12.21.2018

[film] The Old Man and the Gun (2018)

15日の土曜日の午後、CurzonのVictoriaで見ました。 ここんとこ週末はずうっと雨。

日本でようやく公開になったらしい”A Ghost Story” (2017)のDavid Loweryの新作。
”A Ghost Story”のときのトークでは次のPeter Panの企画に取り組んでいて楽しい、と語っていたのだが、こっちが先になったのか。
俳優としてのRobert Redfordの最後の出演作と言われている。

前世紀末のアメリカに実在した銀行強盗+脱獄常習犯の犯罪人生の終わりのほうを2003年にNew Yorker誌に掲載された同名記事を元に映画化したもの。 このタイトルは、ヘミングウェイの『老人と海』 - “The Old Man and the Sea”- から来ているんだよ。たぶん。

初めに帽子を被ったきちんとした身なりの老人- Forrest Tucker (Robert Redford) - がたった一人で銀行に入って、にこやかに窓口のところで挨拶して鞄を渡してなにかを指示し、暫くすると窓口のひとがややこわばった表情でそれを返して、彼はそれを受け取るとすたすた車に戻って去っていく。やられた方は困惑しているものの、とにかく紳士だったのでびっくり。

というのが彼の基本的なやり口で、最初にちらっとスーツの上着をめくって銃を見せるだけ、でも極めてジェントルに和やかに振るまって乱暴なことはしない。 大きなヤマの場合はきちんと事前の現地調査をして仲間のDanny GloverとTom Waitsが加わるけど、とにかく静かでオフビートで、でも貰うものは貰うよ、って。

子供たちと銀行に行った時、その現場に居合わせた(ことを彼が出て行ってから突然知った)刑事のJohn Hunt (Casey Affleck)が、仕事でもあるのだが興味を持って彼の影を追い始める(けどやがてFBIに取りあげられてしまう)、という流れと、Jewel (Sissy Spacek)という馬を飼ってひとりで暮している堅気の女性との間の、強盗と同じくらいどっちに転ぶかわからない恋(なのかな、あれ)の行方と。”A Ghost Story”にもあった時間をぴょんぴょん跨いで紡いでいく93分間の魔法、というかどろぼう。

David Loweryの悪漢モノ – “Ain't Them Bodies Saints” (2013)にあったひりひりはらはら擦り切れていくような緊張感はなくて、とてもソフトに時々ユーモラスに、画面の柔らかな光のトーンも含めて彼のかつての”Butch Cassidy and the Sundance Kid” (1969)や”The Sting” (1973)にあったスター/強盗の眩い輝きがそのまま隅々まで満ちていて、ずっと眺めていたくなる。 Johnが資料から追っていく彼の過去 - 脱獄を繰り返していた時期の映像には彼の昔の映画からのクリップが入っていたり、つまりRobert RedfordのSwan Songということなのだろうが、それにしてもかっこよすぎるしまだまだもったいないとしか言いようがない。70年代の彼のファンが見たらぼろぼろ泣いちゃうような、そういう笑顔がいっぱい。

同じ老人でもClint Eastwoodの俳優としての出演作(最新作はどちらも犯罪者をやっているのね)との違いなどを考えてしまうのだが、そんなことよりSissy Spacekとふたりで一緒に歩いたりテーブルで向かい合ったりしているとこがとにかくすばらしくよくて、そうかEastwoodは別にひとりでいていいのよね、とか思った。 のと、このふたりの間のケミストリは、Rooney MaraとCasey Affleckの間にあったのと同じやつなのか違うやつなのか、とか。RooneyとCaseyの間の眼差しって、行かないで消えないで、っていう刹那に溢れたやつだったけど、Sissy SpacekとRobert Redfordのって、ただそこにいてくれればいいわ、っていうやつなのかも。それがふたりの老人の間で交わされる、ってとこに月並みだけどやられてしまうのね。

ここんとこのRobert Redfordって“Captain America: The Winter Soldier“(2014)のクールな悪政治家とか”Pete's Dragon” (2016)のよいおじいちゃんとか、そりゃ悪くないけどなんか、だった気がするが、この作品のForrest Tuckerは - これだよこれ、としか言いようがない。最後のほうで馬に跨がるところなんてさー。

果たしてTom Cruiseは老いてここまでのところにいけるのかしら。

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