11.26.2018

[film] Climax (2018)

ずいぶん前、10月6日の土曜日の午後、Curzon SOHOで見たやつを。

これの予告篇がおもしろくて、踊って騒いでサングリア!踊ってぐちゃぐちゃそれでもサングリア!みたいなかんじのいけいけで、なんかすごそうだぞ、って。あと、どこかのレビューに”Busby Berkeley goes to hell” とかあったのでおもしろいかも、と。

Gaspar Noéの新作で、Gaspar Noéってダークでゴスでおっかなくて、というイメージはあったけど、これまで見たことはなかった。
たしか。

冒頭、雪が吹雪いて真っ白の中を半裸で血まみれの女性がひとりずるずる滑るように動いていくのを上からの俯瞰でとらえて、視界はそのまま真っ白になっちゃって、ちっちゃく”Inspired by the true event”とか表示されるので震えあがる。

続いてダンスグループのオーディションと思われるインタビュー映像が流れて、あなたにとってダンスとは? とか、将来はなにをやりたい? とか、公演でNYに行ったらなにをする? とか聞いてて、それぞれみんなダンスが大好きでポジティブに真面目に答えているよいこたちで。

次が稽古場でのリハーサルで、これが10~15分くらい続いただろうか、ノンストップのワンカットで撮ってて、そんなにテクニカルではない、最近のポップカルチャー寄りの群舞でところどころ雑だけど、それも含めてなかなかかっこよくて威勢よくていいの。コレオグラフはRihannaとかの振りつけをしているNina McNeelyていうひと。 しばしの休憩が入って、こんどは天井目線で捕らえたリハーサルで、少し疲れてきたのか乱れも見えて、カットも入る。 そうやってこのグループがやろうとしてるダンスの大枠を紹介したところで、今日はこれでお開きなのでサングリアでも飲んでリラックスして休んでってね、になる。

ここのサングリアは特製だから是非飲んでいって、という台詞は何度か聞かれるものの、誰かがそこになにかを仕込むところもそれを飲んですぐにおかしいと指摘するようなところもなくて、どこの立ち飲みの場でも見られるような光景 - 数名が集まって談笑したり、誰かが誰かを口説いていたり、ダンスの議論をしていたり、子連れの女性は子供を預けなきゃとか、音楽はリハーサルからの延長でいろんなのががんがん流れていて、そこからこれもどこでも見られるようなちょっとした小競り合いや小突き合いがぽこぽこ出てきて、それも始めのうちはまあまあまあ、の仲裁が入って分離されたり収まったりしているのだが、それを抑える勢力がなくなったのかなんか暴れたい方が多勢になったのか、ダンスのうねりが連鎖してより大きなうねりになっていくように、あちこちで殴り合いとっくみあい凶器手にして..  が止まらなくなっていって。

怖いのは個々のぶつかり合い殴り合いの描写やその重なり方ではなくて、そこに至るまでの流れがあまりにスムーズで気がついたら誰も止めることができないパニック状態になっていた、と後になって言われるような、そういうコトの顛末が神の視点でもなく特定の当事者AやBの視点でもなく、全方位の、これっぽっちも救いのない場所(孤絶した雪山の奥)から描かれていることで、これってアルコールなのドラッグなの、それともひょっとしたら  … ダンスなの?  という問いが雪山の向こうからぴゅーっ、て吹いてくるのだった。

知っている俳優さんはSofia Boutellaさんくらいで、始めは彼女とわからないくらいグループに溶けこんでいて、彼女がそのしなやかな脚でキックを繰り出してその場をなんとかするなんてことはなく、むしろグループ全員が”The Mummy” (2017)のあの魔物にやられてしまったかのようなずぶずぶで、ダンスっておっかないよう、ということで ―

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