12.03.2019

[film] La fille seule (1995)

11月26日、火曜日の晩、BFIのMaurice Pialat特集で見ました。英語題は” A Single Girl”。
これはPialatの監督作ではなくて、監督はBenoît Jacquot、撮影はCaroline Champetier。

冒頭、カフェでピンボールとかしながら不機嫌そうにだれかを待っているRémi (Benoît Magimel) がいて、そこに現れたのはやはり電車が遅れて不機嫌そうなValérie (VirginieLedoyen)で、ふたりの会話からRémiは職がなくてぷらぷらしていることがわかり、なんだか険悪なかんじなのだが、Valérieは彼の子を妊娠していることを彼に告げると、すたすた小走りで職場に向かってしまう。

その職場はホテル(結構大きめのチェーン系の)で、制服に着替えてルームサービスを担当するセクションに行くと、この日が彼女の勤務初日であることがわかるのだが、そこから先は職場の同僚との摩擦に衝突 - 味方になってくれる人にセクハラしてくる男、やさしいと思ったら突然切れたりしてめんどうな人、食事を運んで行った先での客とのいろんなやりとり – “The Chambermaid” (2018)を思いだして少しはらはら - があり、契約書にサインするときの女性上司からのカチンとくる言われっぷり、などなどが続いていくのだが、彼女はタフでへっちゃらで何をどう言われたって構うもんか、客もサービスもどうでもいいわ、なの。でも唯一、気にしているのが自分の母親のことで、客がいない部屋に入ってそこからこっそり電話して話をしたりする – でもその会話はお母さんもう構わないで心配しないでだいじょうぶだから、ていうのばかり。 これらがホテルの四角く曲がっていく廊下や部屋や階段やエレベーターを目まぐるしく通過しながら(惨劇の予感も少し孕みつつ – なんもないけど)転がっていって慌しい。

90年代に割とあった気がするなにがあっても負けないもん、系のドラマのようだがウェットな場面とか、がんばれ、みたいな説教臭い場面は一切なくて、Valérieのつーんとした佇まいとまっすぐな眼差しがいろんなゲスを蹴散らしていくのが心地よくてかっこいいと思う。

勤務先をちょっとだけ抜けてのRémiとのやりとり(彼は結局ずっとだらだらカフェにいる)も、とにかくあんたの子だけど、あたしは生むから、ってそれだけ。うだうだ言ってるんじゃねえよ、行くよ、って。

最後の公園の場面、髪をばっさり切ったValérieと突然その横に現れる彼女の赤ん坊と、これもやや唐突な彼女の母親とのやりとりの爽やかなことときたら別の映画のようで、ここにきて”A Single Girl”ていう言葉がそのイメージと共にすーっと入ってくる、のがよいの。

ここにべつにフェミニズムとか置かなくても(もちろん置いてもいいけどさ)、彼女は彼女ですたすた行っちゃっていいんだから、いいのかな、って。

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