12.25.2019

[film] Shooting the Mafia (2019)

14日、土曜日の午後、BFIで見ました。 これは最近リリースされたドキュメンタリー。

監督はこれまでいろんな女性(含. トランス)のドキュメンタリーを撮ってきたKim Longinottoさん。
イタリアのシシリーで、現在84歳になる写真家のLetizia Battagliaさんの過去からの活動を追ったもの。

今もカメラを手に街角に出ていく彼女は、いろんな人々が挨拶しに寄ってくる人気者なのだが、でも彼女を有名にしたのはマフィアに殺されて道端に横たわっているいろんな死体(子供のも)とか嘆き哀しむ家族とか、そういう暗くて痛切なイメージの写真で、彼女をそれらに向かわせたのはなんだったのか。

フィルムの前半は幸せで平穏な家庭に育った彼女が変質者を目撃したことから男性恐怖に陥って回復するまでに長い年月を要したこと、夏休みで人手がいなくて困っていた新聞社を手伝ったことからジャーナリズムの世界に足を突っ込み(当時のイタリアではほぼ最初の、だったという)、犯罪現場に取材に行っても女はひっこんでろ、の世界と戦いつつ40歳でカメラを手にして、始めは地元の家族や子供達を撮っていくうちにマフィアによる脅しや虐待、搾取が彼らの生活を沈黙の世界に押し込めていることを知り、より悲惨なマフィアの殺しの現場 - 彼らが奪っていったものと残されたものの悲しみ - にフォーカスしていくようになる。 といったことが彼女自身の口と、かつての恋人(複数)の証言から明らかにされる。

フィルムの後半は、マフィアの掟 - Code of Silence - に支配されていた世界を打ち破った80年代パレルモの「マフィア大裁判」 - 476人が裁かれた - とそこから90年代前半まで続いていく政府・市民とマフィアとの長くしんどい戦い - 92年、マフィア撲滅の先頭に立っていたファルコーネ判事 - ボルセリーノ判事の暗殺を経由して - を当時のニュースフィルムを繋いでいって、こうして市民は - 警察ではなく市民は - 勝利をもぎ取ったのだ、という経緯を描く。

彼女の活動と後半のパレルモの歴史がもう少しうまくリンクできれば、と思ったが、それでもこれはひとりの女性の意思が自分を変えて、人々になにかを訴えて、社会を変える力の一部になっていった、そういう流れにはなっているし、少なくとも黙っていてはいけないのだ、というメッセージは伝わってくると思った。 のと、彼女の恋人たち(いかにもイタリアの - )から語られる彼女自身のおおらかな強さしなやかさ - 自由、みたいのは見習いたいものだなー、って。

日本でも沈黙を強いられて魂を殺されてしまうケースが割と日常になっていると思うけど、こんなふうに変わっていけないものか、とか。

やっていることはぜんぜん違うのだが、彼女より7つ年上のAgnès Vardaさんのことを少し思った。
どちらも自分のやり方で自分のやりたいことをやって道を開いていった女性。

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