12.31.2019

[log] Paris

21-23の土・日・月でパリに行ってきました。 昨年もやった気がするクリスマス前の買い出し、と言いつつあれこれうろうろする(したい)だけのアレ、だったのだが、今回は交通スト、という新たな試練が眼前に立ちはだかって電車(Eurostar)も止まるんじゃないか、という懸念もあり、でもなんとか向こう岸に到達することはできそうで、それなら、行けるのであればとりあえず行ってみて、どんなもんか見てみるのもおもしろいんじゃないか程度で - とにかくその、石橋が崩れているのに見ようとしないで渡って落ちて泣く、っていいかげんやめたら? - だったのだが、とにかく行って、予定していたモノたちをしがみつくように見たりして戻ってきた。

全体の状況がどんなふうだったかと言うと、地下鉄は半端な2路線くらいしか動いていなくて、バスは間引きされてのろのろなのでいつでもどこでもぱんぱん、人々の移動は車になるのでタクシーはちっとも捕まらないし交通渋滞がひどい、という悪循環に嵌っている - なのでどこに行くにもだいたいいつもの2〜3倍の時間がかかるし、それなら歩いたほうがまだまし、なのだがお天気はぐずぐずの風ぼうぼう、こんなときはこたつでごろごろ本でも読むのがふつうのヒトのただしい営みというもの。

Degas at the Opera

21日の午前、Eurostarでパリ北駅に着いて、地下鉄ではない普通の電車とバスを乗り継いでホテルに入り、お昼を食べた後にMusée d'Orsayで見た。 チケット売り場はがらがらだった。

ドガの踊り子(っていう言い方、なんかよくないんじゃないの? ダンサーでいいよね)のシリーズって寄せ集め展覧会とかコレクションとかに2-3点混じっているだけだとちっとも面白いと思えない(ドガに限らず大抵そうよね)のだが、今回のようにバレエを中心とした舞台芸術に向かう人々の動きとかシルエットとか色模様とか、それらが固まって連なって並んでいるとドガが捕まえようとしていた瞬間と空間がよくわかるのだった。

あと、なんといっても入ってすぐのところに展示されたオペラ座ガルニエ宮のでっかい断面模型。緞帳とか地下とかミルフィーユ並みに細かくて、我々が客席から見ているのはそのほんの一層、ひらひらの瞬間だけなのだな、って。

Huysmans Art Critic : From Degas to Grünewald, in the Eye of Francesco Vezzoli

ドガの展示の反対側でやっていた。
ユイスマンス - Joris-Karl Huysmans - といえば『さかしま』に代表されるデカダン文学作家なのだが、もともとはまじめな官吏だったし、ここでは彼の目や文章が当時のアートシーンにCriticとして与えた影響・果たした役割にフォーカスして、彼の周辺にあった画家や作家の作品を集めてある。
ドガにマネにピサロ、カイユボット、ルドン、ナダールが撮ったボードレール、ヴァレリーの肖像、などなど。 ゾラあたりからの自然主義が「近代」の立ちあがりと共にぐんにゃりと歪んでいびつな影や闇がまぶされていくその像を視覚的に追っていくことができるよい展示だった。

Paris by Mouth

パリの現地レストラン情報を載っけている英語のサイト、”Paris by Mouth”は日本語によるレストラン情報よりも役に立つことがあってよく参考にしているのだが、ここが少人数でのWalking tourをやっていて、それがNY times紙の36hoursのシリーズで紹介されたりしたのでいつも人気で売り切れていて、今回は空いていそうだったので参加してみることにした。 パリで初めて参加するツアー。
地域(St Germain, Left Bank, Marais)の特徴的な食材屋をまわる”Taste of ..”のシリーズとか、フランスのCheeseとWineに的を絞ったワークショップとかもあるのだが、今回は”Taste of St Germain”ていうコース。

ストの影響でキャンセルが結構あったらしいのだが無事決行された。16時にRue de Bacの駅前に集合して、歩いて肉屋、チョコレート屋、パティスリーにパン屋、バゲットにチーズにワイン屋を巡っていく(事前に店には通知してあるみたい)。単にそのお店をおいしいよー、って紹介するだけでなく、なんでここがおいしいのか、をその場所やオーナーの歴史(ときにはパリの街の歴史や成り立ち)も込みで説明してくれるのでなるほどねー、だし、最後にはワイン屋の2階のスペースでそれぞれのお店で買っておいた食材を切り分けて、ワイン屋のワイン3本と一緒にテイスティングしつつ復習してくれて、中でもチーズとワインは壁に貼ってあるフランスの地図を指差しながらなかなか深いところまで教えてくれた。

