5.23.2019

[film] High Life (2018)

17日、金曜日の晩、CurzonのSOHOで見ました。

Claire DenisによるSci-Fiで、英語作品。米国では公開を機に彼女の回顧上映があって、日本でもレクチャーとかあって、BFIでもプレビューにあわせたQ&Aはあったのだがぜんぜん行けなかった。

(Sci-Fiだから)時間の前後も時間のスピードも行ったり来たりの伸縮自在で、単純に時間の流れ通りに筋を追っていくのはつまんなくて、であるからかえって、ものすごくおもしろいし、ものすごくいろんなことが見えてくると思うのだが、それは主人公が自問自答していくようにひとりひとり頭のなかで反芻していけばよいのかも。

冒頭、四角い宇宙船の船外でMonte (Robert Pattinson)が作業していて、彼のヘッドセットには赤ん坊の泣き声が響いたりしていて、船内に戻ると他の乗組員はみんな死んでて船外に放出するとみんなゆっくりと下降していく。 HighからLowへ。

その船には終身刑を受けたようなやばそうな囚人ばかりが乗っていて、Monteも地球で女の子を殺してここにいること、医師のDibs (Juliette Binoche)がいて、セックスも生殖も完全にコントロールされて、食事も排泄もぜんぶ人工で廻されていて、ついでになにやらいろんな実験をしているのだが、最終的にはBlack Holeに突っこんでいくことになる – つまりうまくいっても失敗してもどん詰まりで救いはない。大枠だけだと、地球で絶海の孤島に島流しにされた囚人たちの世界と同じ設定、とも思えるが、こちらは全て反自然の(あーでも宇宙って自然なのそうじゃないの?)人工、でもすべてがどん底に落ちてしまったとき、自然とか反自然とかってどんな意味を持つのだろうか、そこで立ちあがってくるのはなんなのだろうか? などなど。

最後のほうで同様に浮遊している宇宙船と遭遇して、覗いてみると中にいるのは犬ばかりですごい悲惨な状態になっていて、ひーって思うのだが、でもあそこの犬たちと大して違わないのかも、とか。

そういう拘禁状態、右にも左にも行けない引けないようなところで最後に荒くれて吹いてくる野生とか野蛮、その向こう側に見えるか見えないかの光 – White Material、これが生身の生で、Claire Denisがずっと追っている(宇宙の涯まで)のはこの光なのではないか、と - “Let the Sunshine In“。 今回Black Holeに近づいたところでそいつが現れてくるのは象徴的かも。

もうちょっと通俗的なSFふうにするのであれば、Juliette Binocheは病原体か宇宙生物に寄生された人間ではないなにかで、最後にその皮膚がめりめり剥けて正体を… というのもあったかもしれない。というくらいこの作品の彼女は髪の毛とか体の線とか(特にそのぬるんとした質感)飛びぬけていてすごい。 彼女の役柄が女性、というのはおそらく意味があって、ここも含めて初期稿に関わったというZadie Smithのアイデアがどんなだったかとか、聞いてみたいかも。

Robert Pattinsonのすごみは“ Good Time“ (2017)からそのまま地続きで、全てを失ってカスカスになっても立ち昇ってくる臭気というかたまんないなんかがあって、彼もBinocheと同様、宇宙人にしちゃってもよかったかもしれない。かんじとしては“Cosmopolis“ (2012)での彼に近い異人感。

RSDで買った彼がtindersticksと共演した映画のサントラ(7inch)、聴かなきゃ。

そうそうバンパイアといえば..  萩尾望都先生が来ていたなんて。 あんなとこで講演やっただなんて。

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