4.01.2019

[film] Gräns (2018)

3月23日、土曜日の昼、Prince Charles Cinemaで見ました。

昨年のカンヌのある視点部門の最優秀作品賞を獲ったスウェーデン・デンマーク合作映画。
英語題は”Border”。すごーく変な映画でちょっとびっくりするけど、おもしろいよ。

Tina (Eva Melander)は沿岸の国境の検問所の職員で、船で渡ってきた人たちをチェックして、何かを感じて鼻をくんくんぐるる、ってしてこの人、と指さすとその人の鞄からはなにかしら禁制のお品が出てくる。彼女にはそういう特殊能力があって、透視というよりはその人が内側に抱えている隠し事とか後ろめたさとか悪企みみたいのを見抜いて感じることができるらしい。

彼女は森の外れ、池の畔の掘立小屋にドッグショーのための犬を飼っている男 - 恋人でもなさそうな - と住んでいて、肉親である父親は介護施設にいて、自分の外観のこともあるのか諦めてひとりぼっちで、たまにキツネとかでっかいヘラジカが訪ねてきてくれるけど、先はどんよりあんまぱっとしない。

ある日、検問所で自分とよく似た風貌の薄汚れた男を指さして、彼は前にも怪しいと思って引き留めたのだがそれらしいブツは見つからず、今回もそうで、しかも男を身体検査した係官からは彼には男性器がなくて尻のところに傷痕がある.. と言われて、Tinaは少し動揺しつつもそいつ – Vore (Eero Milonoff) を見つめてリリースする。

話は検問所で児童ポルノ入りのチップを持ち込もうとして逮捕した男が連絡を取っていた先のアパートを捜索する警察とその捜査に協力するTinaの話と、しばらくしてTinaのところに現れたVoreとの、(彼)に誘われるようにして親密になっていくふたりのやりとりと、やがてVoreがTinaに語る衝撃の事実と、それだけに留まらずにもういっこのエピソードにぐんにゃりと繋がっていく異様さ、それが雷とか嵐みたいな自然現象のようにでんぐり返りながら説明されていく様がなんというか…  (ああ、細かいとこ書けない – なんで書けないのかわからんが - のがきつい)

“Border” - 境界は、Tinaが勤務している国境にあるそれのことでもあるし、ヒトとそれ以外の種の境界のことかもしれないし、近代的理性と野生の境界かもしれないし、自分の内部で自分が決めているいろんな閾や仕切りのことかもしれないし、かつて時間や歴史が分断・切断しようとしたなにかに横たわるやつ、かもしれない。そしてそのひとつ、あるいはそれら大括りの境界が壊れたり侵犯されたりしたときに、どういうことが起こるのか、それはどこまでの広がりを持つものなのか、例えばこんなふうなでっかい風呂敷テーマを抱えた民話みたいなお話しで、ある意味とっても北欧、なのかもしれない。

このひとつの境界を理解不能な力で強引に突き崩して底に落っことすのがホラー、なのかもしれないし、これをものすごくポジティブにピースフルな方に展開させたのが例えばムーミン、とか言ったりすることはできるのかしら。

画面は全体に暗くていつも暗く湿っていて、他方でいろんな動物、生物が出てきて多様性とか共生のありようを示しつつ、反面には、種の淘汰という恐怖の歴史への目線もあって、いろんなことを考えさせておもしろいので見てほしいな。

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