5.02.2017

[music] Bob Dylan and His Band - April 30

4月30日の日曜日の晩、London Palladiumていう中規模のホールで見ました。
彼がここんとこずうっとやっている"Never Ending Tour"のLondonでの3daysの最終日。
チケットは2月の発売日の早めのタイミングで取りにいったのだが、2階席しかなかった(3階まである)。 お代はだいたい£100くらい。

さて。Bob Dylanについてなにを書いたらよいのかしら。
NYでライブは2回くらい行って、アーカイブのシリーズもいくつか持ってはいるけど、そんなによい聴き手ではなくて、彼の詩を読みこんで世界や人生についてあれこれ考えたことがあるわけでも彼の音のスタイルやその変遷について考察できる軸があるわけでもなく、単に聴かないよりは聴いたほうがぜったいよくて、聴くのだったらライブのほうだねえ、程度のものだった。
ただBob Dylanを聴け、みたいにDylanをネタに講釈を垂れたがるくそじじい共だけはいまだに死ぬほど憎んでいて、ああいうふうにはならないようにせねば、というのだけはずっと心に留めてきた。(StonesもBeatlesもおなじだけどね、「大人のロック」を語りたがる大人たちのしょうもなさ)

チケットには18:30 Openとしか書いてなくて何かを見逃すといやだったのでその時間に行ってじっと待って中に入ると、前座もないまま20:00きっかりに始まる。 それまでの間、みんなビールのんだりシャンパンのんだり、だらだら楽しそうだった。 だいたい老人(←お財布)とその息子とか孫とか、そんなのばっかし。

ステージの真ん中にはマイクスタンドが4本立っていて、誰かくるのかしらと思ったがそうではなくて、どれを取ってもいいように、てことらしかった。 Dylanはほとんどグランドピアノを立って叩いて座って弾いて、たまに(杖のような)スタンドマイク。 音は会場の鳴りも含めてものすごくクリアですばらしい。低〜中域の弦の絡みがぜんぶ細やかに解れて聴きとれて、その脇から結構乱暴な鍵盤が横割りしてかき混ぜで散らして、そのうねりの気持ちよいことったら。 他方で彼の声というか歌というか咆哮というか、はどこまでも自在にでっかく、バランス度外視で唸ったり吠えたりしていて、これこそが無敵で唯一無二で、Never Endingなのね、とか。

セットリストはずっと変わっていないようだし、その並びやカバーの解釈について何をどう言えるというものでもないのでずっと黙ってクラシックを聴くようにじっくり聴いていくのだが、やはり真ん中くらいの"Tangled Up in Blue"から"Desolation Row"あたりまでの5〜6曲の、漲って縛りあげられて宙吊りにされて身動きとれなくなっていくようなかんじはすごいかも、って。 これこそがノーベル賞なのかもって。(言っちゃった..)

ただ、Frank Sinatra、Harold Arlen、Johnny Mercer、Yves Montandといった往年のスタンダードのカバーの間に自身の初期の代表曲を散りばめて歌ってみることで、発表当時と明らかに位置が変わってしまった自分の歌のありよう、それがそもそも投げようとしたものを問い直す、咀嚼しなおす、ということはあったのかもしれない。 それは我々聴き手に対しても同様の問いになっていることは確かで、その答えは風のなかに… なんかじゃなくて、だからNever Endingだって言ってるだろ、もう一回でも二回でもようく聴いて考えろ、トラメガで耳元で怒鳴ってやるから、って。

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