5.08.2017

[music] Max Richter “Sleep”

6日、土曜日の晩23:00から翌7日、日曜日の朝7:00までの8時間ライブ、そのためのSleepover。
Barbicanのイベントで、例によってずっとSold Out状態だったのでえんえんつけ狙って、空きが出たところでクリックしたら「£100」とか出たので、え… と思ったがとりあえずなんも考えずに押した。
しばらくしたら参加するみんな宛のメールがきて、ベッドは用意するけど寝具はないので布団とか枕とかは自分用のを持ってくるようにね、とあって、これも、え… (余分なの持ってないし)だったが、当日の昼間にJohn Lewisとかに行ってブランケットと小枕買いましたよ(こういうのは楽しいね)。

22時開場だったのでその時間くらいに行ったらもう結構並んでいて、みんな格好がてんでばらばらなのがおかしかった。キャンプに行くみたいな重装備のひともいれば、ほぼパジャマにスリッパ、素の布団を両手で抱えただけの女の子(あれで地下鉄乗ってきたのか?)もいる。

会場はいつものBarbicanのとこではなくて、ロンドンブリッジの傍のOld Billingsgateていう19世紀に魚市場として建てられて、いまはイベント会場になっているとこ - お魚のかわりに横たわるってか - で、そこのフロアがエリアのAからCまでテープで仕切られて、そこにパイプのベッド(マットレス直じゃなくてよかった)がずらっと並べられていて、入ったひとから順に自分のエリア内の好きなベッドを確保して寝支度を始める。 各ベッドの間は1メートルくらい離れているのでなんか(ってなに?)あっても安全かも。
比べちゃいけないとは思うが、フジのRed Marqueeの床で寝るのの1000倍は快適でしたわ。

寝る準備もひとによってそれぞれ、敷布団からちゃんと敷いて固めるひと、いつもの寝巻きに着替えるひと、トイレで髭そったり歯磨いたりするひと、とりあえずなんか(グラノーラバーと水は配られる)食べ始めるひと、などなど。あとBarbicanのメンバーは小さな布袋のお泊まりキットを貰うことができて、開けたら歯ブラシセットとかAēsopのローションとか小物がいろいろ入っていた。

エチケットについてはうるさいくらいにアナウンスされていて、これは単に音楽を聴くだけでなく、聴くという体験の共有とその尊重によって成り立つプログラムなので、くれぐれも(音楽に加えて)隣人の眠りを妨げるようなことをしてはいけません、だからお酒もタバコもぜったいだめよ、って。

TVカメラみたいのが入っていて、隣のベッドのひとにインタビューしている元気なひとがいるので誰かと思って顔をみたらJarvis Cockerさんだった(たぶん。 どうみても)。 彼、客としても4つ向こうくらいのベッドに寝て、普通に脱いで着替えしたりしてた。 Jarvisに夜這い(死語)をかけられるポジションにあった、ということね。

2015年に発表されたこの作品は、発表当時BBCのRadio3でライブ放送され(ラジオ史上最も長いライブ中継放送となったって)、その後のライブ上演はLondonとBerlinとSydneyで行われている。 ライブで演奏するMax Richter EnsembleはPiano/Keyの彼の他、ソプラノ1、Violin3、Cello2、その他サウンド1で、とにかく8時間ずっと演奏し続けるの - 我々の仕事でいうと9時から5時まで休憩取らないでタイプし続けるようなもん - だから重労働だよねえ、て思う。

Max Richterの作品は、2月のRoyal BalletでかかっていたWoolf Worksの伴奏とか、最近の映画だと”Arrival”とか、これらのアナログはRough Tradeでもふつうに並べられて、ずっと売れているみたいなので、所謂クラシック的な聴かれかたはあんまりしていない。音のうねりとかダイナミズムの造りがマッシブで、でもよく聴くと緻密で、要はかっこいいの。 今回の客もふつーの若者がずいぶんいたし。
この”Sleep”は米国の脳神経学者David Eagleman(翻訳もある)にコンサルテーションして潜在意識にちゃんと効くようにデザインされている、てプログラムには書いてあった。効かせてもらおうじゃねえか。

そういう音楽なのでがんばって無理して起きていないように - 例えばRed Bullみたいのとかコーヒーも飲まないようにして、滑り落ちるがままにしておこう、と。それって例えばゴールドベルク変奏曲やアンビエントを聴きながら寝るのとはどう違うのかしら、とか。
簡単な挨拶のあと、ほぼ23時きっかりに始まって、ピアノとアンサンブル、ソプラノのシンプルな絡みのほかにエレクトロの単調なベース音が雲として全体を包みこむように鐘の音のように響いてきて、気持ちいいというよりは堂々とかっこよくて、これ、よすぎてもったいなくて寝れないんですけど、と少し心配になり、20分くらいして雲のかんじが少し変わって、1時間くらいしてはっきり曲調が変わるのがわかって、憶えているのはその辺まで。

両隣のベッドから即座に鼾が聞こえてきたのもおかしくて、片方は無呼吸系のやつ、もう片方はカエル系のやつで、トイレに起きたときにベッドの間を抜けていくとみんなそれぞれがーがーしたりうなされたりしていて、夜の動物園じゃないけど、こんなにうるさいもんなんだねえ、て思った。そういうなかでも演奏は淡々と続いていって、起きあがって真面目に追っかけているひとも当然いれば、ふたりで抱き合ってるひとたちもいれば、ああ聴いていたいよう、と思いつつ再びずるずる落っこちる、脚がつったりしてまた起きる - これが4回くらい繰り返されただろうか、最後に目覚めたときには6:20で、エンディングはちゃんと聴かなきゃって前のほうにいって体育館座りして聴いた。最後はどうやって終わるんだろ終わらないでもぜんぜんよいのに、このまま気を失ってしんじゃったらいいのに、とか思って、最後のトーンが静かに消えて終わった瞬間は7:08くらい、もうみんな割と起きていてわーって拍手したけど、それにも負けない鼾があちこちから聞こえてきたのでみんなで笑った。

朝の川べりに出ると寒くてコーヒーでも買おうかと思ったけど並んでいたのでやめて地下鉄でおうち戻って、駅前でベニエを2個買って部屋で食べたらそのまま落ちて、気づいたら11時でああいかん映画とか行かなきゃと思いつつも再びずるずる落ちて、13時過ぎになんとか立ちあがった。 晩も夜寝しちゃって、約8時間、潜在意識に流れこみ続けた彼の音楽が頭のなかの何かを閉めてしまったのか開けてしまったのか染めてしまったのか、なんか眠くてしょうがなくなった。 ぜんぜん悪いかんじはしないのだけど。

夢の8時間だった。また行きたいなー。毎年やらないかしらこれ。
もし王様になったら毎晩これを枕元で演奏させて寝るんだ。

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