11.11.2018

[film] L'Hirondelle et la Mésange (1920)

LFFのずっと前、9月30日の日曜日の午後、Barbican Cinemaで見ました。

ここでは9月から11月にかけてSilent Film & Live Musicていう小特集をやっていて、それの最初の1本(ぜんぶで3回)。
日本でも昨年アンスティチュとかで『ツバメ号とシジュウカラ号』として公開されて、いいなー見たいなーと思っていたやつなので、見れてよかった。

英国でタイトルがフランス語原題のままなのは、”la Mésange”に該当する鳥が英国にはいないので適切な訳語が出てこなくて、ということらしく、主催のひとが「だれかしってるひと? ”Titmouse”でいいの?」とか会場で聞いていた。

音楽はライブ伴奏で、ピアノとハープのふたり、ちょっと切ないメランコリックな旋律で、ピアノはアコーディオンとかフルートも兼務するし、ハープは爪弾くだけじゃなく縁を叩いたり引っ掻いたりふたりだけとは思えない多彩なアンサンブルを聴かせてくれてすばらしい。音だけでご飯おかわりできる。

20年の頃、ツバメ号とシジュウカラ号 - アントワープからフランスに向かっていく束ねられた2隻の船があって、ベテラン船頭のピエールが動かして妻のグリエとその妹のマルテがそれを助けて順調に運行仕事をしているふうで、積み荷の様子とかを横でみていた若者ミッシェルが雇ってほしいと言ってきて、試してみるとミッシェルは仕事もしっかりやるし、だんだん家族の信頼を得てマルテとも仲良くなっていくのだが、ミッシェルの狙いは闇で運んでいる積み荷のほうにあって、やがて..

タイトルからふたつの船が仲良く並んで川面を滑っていくのをみんなで助け合ったりの爽やかなやつかと思っていたのだが、結構ダークなのがギラリとするのではらはらしていると、展開はその想像のうえをいくやばい方に行ってしまい、でもそんなのお構いなしに川は流れて船は滑っていくねえ、という全体に漂う無常感が、一次大戦でところどころ破壊された川辺の町の風景にも合って、何とも言えない詩情を引き起こすところがすごい。どいつもこいつも必死だったんだなあ、って。
とにかく川辺の風景がゆっくり後ろに流れていくだけでたまんないの。


St. Wenceslas (1929)

BarbicanのSilent Film & Live Music特集の10月の。28日、日曜日の昼間に見ました。

この日は丁度今のチェコが建国されて100年の記念日で、この日からロンドンで始まるCzech100: Made in Prague Festivalの第一弾で、この作品はチェコの映画史にとっても記念碑的な一本なのだと。
演奏はCappella Marianaていうプラハで古音楽を演奏するグループで、太鼓&笛、ハープ、男性ヴォーカルの6人編成で、男子のコーラスが入るサイレントって珍しいかも、と。

チェコ(というかボヘミア)の建国に貢献したSaint Wenceslaus I, Duke of Bohemia (907-935)のお話しで、当時ものすごいお金をかけて千人規模のエキストラをいれて作った歴史超大作、だそうなのだが、あんまそんなかんじはしなくて、ものすごい数の外敵が襲ってきてもオーラと人徳でへへーって捻じ伏せてしまうものの、それを妬んだ劣等感まみれのブサイクな兄に殺されてしまう、というシンプルな筋で、あんま超大作には見えないの。

それでも撮影は、後にMichael Caineの“The Ipcress File” (1965)や”Alfie” (1966) を撮ることになるOtto Hellerが参加していてなかなかエモでドラマチックで、宮廷ドラマとしては悪くなかったかも。
音楽は、生の声の重なりがあんなふうに映像に合うのかー、ておもしろかった。群像劇だと特に映えるねえ。

サイレントの世界って底なしにすごいかもやばいかも、になりつつあることを改めて。

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