7.30.2018

[film] The More You Ignore Me (2018)

16日、Heymarketのシネコンで見ました。ロンドンでの上映館はここだけ、しかも夜1回の上映になっていて、客はひさびさに最初から最後まで自分ひとりだけだった月曜の晩。

そしてこれも前日同様に壊れてしまった家族のお話しだった。ううむ。

“The More You Ignore Me, the Closer I Get” (1994) って、もちろんMorrissey(ソロ)の曲で、関係ないことないの。昨年の”England is Mine” (2017)に続いて、もう(Morrisseyが関与しない)Morrissey映画、みたいなジャンルができたっておかしくない気がする。

原作はコメディアンでもあるJo Brandさんの同名小説で、彼女自身が脚色して、少しだけ出演もしている。

70年代末、一軒家にパパKeith (Mark Addy)とママGina (Sheridan Smith)と一人娘のAlice がいて、冒頭でGinaは癇癪おこして絶叫して家のなかをめちゃくちゃに壊しまくる。Ginaは精神の病と診断されてママのことはパパが家でずっと面倒を見るから、と3人は不安定ながらも一緒に暮らしていった83年のある日、成長したAlice (Ella Hunt)はTVのTop of The Popsで”This Charming Man”を花をまき散らしながら狂おしく演奏しているThe Smithsを見て衝撃を受けて(まあ、いきなりあれ見たらそうなるわ)、レコードを買ってきてMorrisseyにファンレター書きまくり、のそういう少女になる。

やがてファンレターを読んでくれたのかMorrisseyからお礼の手紙とコンサートのチケットが送られてきて舞いあがるのだが、近所のボーイフレンドは親の横槍で一緒に行ってくれず、替わりの付き添いになった祖母は向かう途中で具合が悪くなって(そのままお葬式…)結局ライブには行けなくてしょんぼりで、それ以降もなにかと家族の事情に引っ張られてあれこれ潰されていくAliceの青春の日々を綴る。

で、AliceがThe SmithsをGinaに聴かせてみたら彼女も気に入ったようで、ふたりで一緒に聴き狂うようになって、その勢いでBlackpoolのライブに突撃するのだが、ここでもまた… (かわいそうすぎて書けないくらい。同じことが自分に起こったら…)

ママが壊れたからって、ちょっとやそっとのことでは壊れないママと娘の絆と、そんな娘を芯から支えたThe Smithsの音楽があって、だからだいじょうぶよとかそういう話では全くないのだが、「あなたが無視すればするほど、ぼくはくっついていくよ」っていうメッセージのありようは、日本では「ビョーキ」とか言われていた当時(80年代初)の心象風景とも繋がっていろいろ考えさせられる。

(この「ビョーキ」がバブル崩壊と共に加速度的に捩れてカルトとかストーカー犯罪の方に向かってしまったことを忘れてはいけない)
(関係ないけど、今の政府が恐ろしいのはここにあるのと同様の共感とか誘導のロジックを使って「健常者」とそうでない者を仕分けて自身の支持基盤として固めようとしているところ – だからあいつらしょうもないカルトなんだってば。)
(そしていまのMorrisseyもこれと同じような隘路に陥っているようなのが残念でならない。)

で、この映画に関しては、いろいろあってみんなぼろぼろだけど、とりあえずなんとか生き残れてよかったよね、ていう暖かさがあって、これはこれでよいと思った。

もっと全編にThe Smithsを流してあげればいいのに、The Smithsで流れるのは”This Charming Man”と”What Difference Does It Make?”くらいで、全体の音楽はElbowのGuy Garveyさんが担当している。

The Smithsの初期の頃って12inchシングルばっかり出していて、数週間おきにレコ屋の棚に並んでいく新譜をいちいち買えるほどの財力なんてなかったので、ほんと悔しかった。あれがなければもっと思い切りのめり込めたのかもなーとか、そんなことを思い出したり。

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