5.22.2019

[film] Der Himmel auf Erden (1927)

3日の晩、BFI Southbankで見ました。

ここの5月から6月にかけての特集上映 - “Beyond Your Wildest Dreams: Weimar Cinema 1919-1933”のオープニングの1本で、上映後には館内のバーでワイマール時代の饗宴みたいなテーマのパーティ - ‘The Party at the End of the World’ - もあったのだが、そこまで饗宴するのもあれかと、そちらはパスした。

ワイマール映画の特集というと、2010年の11月から11年の3月までMoMAで行われた特集- “Weimar Cinema, 1919–1933: Daydreams and Nightmares”が衝撃的にすばらしく、この時長期滞在していたので何本か見てこんなにおもしろいのかー機会があったらまた見たいな掘りたいな、にずっとなっていた(この特集のカタログも買わなきゃってずっと思っていて、こないだNY行った時にNeue Galerieでようやく入手した) 。

特集の上映作品は“Imagination, Innovation, Spectacle” - “Weimar Gothic” - “Last Laughs” -  “Tales of the City” -  “Daring to be Free” - “Brave New Worlds”といったカテゴリーに分けられている。そうなの、ワイマール映画って、カリガリ博士みたいなゴスで暗くておどろおどろなのばかりじゃなくて、コメディもドラマも歴史ものもいっぱいあって一筋縄ではなくて、それどころか映画がサイレントからトーキーに変わっていく時代、世界の有象無象が未来への期待も絶望もすべてぶちまけられてそれ自体がひとつの世界(世界観ではなく)を創っていくかのように広がっていくので、そこがMoMAの特集でびっくりしたことだった。映画史のひとにはとうに当たり前なのかもだけど。

というわけで、この作品 - 英語題は”Heaven on Earth” - 日本公開はされていない? - はどたばたコメディで、冒頭、Traugott Bellmann (Reinhold Schünzel)が結婚して、更に市議会議員として重要な演説をして、みんなによくやったおめでとうって褒め称えられた矢先、彼の亡くなった兄から彼の経営していたクラブ – “Der Himmel auf Erden”(Heaven on Earth)の経営権と500,000マルクが相続されていることを知る。演説で厳しく市の風紀粛清を訴えて親族からも讃えられたのに、その反対側で、新しいクラブのオーナーめがけて黒人のJazzバンドとか怪しげなダンサーたちとか、今でいうクラブピープルが押し寄せて好き勝手な売り込みどんちゃん騒ぎが始まり、一方では家族を含めたお堅いお偉方たちによい顔をしつつ、他方では湧いてくる変態共相手に立ちまわらなければならなくなる。そのすちゃらか危機一髪の変り身合戦がスリル満点で楽しいのだが、更に困ったことに、なにかに目覚めてしまった彼にはあっちの変態世界の方がどうも..

ていうのと、その変り身の速さとてきとーに混じっちゃったりすることからこのふたつの世界って実はそんな違わなくてどっちもどっちなんじゃねーの? ていう風刺と諧謔もある。

監督にクレジットされているのはAlfred Schirokauerという人なのだが実質的には主演の、当時コメディアンとして人気を集めていたReinhold Schünzelがほとんどひとりで仕切って作りあげてしまったやつらしく、まあおもしろい。 表面で厳格さ生真面目さ華々しさを装いつつ、その裏や闇でなにかが蠢いて膨張していった、というのはワイマール文化のある側面を正しく示しているような。

サイレントで、ライブスコアはHelen Noirという女性がつけたのだが、エレクトロやサンプリングヴォイスを多用したややダークな楽曲はバックに流すにはちょっと耳障りで画面の雰囲気とあまり合っていなくて、途中で席を立ってしまう人が相当数いた。自分もうーんこれはきつい、と思って、音楽ってこんなにも画面全体を支配してしまうんだなあ、ってぎりぎり耐えながら見ていた。Giorgio Moroderが”Metropolis” (1927)に音楽をつけたときもこんなかんじだったのだろうか? 
でもそれでも、終了時には「ブラボー!」の声も出たりしていたので、わかんないもんよね。

そういう猥雑で野蛮ななんか、それに起因した衝突や困惑というのもなんとなくワイマール的な、と言ってよいのかどうなのか。

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