5.24.2017

[art] The Animals: Love Letters between Christopher Isherwood and Don Bachardy

トロントにいます。 飛行機から降りたところでマンチェスターのテロのことを知って、ウェストミンスターのときもそうだったが、異国に着いた途端に自分の住んでいるところのテロを知る、ってとっても辛いし悲しい。 今回のように子供達の集まるコンサートで、というのは胸が張り裂けそうになる。 だってコンサートって、一生の思い出に残るものなのに、なんでそこで…

トロントの滞在はダウンタウンから離れた、周りになんもないところで缶詰状態になってて、一番近所の映画館でも2マイルくらい先なので、脱出は諦めてなんか書くことにする。

5月14日、日曜日の晩の19:30からTate Britainで行われた、今月末で終わってしまうDavid Hockney展の関連イベント。

http://www.tate.org.uk/whats-on/tate-britain/special-event/david-hockney/animals-love-letters-between-christopher-isherwood

まずはここで展示されている”Christopher Isherwood and Don Bachardy” (1968) ていうふたりの肖像画(上のリンクが見れれば)があって、この絵に向かうかたちで椅子が並べられて(50個もなかったかしら)、絵の前でふたりの俳優 - Alan Cumming と Angus Wright - が絵のなかのふたりとおなじ服、格好、姿勢で座って、ふたりの間で交わされた手紙の抜粋を朗読する。

ふたりの関係は53年のヴァレンタイン・デーに始まって、Isherwoodが86年に亡くなるまで33年間続いて、52年にSanta Monicaで出会ったとき、Bachardyは18歳、Isherwoodは48歳だった。
彼らの文通は56年にロンドンにいたIsherwoodのほうから始まって14年に渡って続いて、その書簡集が”The Animals: Love Letters Between Christopher Isherwood and Don Bachardy”としてKatherine Bucknellさんによって編纂・出版されたのが2014年、ここではKatherine Bucknellさんがナレーションをしながら、ピックアップされたいくつかの手紙をふたり - Alan CummingがBachardyを、Angus WrightがIsherwoodを演じる - が交互に、それぞれが相手から受けとった手紙を読みあげていく形式で行われた。

おおもとのHockneyの絵のはなし。 HockneyがIsherwoodに最初に会ったのが64年の2月(わー)、西海岸で、すでにそこのオープンなゲイコミュニティではBachardyとIsherwoodの関係は有名になっていて、ふたりの絵もその交流のなかでごく自然に描かれたものだったようで、左側に正面を向いて快活そうな青年と右側にその青年になんかいちゃもんつけたそうな初老の男のコントラストがおもしろいの。
(BL漫画の表紙みたいにも見えないこともないけど)

ちなみにこの絵が描かれたおうちはまだ残っていて家具とか(除. フルーツ)はこの絵に描かれたそのままに保たれているそう。で、この絵はプライベートコレクションで、南ロンドンにあるビルの10階にあって、今回の回顧展に出すためにオーナーを説得するのが死ぬほど大変で、ようやく決まってからもビルの窓からクレーン使って降ろしたり大わらわの散々で、なのでこれが一般に公開されるのは最後になるかも、とTateのひとは言ってた。

手紙のなかのふたりはいろんな愛称で互いのこと自分のことを呼ぶのだが、Bachardyが基本は子猫 - “Kitty”で、Isherwoodが馬 - "Dobbin”と呼ばれて - だから”The Animals”なの - これはラブレターなので、いろんな名前で相手のことを呼びあってて楽しい。 内容はBarchardyがアメリカのいろんな出来事 - Martin Luther King Jr.のこととか - をアメリカの若者らしい簡潔さ快活さで送って、Isherwoodがロンドンでのシアターとか進行中の作品とか文壇のこととかをいかにも英国の面倒な老人ぽい言い方で送っていて、その対比もおもしろいのだが、それ以上にやはりこれはラブレターで、きみがここにいてくれたらどんなに素敵だろうー、ということしか訴えていない、とも言える。

それらの愛の言葉が68年に描かれた肖像画の前で、2017年を生きる二人の俳優のライブの声を通して、読みあげられることのおもしろさ。あたりまえだけど、こうして描かれたふたりの背後にはこれだけのドラマがあるし、ドラマ以上に愛があるし、それが美術館でこんなふうに飾られていること。

関係ないけど、Alan Cummingさんはこれの数日前にもういっこの特集展示- ”Queer British Art 1861–1967”のほうでトークをしていて、こちらはチケット取れなかったの。
Alan Cummingさん、目の前2メートルくらいのとこで見たけど、ものすごくかっこいいねえ。

朗読は40分くらいで終わって、その後の45分くらいは、Hockney展を好きなだけご覧ください、になったのでわーい、てじっくり見ることができた。 この展示、既に4回くらい通っていて、いつも結構きちきちなのだが、余裕たっぷりで好きなところを隅々までみた。 この絵が置いてある部屋は2人組の大きな肖像画ばかりなのだが、他の肖像の背後にもそれぞれのドラマはあるんだろうなー、とか。

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