイントで見ました。
積極的に見たい、わけはなくて、今更こんなの見てもグチみたいのしか出てこないんだろうなー、とか思いつつ。実際にそうなったねえ。

Stephen KijakとLorianne Hallが書いてStephen Kijakが監督しているThe Smithsへのトリビュート映画。Morrisseyが楽曲と映像の提供に許可を出したことで世界が驚いた(これが最大のニュースだったか)が、登場人物のちょっとした台詞にもいちいち歌詞の引用が織り込まれたりしていて、とにかくThe Smiths愛に溢れたやつであることは確か。ずっとファンだったら、こんな作品を作れたら幸せよね。

87年、アメリカのデンバーに暮らすCleo (Helena Howard)がある朝、The Smiths解散の報を聞いてうそーって泣き出すのが冒頭で、ここからなんか違和感が。 “The Queen is Dead”の後、コンピレーションの“The World Won't Listen”と“Louder Than Bombs”が出て、シングルの"Shoplifters of the World Unite"が出た頃にはバンドの不和と解散の噂は既にあちこちにあったので、突然聞かされて驚くようなことではなかったのだけど。 別にそういうファンもいたのかも知れないけど、この彼女の悲嘆 – 突然The Smithsが解散しちゃったよう - が映画の大きなドライバーなので、ここに乗れないとたぶん..

Cleoは友人でレコード屋でバイトをしているDean (Ellar Coltrane)のところに行っていつものように万引き(彼が店番のときはさせてくれる)をしながらThe Smithsが解散しちゃったんだよ、って告げるとDeanも悲しんで店内でThe Smithsの音楽をかけていると店のオーナーがやってきてそんなのかけるんじゃないクズ、って殴られたので、Deanは見てろよ、ってその晩に行動を起こす。

Cleoには軍に入って町を離れる予定の友達以上恋人未満のBilly (Nick Krause)がいて、友人のSheila (Elena Kampouris)とPatrick (James Bloor)のカップルも先行きが微妙でもやもやしていて、彼らがThe Smiths解散の報をきっかけに一晩の – いろんな決意を胸に - パーティに繰り出すのと、そこにDeanが町のラジオ局でメタルを中心にかけているDJ - Mickey "Full Metal Mickey" (Joe Manganiello)の番組に押し入って銃を突きつけレコードのケースを広げ、今晩はずっとThe Smithsの曲をかけるんだ、って脅す現場が重なる。こうして忘れられないあの夜のサウンドトラックとして、The Smithsの曲が流れ続けるの。

で、そうやってラジオで流すと – DJは銃で脅迫されていることも放送でいう – 警察も来るけどいろんなところからThe Smithsファンが自転車に乗ってやってきて、みんな悲しんでいるんだね! って。

こうして夜明けまで踊ってキスして喧嘩して彷徨う4人のバックに流れる音楽としてナルシスティックで妄想で膨れあがって自爆に向かうThe Smithsの音楽はとってもはまるので、そこはただ流れているだけで気持ちよい。この作品自体がThe Smiths愛と妄想が作りあげたお話しなのでそれはあたりまえにそうなのだが。 暗くても割とメジャーでアッパーな曲ばかり流れる、という文句は当然あるけど。

ただ、銃を持ちだすほどのあれか、というのは少しある(いまのアメリカの銃のありようを考えると)。”Airheads” (1994) - 大好き - みたいなコメディにしちゃえばよかったのにねえ。

いくつか変なとこもあって。Deanが“Strangeways, Here We Come”からの曲をかけろ、って盤を出すのだが、解散の報が流れたときにはまだリリースされていなかったのよ(どれだけ輸入盤屋に通ったことか)、とか、DJが離婚の原因のひとつにNirvana批判に忙殺されてたから、と言うところ、87年のNirvana(まだ結成されたばかりよ)を批判するのってすごい耳だねえ、とか。

あと、”Pretty in Pink” (1986)のAndieのことをdisるシーンがあるんだけど、そこはまあわかんないでもない、けど君らのやっていることは”The Breakfast Club” (1985)のガキどものすったもんだにそっくりではないか、とか、Sheilaが“Desperately Seeking Susan” (1985)のMadonnaよろしくドライヤーに向かってポーズを決めるとか、あの時代のあれこれを持ちこみすぎて、結果的に薄まっていない?

そしてそもそも、デンバーにあんな数のThe Smithsのファンていたの? - いや、いたのかもしれない。日本だって、The Theの初来日公演(1990年)で初めてあんなに沢山のJohnny Marrを愛する人たちがいたんだ、って驚いたのだし。

これを見てThe Smithsに接して恋におちた若い子がいたとしたらどこをどんなふうに見て聞いて、なにを受けとったのかなあ、っていうのは割と興味ある。

最後に、彼らは今… をMorrisseyの現在と並べて置いてみたら全体に塩味と酸味が効いてほどよいかんじになったのでは。

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