ガイドの女性も参加した人たち - 6人くらい -もみんなアメリカの人たちでやっぱしアメリカ英語、わかりやすいよなー、って泣きそうなくらい嬉しくなったり、現在のストの背景とフランスの政治状勢 - 今後の展望について、とっても今のアメリカン・リベラルの目線が入った政治の話も入って(うんうん)、あっという間の3時間半だった。

Eiffel Tower

パリに行ってまだ凱旋門もきちんと見ていないしエッフェル塔も昇ったことがないというのはいいの?  だったので22日の午前にやっと昇ることができた。 朝から雨が断続的に降って風が強くて天辺には行けなかったのだが眺めはすばらしいし鉄模様も素敵だし、あーパリなんだわ、って。

自分の世代ってなんでか東京タワーに思い入れるひとが結構多い気がするのだが、わたしは東京タワーにはそんな来なくて、でもエッフェル塔はとっても好きになりつつある。 なんかかっこいいかも、って。 あとで凱旋門もちゃんと見ることができて、観光レベルがあがった気がした。

Charlotte Perriand: Inventing a New World

22日の午後、Frank Gehry設計の、あのLouis Vuitton Foundationで見ました。
(家具でも空間でも建物でもなんでも)デザイナーのシャルロット・ペリアン(1903-1999)の、フロア全部使ったものすごくでっかい回顧展。 20世紀のデザインの歴史に興味があったり勉強したりしているひとは必見。”Inventing a New World”とは、それをデザインで実現するというのは例えばどういうことなのか、絵画、彫刻、写真、自然、東洋、政治、教育、ジェンダー、彼女の活動を通してそれらがどんなふうに渦を巻いて形を作っていったのか、などなどをその途方もないエネルギーも込みで俯瞰することができる。

他のアーティストではル・コルビュジエとフェルナン・レジェとの生涯を通じたでっかい作品がところどころに置いてあって、そういえば彼らも生活における形 - 特に丸み - を追求していった人たちだったねえ。
政治活動との関わりでいうと、でっかい壁一面(これでも縮小版レプリカだそう)を使ったコラージュ作品 - 1936年の“La grande misère de Paris” - “The Great Poverty of Paris”の勢いがすごい。 出発点付近にはこういう怒りがあったりする、と。

日本との関わりというと、髙島屋での『選択・伝統・創造』展のポスターとか、蚊帳とか畳とかイサム・ノグチのランプとか。

あとは屋上まで出てFrank Gehryによる建物も見て眺めて触ってみる。ブローニュの森の端っこにこんな建物があるのってどうなのかしら? 帰りに夕暮れの森を歩いて抜けてみたけど、ほんとうにただの森(そこがたまんない)だったしねえ。

最終日の23日の半分は買い出しなので、午前中の買い物場近辺のをいくつかうろうろしただけ。

Musée de Cluny  国立中世美術館

『貴婦人と一角獣』に再会したかった。 中世のいろんなのもちゃんと勉強しないと、そろそろ絵を見て回ってもきつくなってきたねえ、やらないとねえ、と改めて。

ここで近くのShakespeare and Companyに寄って古本ふたつ買った。

Église Saint-Sulpice サン=シュルピス教会

ドラクロアがその壁に描いた - “Jacob Wrestling with the Angel” - “Heliodorus Driven from the Temple” - とその天井に描いた”Saint Michael Vanquishing the Demon”を見る。
絵はすばらしいのだが、教会全体の佇まいからはちょっと浮いているのではないか。

Du Douanier Rousseau à Séraphine: Les grands maîtres naïfs

23日の午後。Musée Maillolで、日本語だと「ルソーからセラフィーヌまで:素朴派の巨匠たち」。アンリ・ルソー、セラフィーヌ・ルイの他には、カミーユ・ボンボワ、ルネ・ランベール、アンドレ・ボーシャン、ルイ・ヴィヴァンなどなど。

昔からnaïfs - Naïve Art - 素朴派、あるいはアウトサイダー・アートでもよいけど、昔からあるこの括り(そして昔からあるこの議論)ってどうなのか。正規の西洋美術の教育とか誰かの弟子としての訓練とか薫陶を受けていない、とか「アウトサイダー」とか、これってたんなる批評(界)とか画壇が勝手に作りだした枠だよね、だってひとつひとつこんなにも全然ちがうし。ちがって当然のものだし。

セラフィーヌ・ルイを纏めて見れたのはよかったし、メインビジュアルになっているカミーユ・ボンボワも素敵ったらない。

こんなもんかしら。 じつはパリにはやり残したことがあって..

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