7.03.2018

[film] The Bigamist (1953)

6月19日、火曜日の晩、BFIのIda Lupino特集で見ました。邦題は『二重結婚者』。
この作品はIda Lupinoが監督して自身が出演もしていて、そういうのは彼女の作品のなかではこれだけだという。

上映前にBFIのひとのイントロがあって、彼女が言うには、この作品のプロデューサーで脚本も書いたCollier Youngは撮影当時Ida LupinoのEx夫(Idaは2番目の妻)で、Joan Fontaineのその時点の夫で、IdaとJoanはそれぞれがYoung氏と知り合う前からの友人同士で、Idaが離婚してからも3人はずっと仲がよくて頻繁に会ってこんな映画も作ったりしていて、映画の役柄とかテーマもあわせて考えると、ちょっと変態ですねー、って。 なんで別れたりするの? よね。

San Franciscoに暮らすHarry Graham (Edmond O'Brien) とEve (Joan Fontaine)の夫婦は養子斡旋所で養子をもらう申請をしようとしていて、彼らに相対した相談員のJordan (Edmund Gwenn)が、わかりました、問題ないと思いますが後程プライベートなことをいくつか調査させて頂きますから、というとHarryがぴくっ、となる(のがJordanには気になった)。

Harryは頻繁にLos Angelesに出張しているようだったので、JordanはLAに赴いて彼の滞在しているところを探すのだが見つからなくて、彼の勤務先のネームプレートにあった名前が”Harrison” Grahamとなっていたので電話帳で探したその住所に行ってみると、Harryと女性と赤ん坊が暮らしていたのでびっくりして、これは警察に電話しないといけないかも、となったJordanにHarryは過去を語り始める。

LAに出張で来ていたある休日、Harryは暇つぶしでハリウッドスターの豪邸を外から眺めるバスツアーに参加したら、そこで同じようにつまんなそうにしているPhyllis (Ida Lupino)がいて、彼女も孤独そうでぽつぽつと会話をするようになり、彼女がウェイトレスをしている中華料理屋で会ったりしているうちにだんだん離れ難くなっていって…

謎や心理を追い詰めて何かを暴こうとするような告発ものでもなくて、重婚(罪)を糾弾するようなものでもなくて、なぜ彼はこんなふうになっていったのか、をこまこま丁寧に追っていく。 その手口はこないだ見た彼女の”The Hitch-Hiker” (1953)と同じような、人と人の衝突とか出会いがそれぞれに引き起こす化学変化(この映画の場合は恐怖、ではなく、愛情、なのかな)をスローに緻密に追っていくもので、これなら誰にだって起こってもおかしくないことでしょ、という辺りに着地して、そこに違和感はまったくない。
愕然とするくらい冷めた、透徹な目線で孤独な人々の関係のありようを浮かびあがらせる。

ここでの女優Ida Lupino = Hitch-Hikerときたらとにかくものすごくて、その目線、俯きかた、黙りよう、ぽつんとしたかんじ、Femme Fatale的なそれとは真逆な風貌なのに強力な磁場を形成するような独りぼっち感があって、多忙なHarryはひとりであること、生きることへの憧れなんかも込みでふらふら吸い込まれていってしまったのではないか、とか。

そして、そんな彼女をいいように演出した監督Ida Lupinoも言うまでもなくすごし。

ふたりの会話で、「Chop Sueyって本場の中華料理じゃないんだよ、知ってた?」ていうのがなんかよいかんじで残ったの。

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