7.18.2018

[film] Orlando (1992)

7月4日の水曜日の晩、CurzonのSOHOで見ました。
ここではそんなに古くない、でもあまり見れなくて微妙に懐かしい映画を35mmで上映してトークとかQ&Aをくっつける、という不定期緩めのシリーズがあって、そのひとつで。

上映後のトークに登場するのは、こないだ”The Cost of Living” - カバーが素敵 - を出した小説家のDeborah Levyさんと、こないだ” Free Woman: Life, Liberation and Doris Lessing”を出した批評家のLara Feigelさん。どちらも、読みたいけど全く読めていない。

“Orlando”は見ていなかった(あの頃ばたばただったのよ)。
原作はみんなが知っているVirginia Woolfの小説”Orlando: A Biography” (1928) 。

1600年から始まって現在(1992年時点)まで、Orlando (Tilda Swinton)が時間を超えて性を超えて英国の歴史を自在に渡っていくさまを、Death - Love - Poetry - Politics - Society - Sex – Birth といった章立てのなかで描く。 始めは男子だったOrlandoが女子になっちゃうのは”Politics”のところで。

400年に及ぶ話だし、英国の歴史に詳しいわけでもないので、個々のエピソードを読み解く - 原作との対比も含めて - ということよりも単にそのまますらすら見ていけばよいのかな、くらいで。 とにかく画面は、今ならCG使っちゃいそうなところを手作りでこまこま編み込んであって、綺麗な織物のようで飽きることがない。

400年だもんだから、Elizabeth I (Quentin Crisp !)からの寵愛とか、Princess Sasha (Charlotte Valandrey)との恋とか、コンスタンチノープルへの遠征とか、Shelmerdine (Billy Zane)との親交とかほんといろいろあって、最後には娘まで生まれていることになっているのだが、Orlandoはその仮面のような表情やしなやかで優雅な挙動をほぼ変えずに旅を続け、その時々の蜻蛉のように歴史の絵画の中に納まっていて、そういう描き方をすることでそれを見る我々は(性を超えた)個人におけるDeathとかLove とかPoetryとかPoliticsとかSocietyとか SexとかBirthとかについて思いを巡らすことになる。 たぶんあと10回見てもその感触は都度異なって見えるのだろうし、それをジェンダーやフェミニズムやクィアーの議論が活発になっている(よね? いない?)いま、見直してみること、あるいは例えば、前世紀初のVirginia WoolfやVanessa Bellも含めたジェンダーや結婚に対するスタンスを踏まえて見直してみることとか、あれこれ考えはつんのめっていくので、とっても豊かな映画だなー、と感心する。

トークの中でも指摘があったDerek Jarmanとの関係 - 監督のSally Potterさんは一緒に仕事をしていたそうで、彼の“Caravaggio” (1986)や”The Last of England” (1987)との関係から見えてくるものもあるはず。Tilda Swintonさんは彼の”Caravaggio”がデビューではなかったか。

ここで描かれた英国の変遷とか国境・時代越えのスケールに比べれば、Brexitなんてほんと小せえことだわ(だからやめちまえ)っておもう。 あと、ラテンアメリカ文学の作家がマチズモぷんぷんの世界に対してこれをやるのではなく、野蛮な男共がうなりをあげていた英国に対して女性のWoolfがやった、ということと、さらに映画版のほうではこれをはじめから女性であるTilda Swintonさんが演じた、その誕生を祝福したのはクィアーであるElizabeth I = Quentin Crispだった、ていうあたりが痛快なのね。

ゲスト2名によるトークはそれぞれが自作を朗読したりやや纏まりに欠いたとっ散らかったものだったが、Woolfの原作も含めて、Orlandoの世界が広げてくれる女の一生、男の一生、あるいは歴史・時間というものへの洞察の深さ豊かさは半端ない、という点で一致していたように思う。今こそ見られるべきクィアーな一本である、と。

音楽は最初と最後にJimmy Somervilleが天使の歌声を披露してくれるのと、途中の音楽にもLindsay CooperがいてFred FrithがいてDavid Bedfordがいて、Sally Potter自身も関わっているのだった。そういえば彼女の弟ってVdGGのNic Potterさんなのね。

Tilda Swintonさんはこの映画のあとも転生を続けていて、最近だとチベットの方に渡って”Doctor Strange” (2016)に出ていたよね。

この上映会、次回はこの金・土にWhit Stillmanさんをゲストに迎えて、”The Last Days of Disco” (1998)と”Love & Friendship” (2016)の上映があるの。

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