7.14.2021

[film] Black Widow (2021)

7月9日(金)の夕方、二子玉川の109シネマズで見ました。この気圧だと3Dは目をまわしてしんでしまうので、2Dにする。

とってもずっと待っていたMCUの最新作 - Disney+ でのTVミニシリーズはこれの前座でしかないくらい、というか、”Avengers: Endgame” (2019)で、なぜ(Iron Manは別として)彼女だけが死ななければならなかったのか、その答えが明らかになるのではないかと思っていて、でも同時にいろいろ暗くなることもわかっていた。だって彼女は既に亡くなっていることを知っているのと、予告では白を着ているのがその後に黒になっているというのはつまりー、とか。

1995年の夏、オハイオで、髪の一部を青く染めた女の子とその妹と思われる女の子が遊んでいて、母親がいて、どこかから帰ってきた父親が慌しく母親に合図をすると一家で車で家を出て、追手が来て銃撃が始まり、小型飛行機に乗り換えても銃撃は続いて、父親は飛行機の羽根にしがみついて振り切って、彼らはキューバにたどり着く。 キューバで父親は旧知らしき男と肩を抱き合うものの、その反対側で娘たちは別々に連れ去られてしまう。

そこから時は流れて”Captain America: Civil War” (2016)の後、US国務長官のRoss (William Hurt)に追われる身となっているNatasha Romanoff (Scarlett Johansson)は潜伏先のノルウェーでオハイオの頃に妹だったはずのYelena Belova (Florence Pugh)からの荷物 - 彼女が組織から逃げる際に受けった赤い液体 - を受け取り、そこからブダペストに渡ってYelenaと挨拶がわりのバトル(いつも思うけどあれで相手を殺しちゃったらどうするんだろ?)を交わして再会し、追手から逃れてサンクトペテルブルクにいるらしい母親Melina (Rachel Weisz)に会いに行く。

タブレットでコントロールできる豚さん(ほしい)と暮らしているMelinaは、彼女たちの計画 - 洗脳されている少女たちの戦闘組織 - Black Widowを解放して(赤い液体が洗脳を解く)、自分たちをこんなにした悪の首謀者Dreykov (Ray Winstone)の在り処 - Red Room を突きとめてぶっころしたい - について相談されて、それを実行するにはもうひとり - 父親 Alexei (David Harbour)がいたほうがよい、とロシアの刑務所に飛んで、ぶくぶくになっている彼を拾いあげる。 ここまでで、彼ら4人は当時の作戦実行のために編成された疑似家族であったことが明らかになる。

最後は、空の上の要塞 - Red Roomでの悪の首領との対決と少女たちの救出劇のどんぱちが「一家」総出で派手に行われるの。おもしろかったのは「フェロモン・ロック」で、特定のフェロモンを持っている相手には攻撃できない、ってやつ。Natashaがそれをアンロックするやり方もすごい - でも鼻の穴にティッシュ詰めればいいだけなんじゃないか、とか。また、それをやるなら特定のフェロモンで相手をマタタビの猫にしてしまう方が楽(だし下衆)ではないのか、とか。

MCUのスピンオフのような形にしなくても、引き離されたり幼年期を壊された家族がそれを引き起こした組織に復讐するドラマとしての普遍性はあるかも。でもタランティーノ映画のような恨み辛みのねちっこさは無くて、女性が自分の力で立ち上がる(ユニフォームを捨てて自分のベストを選ぶ)物語として爽快に描いている。それを散漫とかうざいっていう男はいるのかも。

“Civil War”で中心のテーマのようにあった家族を殺された者たちの復讐の連鎖と、それを横で見ていて最後にSteve Rogersを逃す方に加担したNatashaにもかつてあった家族の記憶。しかしそれに触れた途端に、やんちゃな暴れん坊Yelenaや豪放な父Alexeiとの終わらない闘いに巻き込まれて、ちっとも心休まるものにはならないし、今回の闘いでもかつてのS.H.I.E.L.D. のオペレーションで傷を負わせてしまった少女Antonia (Olga Kurylenko) のことがずっと引っかかっていたり。でも、たとえそんなでこぼこであっても、彼女にとっては家族だったのかも、って。

で、あるとしたらやはり、”Endgame”のあれはなんだったのだ? が残る。 ひどすぎないかRusso兄弟。Tony Starkの葬儀はあんなに荘厳にやったくせに、Natashaのお墓はなんであんな粗末にひっそりと…

というのは置いといて、ここでの最大の魅力は期待通りに全力で飛んで走って暴れまくってくれるFlorence Pughにあると言わねばなるまい。ほんとうはDreykovは彼女にぼこぼこにしてほしかったのに、とか。
彼女がNatashaの着地のポーズをおちょくるところ(しかも何度も)もよくて、次はWandaの魔女仕草をおちょくってほしい。  彼女、”Fighting with My Family” (2019)もすばらしいけど、”Lady Macbeth” (2016)の頃からできあがっているから。

父Alexeiは元ソ連のsuper-soldier “Red Guardian”だったことが明らかになって、これで”The Falcon and the Winter Soldier”に出てきた連中(& ブローカーみたいなJulia Louis-Dreyfus)とか、Hydraがやっていたのも含めると戦前から相当な数のsuper-soldierが善悪双方の側に存在していたことになる。組織”Black Widow”やAntoniaもその流れだし、Wakandaの女性たちだってそうなのかもだし、これからはsuper-soldierと人間の相克というテーマが、X-MENのシリーズにおけるミュータントと人間のそれと同じような形で反復されるのだろうか? そして、その流れのなかで悪の類型のように描かれる「ロシア」とか特定の国や民族のイメージも少し気になる。

あとはRachel Weiszの佇まいの変な、まったく別の空気感を作り出してしまう不思議なかんじ、あれってなんなのだろう。「女優」とか、あまり言いたくないところだけど。 あと、彼女の農場に残された豚さんたちはあのあとどうなったのか。

監督のCate Shortlandさんの作品だと、デビュー作の”Somersault” (2004)はとってもよいの。娘が家族を捨ててひとり旅にでる話で、ここの最初の方で姉妹が蛍を見たりするシーンあたりと少し繋がっている気がして。


Cafe OTOから、昨年チケットをとって延期になっていたSwell Maps Sessions の日程が決まったよ、ってメールが(泣)。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。