11.01.2018

[music] The Dresden Dolls -- Oct 30th 2018


10月30日の晩、ロンドンの東、Limehouse、ていう名前だけは素敵だけど謎の土地にあるTroxyていうホールで見ました。初めて行くとこで、調べたら30年代からある貫禄たっぷりのホールだった。

彼らの復活と30-31日の2 daysが5月に発表されたときはぜったい、なにがなんでもチケット取ったる、ってNIN以上に意気込んで(なんで?)、がんばった。これの少し前、27日にこことは別の小屋で、リハーサルぽいライブもあったのだがそちらの方には行けず。

彼らを最後に見たのはNYのIrving Plazaで2010年10月31日ハロウィンのとき、これも復活に近いやつで、あのときはロンドンからNYに滑り込んだその晩、ぎりぎりで見たのだった。このときは彼らふたりが出会って10年、というアニバーサリーでもあって、今回、そのハロウィンにあわせて蘇る、というあたりもとっても彼ららしい。

18:30ドアで、サポートもあるだろうから21時くらいを目指して行けばいいか、でも念のために.. と20時ちょうどくらいに着いたら、小屋の前にあまり人はいなくて、扉の向こうにAmandaみたいな女性が見えて、え? なに? と思ったら1曲目の”Girl Anachronism”が始まったところだった。なんだよサポートなかったのかよ、だった。あぶなかった。(注:実はあったみたい)

音はもう雷のようにばりばりで(この2日間のためだけに米国からミキサーが来てくれたのだそう)、そもそも調子悪かったらライブなんてやるわけない連中なので、始めっからつんのめって飛ばしまくる。 このけたたましい、すばらしいエッジをもって転がっていく音が太鼓と鍵盤とふたりの声だけでできているなんて、何度聴いても信じられない。

あの大統領のせいで、すっかり”GREAT”になっちゃって鼻が高くてしょうもないアメリカから来ました - それだけじゃなくてBrexitだのHarvey Weinsteinだの(他にも最近のうざいのをいっぱい列挙する)、The Dresden Dollsが動きだすのにちょうどよい(relevantな)状況になってくれちゃったのよねまったく、とか言いながら”Mised Me”の変態骨折脱臼音頭に入って、マイムの応酬とかBrianの帽子芸とかが始まって、ああこれ、こいつらだわ、てしみじみ噛みしめる。

この辺からAmanda節も全開になって、Trump政権はトランスジェンダーのみんなをInvisibleにしようとしているけど、我々は断固LBGTQRSTUVWX.. (て言ってた)の側に立つし、決してみんなを消したり(erase)なんてしないんだから!! って叫んで”Sex Changes”のピアノが鳴りだし、そこにドラムスの一撃が思いっきり叩きこまれた時はちょっと泣きそうになった。

いまアートをやっている以上、政治的なあれこれに向き合わざるを得ないのはしょうがないことで、でも個人的にはそんなのやりたくないんだけど、でもさ.. ていうぐしゃぐしゃしたところを歌にしたのがこれです、と”Small Hands, Small Hearts”に行ったときは場内爆笑(興味あるひとは歌詞を読んでみてね)。

いまはなんでもかんでもインターネットで、あたしが旦那と知り合ったのもtechnicallyにはインターネットだからあんま言えないけど、次の曲はインターネットなんかできるずうっと昔にネットが作りだす野蛮なろくでなしひとでなし状態みたいなところをブレヒトって人が書いた曲なの(作曲はクルト・ヴァイルね)、と『三文オペラ』から”Pirate Jenny”をやったり。
とめどないおしゃべりからシリアスな方、コミカルな方、それぞれに振れるタイミングとかバランス(ていうのとは違うな、綱渡り芸みたいな)が絶妙なの。

アメリカのことは関係ないって言うかも知れないけど、向こうは11月6日に本当に大切な選挙がある、このことを君たちの周りにいるアメリカ人に伝えてほしい、って背中にでかでか”PLEASE Fucking VOTE”って書いてある着物を羽織って、この写真を撮ってTwitterでもインスタでもなんでもいいから拡散してほしい、って。言われたので自分のインスタには載せた。 これを読んでいてアメリカの投票権があるそこのあなた、つべこべ言わずに投票に行くのよ。

カバーはHozierのと、RATMの” Killing in the Name”と、アンコールでBrelの” Amsterdam”をやった。2010年のときは”War Pigs”だったねえ。

彼らのライブに初めて触れたのは2005年のNINの復活ツアーの前座の時で、あの時は第二次Bush政権に対する抵抗の嵐が米国では吹き荒れていた。この2018年、NINとDresden Dollsが共に復活としかいいようがない勢いで土煙と共に立ちあがったのは、決して偶然ではないと思う。 Bushの時にもみんな相当怒っていたけど、Trumpの方が想像をはるかに超えるひどさがあるよね。

アンコール、ステージから離れて階段のところでキャバレーみたいに”Amsterdam”を歌ったあと、ステージに戻り、こないだまで育児もあったからロンドンとアメリカを往ったり来たりしてて、9月にCamdenのヨガ教室にいたときのこと、そこで迎えた9月11日、異国から911のことを思ったことについて語り、バンド結成直後、911の起こったすぐ後に書いたという”Truce”を歌う。

彼らがなぜ何度でも墓場から蘇り、異国にいても、あれから十数年が過ぎた今になってもなお、なぜ911のところに立ち返って歌わなければいけないのか、全てが説明される。そして、それを聴く我々もまた、なぜ彼らの音に向かい続けるのかを問われる。

そしてこの曲は、エンディングの後に“Amanda, you're telling me a fairy tale” ていう声が入るの。

これで終わり、かのように少しだけひっこむものの、でも、それでもわたしは歌うんだよ、って最後に”Sing”がくる。
そして、だから我々も歌う、歌いはじめる。

本編2時間強、アンコール40分くらい。
おかえり人形たち。

2日間のを1本にまとめて書こうと思ったけど、2日目はぜんぜんちがうかんじのだった(予想してたけどね)ので、別にします。

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